玉藻前の噺
後の世で平安と呼ばれる時代のお話。
藻女という女がいた。拾われ子だったので二親との血の繋がりはなかったのだが、大切に育てられ都でも評判の器量よしとなった。十八になった藻女は宮仕えとなる。そしてその美貌が鳥羽上皇の目に止まると、寵愛を受けることとなり、名を『玉藻前』と改めた。
だが、それからすぐに上皇は病にかかり寝たきりとなってしまう。何人もの名医が診断したが原因は一向に掴めない。そして陰陽師である安倍泰成が玉藻前の呪詛が元であることを突き止める。
真言により正体を暴かれた玉藻前は「九尾の狐」の姿に戻ると宮中から逃亡し、那須野の方へ姿をくらました。
上皇は討伐隊を送ると、見事に九尾の狐を討ち滅ぼすことが出来たという。
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九尾の狐はこの時に九本の尾を千切って岩へと変えて敵を欺き、なんとか命だけは助かった。尾を失ったことで力はほとんど残っていなかったのだが、時代が下り、江戸になった頃には人間に化けるくらいのことはできるようになっていた。
人間の女に化けた九尾の狐は吉原に入ると、すぐに傾城の評判を得るまでになった。
◇
狐は尻尾を使って人を騙すが、男を騙すだけなら尻尾すら必要ない。
即ちこれを花魁と言うのである。
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