入内雀の噺
どうみても強引な「抜け雀」です。本当にありがとうございました。
後の世で平安と呼ばれる時代のお話。
この時の都に藤原実方という貴族がいた。左近中将という役職まで上り詰めた男であり、同時に中古三十六歌仙の一人とうたわれるほどの歌人でもあり大変に教養の高い人物だった。
ある日の事。
実方は藤原行成に侮辱をされたことで口論になった。頭に血が上った実方は行成の冠をひったくると、それを庭へと投げ捨ててしまう。そして、運悪くその一部始終を時の帝に見られていた。
帝は実方には陸奥の国への左遷を命じたが、事を荒立てなかった行成の人となりを評価し蔵人頭に昇格させる。自分ばかりを重い罪にさせられたことを怨んだまま、陸奥で亡くなった実方の怨念はやがて一羽の雀となり、京へと飛んだ。そして、皇居の清涼殿に忍び込むと帝に差し上げるはずの台盤の上にとまり、そこの米を啄んだという。
皇居の内に忍び入ったことから、人々はこれを『入内雀』と呼んだ。その後、入内雀は群れとなって各地の稲や米を食い荒らし、祟りを起こしたそうな。
それからというもの。
実方の怨霊を恐れた京の人々は、実方の怒りを鎮め弔うために一つの塚を築いた。
◆
入内雀となった実方の霊は、自分の育った家へと出向いた。両親はすぐにそれと気が付き、入内雀を家の中へと招き入れた。
止まり木がない事を悟った両親は壁に籠の絵を描いてやると、入内雀はその中に納まって、涙ながらに
「かたじけない事でございます。自分の親をカゴカキにしてしまった」
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