水虎の噺
東京を江戸と申した時分のお話。
とある田舎の村に奇怪な事が頻繁に起こるようになった。河川や沼に近づいた村人たちが突然何かに襲われて水の中に引き込まれるのだという。そればかりか、引きずり込まれた者は必ず体のどこかに鋭い牙で噛みつかれた様な妙な傷を負う。そうなると高熱を出し、何日も寝込むことになってしまうのだった。
村人たちはこぞって、それは『水虎』という妖怪の仕業であると言い合った。
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水虎は河童たちの親分と言われており、姿も河童のそれに近い。竜宮に仕えており、人を襲えば襲うほど自らの地位が上がっていくのだそうな。難を逃れるには水場に近づかないようにするか、もしくは水虎はささげと鎌の金気を嫌うとされているのでそれを見に着ければ良いのだそうな。
ある日の事。
水場に人が近づかなくなったので、水虎は痺れを切らせて人間の女に化けてみることにした。人に化けた水虎は人気のない街道筋で誰かが来るのを待った。
やがて誰かが近づいてきたので、怪しまれないように声をかけた。
しかし、その村人は何かと聡く違和感を覚えた。村人は水虎が化けた女に何かを呟く。すると水虎はギャッと悲鳴を上げて逃げて行った。
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村人は妖しいと思ったその女に、正体は水虎ではないかと鎌をかけてみたのだそうな。
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