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鬼の噺
他にやりようはいくらでもあったのに・・・。
東京を江戸と申した時分のお話。
陸奥の国のとある村に腕の立つ一人の侍がいた。浪人ではあったが、絵に描いたような厳格な侍だったので、村人たちとも折り合いのつかぬことも多々あった。。
ある時。
その侍の住む村に『鬼』が出るようになった。作物や家畜が襲われたり、町から持ってくる荷物を取られたりとただならぬ害を被っていた。
そこで件の侍が鬼退治に名乗りを上げた。
◇
先祖伝来と言われている刀の切れ味は流石のもので、岩をも砕く鬼の角を見事に切ってみせた。
怯んだ鬼は山の奥へと逃げ勝っていったのだが、翌日になると切られた角を返してほしいと願い出てきた。侍は、二度と人間に害をなさぬことを条件に鬼の角を渡してやった。
すると何人かの村人は侍に、何故角を返してしまったのかを尋ねてきた。
「鬼と戦った拙者が、その証をどうしようと勝手ではないか」
と、また角のたつ言い方で返してきたという。
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