幽霊の噺
東京を江戸と申した時分のお話。
人が死んで、その霊魂が未練で以って化けて出るのが『幽霊』であるが、他にも死霊、化け物、亡霊、亡者、物の怪とその呼び名は枚挙に暇がない。
誰かが言うには、幽霊とは美人でなければ絵にならないのだそうな。
綺麗な女が青白く、未練に溢れた顔をして出るから幽霊は恐ろしさの中に、か細く儚い魅が備わるという。
◇
ある女が痴情のもつれで殺されてしまい、あの世へと旅立つことになった。
その未練は凄まじく、化けて出て相手の男を呪ってやろうと心に決めていたのだが、あの世にはあの世の律があった。幽霊として化けて現世に出るには、閻魔大王の許可が必要なのだという。
女は来る日も来る日も足しげく閻魔大王へ幽霊となる許可を求めたが、中々聞き届けてはもらえなかった。
その内に閻魔大王に仕えている地獄の鬼たちとも顔見知りになっていった。
「お、姐さん。今日もご精が出ますね」
「ええ。早いところ、あの人のところに化けて出てやりたいからね。けど閻魔様ったらちっとも許してくれないのよ」
「因みに姐さん、申請書には何て書いてあります?」
「幽霊として化けて出たいって散々書いてるのよ」
「ああ、そうですか」
鬼は何かに気が付いたようで、女に諭すように言った。
「それなら今日あたり、幽霊でなくて化け物で出してみてはどうでしょう?」
◇
すると女は、見事に現世に化けで出る許しを貰った。
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