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怪談 しゃれこうべ  作者: 小山志乃
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板鬼の噺

あまり好きな形式ではなかったのですが、冒険やらアクセントとして。


小説家書くのって難しいですね。

 毎度の馬鹿馬鹿しいお話で御座います。


 世の中には、中々どうして様々な妖怪がおるようで。


 今日はと申しますと『板鬼』というお化けの話で御座います。


 板の鬼という、想像し易いんだか、し難いんだかよく分からない妖怪ですな。


 ただ、話を聞きますとただの板っきれに鬼のような角が二本ばかし生えただけという、子どもの落書きのような姿をしておるそうです。


 ところが、この板鬼。


 やることはと言いますと、これまた恐ろしかったり致します。


 ◇


 こんな話が残っております。


 とある藩にお侍さんがおったそうです。仮に伊井(いい)衛門(えもん)さんとでもしときましょう。


 この伊井衛門さん、お仲間の侍と一緒に夜番で市中見廻りをしていたそうです。


 提灯片手にぐるりと町を回りまして、やがて見廻りを終えて番屋に戻ろうしたところ、連れが妙な事に気が付いたそうですな。


 月明かりでぼんやりと番屋の輪郭が影になって浮かんでいたのですが、どいう訳か屋根の一部が異様に飛び出しておりました。


 二人揃って指をさして、おかしくはないかとなどと話しておりますと、それが板だと気が付きました。


 なんでそんなことになっているかと訝しながら近づきますと、不意にその板が宙を舞って、二人に近づて参りました。


 これは物ノ怪の仕業に違いないと、二人は咄嗟に刀に手を掛けました。


 すると、その様子に気が付いたのか、板鬼は元々刺さっていた番所の方に引き返しますと、窓の隙間から中へスルスルっと入って行ったそうです。


 番所に中には、同じく夜番の仲間たちがいるはずです。伊井衛門さんは急いで番所に駆けて行きました。


 外から恐る恐る中の様子を窺っていますと、何かを叩きつけるような物音と呻き声が聞こえてきました。やがて…なんの音も聞こえなくなると、伊井衛門は意を決して中へと入ります。


 すると・・・。


 中は地獄と見紛うほど悲惨な光景が広がっておりました。


 番所の中におりました、五人の仲間の侍は板に押しつぶされたかのように潰れ死んでいました。


 後々調べましたところ、五人は刀を手の届かぬところに置いていたばかりか、酒を飲んでいたことがわかりましたそうな。


 無事だったお二人は咄嗟に刀に手を掛けたことが功を奏したという訳でございます。


 さて。このお話が広まりますと、やはり武士たるものは何時如何なる時も慢心することなく、刀を抜けるようにしておかなければならぬと、互いに戒め合ったそうですな。


 ◇


 それ以来、この藩のお侍さん方はお腰のものを容易に手放すことなく、妖怪相手には「帯刀」していた刀で「対等」に立ち向かえたという、『板鬼』の一席でございます。


 おあとがよろしいようで。


読んでいただきありがとうございます。


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