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槍毛長の噺
東京を江戸と申した時分のお話。
鳥山石燕という一人の妖怪画家によって一つの絵に並んだ三体の妖怪が描かれた。いずれも経緯や出自の多くが今なお謎に包まれている。
『槍毛長』は、その中の一体である。
◇
この槍毛長、かつて名のある者が触れた毛槍の妖怪であるとは伝えられている。毛槍は棒の先端にふわふわとした動物の毛をあしらった道具のことで、大名行列などの先達がこれを持つことが知られている。
その名残かどうかは分からぬが、槍毛長も先陣を切るかのような描かれ方をしている。ところが、槍毛長がその時に手にしているのは毛槍ではなく、どうしてか槌なのである。
実はこの妖怪はかなりいい加減な性格をしている。
槍の妖怪なのに槍を手放しているのも、投げやりな性分だからだそうな。
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