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鈴彦姫の噺
なーんかもう少しやりようがあったような気がしますけど、思い付かないから投稿(長い言い訳)
東京を江戸と申した時分のお話。
かつて神話の時代に天岩戸に隠れた天照大神を誘い出すために神楽を捧げた天鈿女命を祀るある神社の蔵に、誰も謂れの知れぬ古い神楽鈴がしまわれていた。いつから誰が持ち込んだのかは分からなかったが、その蔵にしまわれている聖具神器の中でも最も古びているのである。
実はこの神楽鈴、かなりの年月の間に霊力を秘め、あと一度音を出すと妖怪になるというところまで来ていた。
ある日の事。
その神社のある土地に地震が起こり、件の鈴の入っていた箱が棚から落ちた。そしてその時の弾みで、鈴がチリンと鳴った。
するとにわかに鈴が、頭が神楽鈴で巫女の衣を身に纏っている『鈴彦姫』という妖怪へと転じた。
◆
鈴彦姫は幾千の神楽の度に用いられ、天鈿女命を祀る神社の気を当てられたその神楽鈴が最後の「鳴れの果て」なのだ。
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