表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪談 しゃれこうべ  作者: 小山志乃
128/365

化け雛の噺

桃の節句


 人形のように人を象った器物はより不可思議な性質を宿しやすいと言われている。特に人間の願望や欲求を込められている雛人形などは、とくに人の気を吸いやすい。


 こうして霊性や妖力を宿して、妖怪と化した雛人形を『()(びな)』という。


 ◇


 ある商家に大変な長者の家から一人の女が嫁いできた。その女の家では代々末女が嫁ぐと、その度に雛人形を一体ずつ買い足して、母から子へ受け継がせるという習わしがあった。女も例に漏れず、実家から雛人形を持参したのだが、その代で丁度百体目を数えたのである。


 しかし、その家の隠居が大量の人形の事を気味悪がり、女を上手い具合に言い包めて少しずつ売ったり捨てたりし始めた。


 粗方の人形を処分した頃。そこの家で怪異が起こり始めた。何か小さいものが夜中に廊下を走るような音や、微かだが泣くような声が聞こえるのである。


 その怪異に怯えながら過ごしていた、ある日の事。


 隠居が寝ていると、突然足に痛みが走った。


 驚いて布団を剥し、痛みのあるところを触ってみると何かがくっ付いているようだった。這うように外へ出て、月明かりにそれを照らしてみると、思わず全身に身の毛もよだつような寒気が走った。


 隠居の腿の肉に、首だけになった雛人形が噛みついていたのである。


 (もも)を数えるまでに代々の家と娘を守って来た雛の怨みを、(もも)に食らいついて晴らした、化け雛の話である。

読んでいただきありがとうございます。


感想、レビュー、評価、ブックマークなどして頂けると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ