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如意自在の噺
東京を江戸と申した時分のお話。
ある寺の如意が年月により妖力を帯びて『如意自在』という妖怪へ変化した。
如意とは坊主が経を読んだり、説教をする際に手に持つ棒状の道具である。ある位にならなければ持つことを許されなかったので、僧侶の威厳を保つために持つようになったと言われているが、先端の形が鉤のように反り返っており、孫の手のように背中を掻くのにも使われたという。
◇
この如意自在。
長年に渡り愛用されたことに感謝をして、寺の為にあちこち走り回り炊事洗濯掃除などを始め、様々な用事を器用にこなしていた。
お蔭で寺は豊にこそならぬが、和尚も小僧も修行に専念できるようになったという。
そんな様子を和尚はこういった。
「細かいところにもよく気が付く。痒い所に手が届く奴じゃ」
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