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Say!天缶!  作者: 信条
53/53

53缶目「思い違い?」

「シェルドレイクの仮説」という、ざっくり簡潔に言うと〝テレパシー〟に近い現象について立てられた仮説がとても面白くてワクワクしました。


過去に起きたことを参照に、他の場所で起きたことが直接触れなくても情報として伝わる現象。

私や皆さんの日常生活で起きる「閃き」もその1つとされています。


この閃きを自在にコントロール出来たらなぁ……なんて夢見ながら今日も書いております

 ミユリを預けて一旦自分の部屋に戻った誠磨は、改めてリビングの惨状を目に焼き付けてスマホを取り出す。


「あの細腕一本でこんな状態に……、あんなのどうやって止めりゃいいんだよ!」


 今後何かに使えるようにと、投げつけられたテーブルの角で派手に割られた窓際の写真を念の為3枚ほど撮影し、ガラスの破片が無い廊下に腰を下ろした。


「はぁ……はぁ……なんか、暑いな……エアコンは……付けっぱか、まぁ消す暇なんて無かったしな。でも何でこんな身体が火照って……」


 疑問を浮かべ手の平を額に当てると、そこからじんわりと熱が伝わり同時に寒気がした。


「風邪か? こんな時に……もうミユリのが移ったのか? いやでもあれはウイルスによる風邪じゃないだろうし、う~ん……」


 視界にブラーがかかったように見えた途端、頭部の重みを感じて前方へとうなだれる。そしてそのまま意識が遠退いていこうと床に寝そべっていくと、部屋のインターホンが頭に響いた。


「うん~? あぁ、もう来たのか」


 ふらふらとだるそうに立ち上がってインターホンの受信ボタンを押す。


「あ、すみません窓の修理でお伺い致しましたGリペアの葛羽かずらばと申します~! 甘巻様のお宅でよろしかったでしょうか?」


「はい……今開けます」


 目を冷ます為に台所のシンクで顔を洗い、コップに水を注いで一気に飲み干してから玄関へ向かって扉を開ける。するとそこに青色の道具箱を片手に青い繋ぎの制服を来た中年の男性が笑顔で立っていた。


「あ、すみません甘巻様、本日はよろしくお願い致します。早速中の方を見させていただいてよろしいでしょうか?」


「あ、はい…… (ダメだ、まだ頭がぼうっとする……)」


 意識を繋ぎ止めるように額に手を当てて、葛羽が窓の方へと足を運ぶ様を見る。


「なるほど……、この感じでしたらおそらく10分~15分ほどで完了すると思いますので、その間この用紙にご記入お願いします」


 そう言って業者は青い写し紙が重なった申請書と黒いボールペンを手渡し、誠磨はそれを壁に当てながら書き込む。


「(はぁ……早く済ませてミユリを回収したいが、この状態だと繋益さんの部屋に行ってそのまま寝落ちしそうだな)」


 何とか意識を強く持って必要事項への記入を終え、その後も修理の様子を見届けて葛羽の宣言通り10分で済まされた。そして繋益の言っていた通り修理代に約27000円支払い、玄関から外へと業者を見送った。


「ありがとうございました」


「いえ、本日はご依頼ありがとうございました! またいつでもお電話ください、失礼します」


 葛羽は丁寧に大きく会釈し、青色ボディの社用車へと戻っていった。


「ふぅ……」


 息を整えて誠磨も外へでて部屋に鍵をかけ、繋益の部屋へと移動しようとした矢先に誠磨は妙な光景を目にした。


「……?」


 先程まで笑顔絶やさず対応していた葛羽が、社用車の横で誠磨の方を電話越しにチラ見していたのだ。


「……な、なんすか?」


「っ!?」


 誠磨の目線に気づいた葛羽は慌てて社用車に乗り込み走り出していった。


「お、おい!! 何だよさっきのは!!!ーーったく、何だよ……客の前で電話越しに愚痴か? せめて誰も見てないとこでしろよ……つうか仕事中にそんな電話すんなよ! 二度と頼まねぇわあの業者……流石に後でクレーム入れるか」


 愚痴を溢しながら熱を帯びた頭を抱えてフラフラと繋益の部屋に立ち寄り、軽く左右に頭を振ってドアノブを捻り中へ入る。するとーー




「……う……うぁああああ!!」


 突然部屋の奥から叫び散らしながらミユリが走ってきて、その勢いのまま誠磨の鳩尾に頭が衝突した。


「うぉわっ!? っと……え? なにどうした!?」


 熱を帯びたまま、寝ぼけていた意識だけがその衝突により吹っ飛んだ。そして繋益がやれやれと頭を軽く掻き毟りながらゆっくりと近づいてくる。


「っ……!」


 ミユリは誠磨の服の両手で生地が伸びる程に強く握りしめ、その様子から彼女の危機感が伝わった誠磨は急いでミユリを自分の後ろへ隠す。


「おいおい、俺が何をしたっていうんだ」


「繋益さん、ミユリに何をしたんですか?」


「あぁ? いや別に大したことは……ただーー」


 繋益の言葉を遮るように、誠磨の脇腹辺りからミユリの小さい声が聞こえくる。


「あやつは妾の口に……色々と……」


「……、……繋益さん?」


「いや誤解を招くような言い方はやめてくれって、俺はーー」


「痛かっ……た……」


「ッ!!」


 細々と聞こえるミユリの痛々しい声で誠磨の上半身に帯びる熱が急激に高まった。


「……繋益さん、今日は朝から色々とお世話いただきありがとうございました。でもこれは……また別の問題ですよね?」


「だから誠磨、勘違いするなって……俺の守備範囲を知っているだろ? ガキは対象外だって」


「じゃあ何でミユリがこんな怯えてるんですか?」


「……」


「それは……ちょっとビックリさせちまったかもしれないが」


「そんなレベルじゃないですよね? どうしたんですか繋益さん……らしくないですよ」


「……分かった、説明するから一旦リビングに上がってーー」


 後ろ向きに親指をリビングの方に差して促そうとするが、ミユリが誠磨の服の裾を強く後ろに引っ張り拒否反応を示した。


「すみません、事情はまた後で聞かせてください。俺も何か熱っぽくてすぐにでも寝てしまいそうなのでこれで失礼します」


「あ、あぁ……」


 誠磨は軽く会釈し玄関と扉を開けてミユリを連れて自宅に戻っていった。


「はぁ……まぁ熱っぽいと言っていたし、落ち着いた時にまた声掛けてくるだろう」


 繋益は大きくため息つきながら左手でうなじを揉み、脱力して勢いよくデスクチェアに身を任せた。




「ミユリ……悪いが話聞く前に一旦寝かせーー」


「……直っておる」


「ん? あぁ、ミユリが寝ている間に直してもらったんだ」


「誰にじゃ?」


「業者、感じ悪いおっさんだよ」


「それはあやつの事か?」


「あやつって……あぁ繋益さんじゃないからな? そもそも俺はあの人のことをそう呼ばないし友人だし、多分さっきまでのも何かの……とにかく一旦休ませてくれ。熱っぽくて頭がぼうっとする、ミユリもまだ熱あるんじゃないか?」


「まだ熱いが……」


「じゃあ俺の布団で寝てな、俺はいつものようにコイツを枕にして寝るからーー痛ってッッ!!」


 真ん丸いスライム型のプニィの巨大クッションを枕にして、横になった誠磨の背中へ唐突にミドルキックが入る。


「おい何すんだよ! 俺一応病人だぞ!? ミユリもだけど……」


「妾のはもう大したことない、それ寄越さぬか」


 ミユリはファブリーシュを片手にプニィのクッションを指差して仁王立ちする。


「いやだから、お互い熱出てんだから大人しく横になれって! 後で……まぁ起きてから冷たいタオル頭に乗せてやるから」


 だがミユリは誠磨の言い分に聞く耳を持たず、誠磨の顔にファブリーシュの液を数発ほど照射する。


「黙ってそれ寄越さぬか!」


「っぶ……んぶっ! 分かった!! 分かったからやめろ! もったいないから!!」


 手で照射を遮りながら上体を起こし、四つん這いで布団へと逃げ込んだ。


「全く……、汗が染み込んでおるではないか汚らわしい奴め」


 そう愚痴りながらプニィのクッションにファブリーシュを吹き掛ける。


「……で、どうすんだよ? まさか俺に代わって床で寝るんじゃーー」


「馬鹿言うでないわ! げ~むするんじゃ」


 ミユリはP4Zの電源を入れてDJMIXを起動する。


「ゲームって……いや、しかも音ゲーかよ! 熱あるのにやんのか!?」


「うるさい、集中するんじゃ黙って寝ておれ!」


「……分かったよ、無理するなよ? 寝たい時はまぁ……俺、壁の方へ寄って寝るから空いてるとこ使ってくれ。くれぐれも床で寝るなよ?」


「……」


 ミユリに返事もせずゲームに没頭する。誠磨は身体を横にしてモニターを少し見ると、画面の真ん中に映る譜面が最初の頃より降ってくるバーの数がほんの少し増えている感じがした。なので上達しているんだと少し微笑ましい気持ちになりながら眠りにふけった。


「(お前を傷つけるモノからは、俺が遠ざけてやる……)」




つづく

8月上旬に申し上げた通り、生活環境が大きく変わるうえでの準備、遂行、適応を済ませるべく一時的に休載致します……。

3ヶ月を目処に定期投稿の復帰を目標としておりますが、どれほど長引くか未定なので何とも言えない状況です。


不定期でも投稿できるよう執筆は続けておりますのでご安心を!

(というか描きたい内容が多すぎて焦れったさがヤバいです)


毎週読んでいただいた皆様には本当に感謝しております!

皆様の為、そして自分の為にも早期復帰出来るよう頑張ります!!


暫しの間お待ちいただけると幸いです……本当にすみません!!!

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