47缶目「被害者ファイル?」
久々にZETMANのOP聴いたら少し元気が出ました、空耳も面白いですが何気に良い曲ですので宜しければ一度聞いてみてください
翌日の10時頃、いつものように雑魚寝からミユリの鈍器によって叩き起こされ、頭の近くで転がっているシャンプーの容器に目が止まった。
「今度はシャンプーかよ……まだそこそこ入ってるし、物を投げつけるのはやめろと言っただろ……」
「起きないお前が悪いんじゃ! 腹減ってる中で毎日起こしてるこっちの身にもならぬかこのロリコン寝坊主が!」
そう仁王立ちして両手を腰に添えて鼻息を鳴らす。
「だからロリコンじゃないって、いつつっ……」
「仕方なく気を遣って洗剤から他のに代えてやったと言うのに、女心の分からぬ奴じゃ」
「いや取って付けたように女心を誤用すんのやめろ、投げつける時点で気を遣ったとも言わない」
「うぬぅ~……黙れ戯けっ! はよ飯作らんか!!」
「はぁ……もう分かったよ (ったく家だけでも相手すんの大変なのに、仕事場で2号機が待ち構えてると思うと……胃に穴が空く前にどうにか解決出来ないものか)」
10日目の雑魚寝にまだ落ち着かない身心へ鞭打つようにして起き上がり、軽くストレッチしてからスマホを片手に台所へ向かう。そしてネットで掲載されてるレシピを確認して作り置きの昼食と夕食を決めつつ、朝食に炒り卵とベーコンを用意する。
すると一昨日の一件から一切連絡を取っていなかったスピルの方からLINERのメッセージが届いた。
『先日はうちの姉が本当にすみませんでした……、私もあんなことするとは思わなくて……』
『私本当に仲良くしてもらうよう二人きりになってもらっただけで……、許してほしいだなんて思っておりませんがどうか、貴方だけでも私と会っていただけませんか?』
『私がここに来て初めての友達で、失いたくないんです……。甘巻さんが離れてしまったら私また姉と二人きりになってしまいます』
「(早い早い! 俺が打つ前に謝罪、言い訳、お願い、自虐、脅しまでの流れが早すぎるから!)」
『ミユリちゃんにも改めて謝りたいです、無理でしたら今は甘巻さんにだけでも会いたいです……。お願いします……』
『落ち着いてください、今はちょっと忙しいので後でこちらから電話します』
『会いたいです、お願いします』
『分かりました』
誠磨の返信後も押しきろうと思っていたようなタイミングでメッセージを差し込まれたが、すぐに承諾メッセージが添えられて勢いは止まった。だが、それとは別の問題が鼻孔に刺激を与える。
「おい、なんか焦げ臭いぞ?」
「うわ! ヤベッ!?」
焦げた二人分のスクランブルエッグを自分の皿に移し、新しく一人分作って別の皿に移して白米と漬け物も一緒にテーブルへ持っていく。
「お前のそれ……真っ黒じゃな」
「まぁ捨てるの勿体ないし、多少焦げてる方が好みなんだ。あとそっちに焦げは入っていないから安心してくれ、ちゃんと綺麗にしたフライパンで作っているから」
「ならば良い」
二人は遅めの朝食を済ませ、ミユリはいつものようにモニターとPZ4に電源を入れてゲームをやり始め、誠磨は炊飯器の予約タイマーと洗濯機に電源を入れて家事を済ませる。その間どうやったら家事手伝いをしてくれるのか、それを習慣づけられるのかを考えながら。
しかし結局答えは出ず、率直に要求して断られたまま家事をやり終えてしまったのでスピルに通話をかけてみる。すると2コール寸前で繋がり、思いの外早かったので若干怯んでしまう。
『もしもし!?』
「あ、もしもし甘巻です。すみません遅くなっちゃって、家事を済ませていたもので」
『いえいえ、それでその……』
「今日は15時まで空いてますので、それまででしたらお話出来ます」
『ホントですか!? ありがとうござーー』
「但し、例の缶詰に関する情報を調べて持ってきていただくこと、これを条件とさせてください」
調べてもらう為にこちらから貸す筈の空き缶をまだ手渡していないので、若干意地悪な言い分だがこうでもしないとまた有耶無耶に終わってしまいそうな予感がした。なので多少の強制力を持ってしてもミユリの情報を引き出そうと、少し強めに出てみた。
『分かりました、実はお伝えそびれておりましたが、ある程度の情報はこちらで調べてありますのですぐにでもお持ち出来ます』
誠磨はいち早く情報を得ようと集合時刻を12時と指定し、場所を聞いたところ誠磨側の一番近い公園でとのことで、一度ミユリと訪れたことがある近所の公園の住所をスピルに伝えて通話を切った。
「ふぅ……、じゃあミユリ、俺は少し早めに出てくから何かあったら繋益さんの部屋……えっと106号室に避難させてもらってくれ」
「お前まだ人影とかいうのを気にしておるのか、みみっちぃ野郎じゃのう」
「何度も言うけど、そいつは壁抜けしてきたんだよ、警戒しない訳にはいかないだろ」
真夜中に一度遭遇した藍色髪の人影は、毎日可能な限り見張っているがあれから一度も姿を見ていない。目的が何なのか、それが成されたのかは分からないが、被害を受けたわけでもなく実際に何かされた形跡も無ので誠磨自身“度重なる疲労から見えた幻影”だと認識しかけている。
「缶詰といい、お前の妄想に付き合わされるあやつも大変じゃな」
「だから妄想じゃないって……行ってきます」
支度を済ませて誠磨は玄関から外へ出た。
「(……妄想だったら今そこに居ないだろ)」
12時を回る15分前に公園内で樹木が日避けになってくれているベンチに座り、スマホでネットサーフィンしながらスピルの到着を待った。
「(もう10日以上こうして空き時間ずっとネット漁ってるけど、1つも目ぼしい情報が出てこない。思えばあのTシャツのイラストレーターについてもスピルさんが見つけてくれた情報で、現状自力でミユリに繋がりそうな情報を割り出すのは不可能に近い。ここはもう少し協力してもらう必要がありそうだ)」
「甘巻さ~ん!」
ベンチに座って考え事をし始め5分と経たないうちに、スピルが手提げ鞄を両手で前に持って小走りでこちらへ向かってきた。
「あ、スピルさんこんにちは」
そう言ってベンチから立ち上がる。
「こんにちは、ごめんなさい遅れてしまって……」
「いや、時間まであと10分ありますし遅れてませんよ、大丈夫です。取り敢えずここ座りませんか? そこの木が日避けになってくれてそこそこ涼しいですよ」
「そうなのですね、ではご一緒させていただきます」
スピルは少し汗ばみながらも屈託の無い清らかな笑顔を誠磨に向ける。
「えぇ、ど、どうぞ (ダメだ……こういうのに弱すぎて動揺を隠せない……電話越しの時に多少強気でいった分、余計にカッコ悪くて恥ずかしい……)」
意図的か分からずして先攻を打たれた誠磨は、清楚な金髪令嬢の二次元的な姿に緊張して先程までスマホを弄っていたラフな格好には戻れず、背筋を伸ばして両手を膝に置くあからさまに緊張した姿勢をとってしまう。
「姉があんなことしてしまって、結果的に私が共犯と思われてもおかしくありませんから……もう会っていただけないんじゃないかと」
「いいえ、その……そう思わなかったと言えば嘘になりますが、えっと……友人としてその……」
「ん?」
スピルは微笑みを崩さずに首を傾げ、ほんの少しだけ顔を寄せてくる。その瞳にまたあのアニメのようなピンク色のハートマークを浮かべている。それをチラ見した誠磨は心臓を鷲掴みされたような感覚を帯びて反射的に目を逸らした。
「……どうされました?」
「すみません……まだその、こうして二人で話すのに慣れなくて…… (んなとこでどうすんだ俺! 情報聞きに来たんじゃなかったのか!!?)」
「フフッ、その可愛らしい一面素敵ですよ」
「え?」
「いえ、ご期待に添える情報かは分かりませんがちょっとしたファイルをお持ちしました」
ピルカは鞄から淡いピンクの薄いファイルを取り出して、二人の太ももの間に乗せて1ページずつ丁寧に捲っていく。そこにはミユリが入っていたものに似た形状や塗装の空き缶が、床やテーブルに落としたのを恐る恐る近距離で撮ったようなピンボケしている写真がいくつも貼られていた。そしてその横にそれぞれその缶詰の所有者と思わしき人物の顔写真と名前が載せられている。
「これは……!?」
「とある情報網からかき集めた、結果的に缶詰によって命を落とした被害者達です」
「被害者!?」
「しーっ! 声が大きいです」
「す、すみません……」
スピルが周囲を然り気無く見回し、平日の昼間なので通行人は年配や主婦らしき人が多少通りかかるくらいなのを確認してファイルに視野を戻した。
「……甘巻さんから送られた写真を見て驚きました、まさか私が探しているものと同じ写真が送られてくるなんて……」
「何故この写真を? それに探しているものって……」
スピルはどこから話そうかと悩んでいる様子で少々口ごもったが、間を空けて少し顔を近づけながら小声で話し始めた。
「……その缶詰の写真は、ネットのとある掲示板サイトのスレッドに貼ってあったのを偶々見つけて拾いました。そのあと、スレッドが流れていないか確認しようと再読み込みしたら、十数分と経たないうちにスレッドごと消されてしまっていたんです」
「消されていた……? そんな危ないものなんですか?」
「多分……、その缶詰の隣に貼ってある写真が、スレッドが消された数日後にネットニュースで奇妙な死亡事故として取り上げられたものです。外傷は無く、内蔵にも異常が見られないので脳による何らかのショック死かもしれないそうです」
「ショック死……」
「その後また同じ掲示板で、別の方のピンボケした写真をまた見つけて保存して、そのまたすぐ後にスレッドごと消されました」
「よく2度もその瞬間に居合わせられましたね」
「いえ、多分この2件の間にいくつかあったかもしれませんけど、出来る限り張り込んだ末にいくつか見つけたんです。半年ほど前に」
「えっと……スピルさんがこの町に来たのっていつでしたっけ?」
「7月1日なので約一ヶ月前ですね。祖国に居る時に見つけたんですけど、まさか用事で引っ越してきた町で持ち主と出会えるなんて……」
誠磨は自分の鞄からミユリの缶詰を取り出す。
「俺はこの缶詰についてよく知らないので、スピルさんが話したこと以外のことは何もーー」
すると突如ファイルに添えていたスピルの両手が、缶詰を持つ誠磨の右手を捕らえて優しく握った。
「いっ!?」
「……何か、身体におかしなところはありませんか?」
金髪の西洋風な美女に手を握られ、心配そうな顔で見つめてくる状況に緊張と気まずさを覚えて心拍数が跳ね上がる。
「え……あ……」
発声を忘れたかように息苦しく、言葉を浮かべようとして真っ白にリセットされる。だが、左手から肘にかけての部分が不思議にも、意識とは無関係に少し解れていくような感覚を帯びていた。
つづく
ミユリのと同じ派手なパステルカラーな色合いと柄の缶詰の所有者が他にも何人かいて、それらがネットに写真をアップしてすぐ亡くなったというのが今回の話ですね。
当時のモチベの高さによって内容の濃度が変わるので、今書いてるところより数話先を書いてるとたまに忘れがちになりますw
なので今書き進めてるところの続きを書く時と、投稿前の確認で読み直しは欠かせませんね。
ではまた次回、来週の金曜日をお楽しみに!




