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Say!天缶!  作者: 信条
43/53

43缶目「黒いキャミソール?」

最近PS4ソフトのスパイダーマンをクリアしまして、スパイダーマンが戦闘や移動中に喋るギャグの独特さが好きで勉強になりました。

今後、貴方が近しいニュアンスをどこかで感じたら、きっとその部分は私が意識して書いているとこなのかもしれませんね。

 夜中に雛月から電話が掛かった当日、いつものように雑魚寝してミユリに叩き起こされたバキバキな身体を鞭打って、一人で二人分の家事をこなして通勤時間に家を出る。


「(はぁ……、こんなんじゃまたスピルさんにマッサージしてもらう羽目になるわ。やっぱ布団買い足した方が良いかな……でも布団を横並びにしたらそれはそれで『変態!!』っつって殴られそうだけど)」


 そう冗長を浮かべながらも昨晩の雛月からの電話が気になって、自然と歩幅が広くなりいつもより少し早めの出勤20分前に居酒屋“千夜桜ちよざくら”に到着した。


「おはようございま~す」


「あぁ誠磨さん! おはよっす」


「あ、どうも一流木いちるぎさん」


 控え室に入ると、横長テーブルに座っている一流木が誠磨に挨拶を交わしつつ、また何やら紙1枚に執筆していた。


「それ、何書いてるんですか? この間から熱心に書いてるみたいですが」


「あぁこれですか? 実は店長が、“良い感じのレシピを持ってきてくれたら、うちのメニューに載せさせてもらうワ。売れ行きによっちゃ給料も上げてあげる”って私に課題をくれたんですよ~!」


「へぇ~、スゴいですね。俺そういう話聞いたこと無いですよ」


「いやぁ……だって今回の課題のテーマ、“恋する乙女の味”……ですよ?」


「あぁ俺には無理な創造ですね……、というか居酒屋でそのテーマって……」


「でしょ~? だからこうして悩んでいるんですよ~……、そこで誠磨さんにちょっとお願いがーー」


「ちょっと待った! そのお願いを俺が言い当てたら、今日の俺の賄いを作ってもらえますか?」


 誠磨がこう言うのには理由があり、彼女は城崎店長に次いで料理の腕が良く店内と一部の常連客の間で周知されている。その為、よくこうして従業員から賄いを頼まれたり、ホールスタッフなのに一部の常連客から密かに調理を頼まれたりしている。


「余程の自信があるようですね……いいでしょう、当ててごらんなさい!」


「俺に彼氏役になってもらえませんか……っと (あぁダメだ自惚れてるみたいで嫌すぎる……恥ずかしい!)」


「せいかーい……と言いたいところですがブッブー!」


 一流木は両手を前にしてバッテンを作る。


「えぇ~、そんな……今の流れからしたら明らかにーー」


「惜しかったけど不正解なんだな~これが、というわけで乙女心を当てられなかった誠磨さんには作ってあ~げないっ!」


 陽気で少し可愛い子ぶった言い方に、女性への異性としての付き合いが無い誠磨は簡単に怯んでしまう。


「(くそ……何でそんな可愛い感じで言うんだよ、寧ろ悔しさを感じねぇよ!)ーーところで、雛月さんは……?」


「あ、流しましたね? まぁいいですけど……、今は深川君の家に行ってますよ」


「一人でですか?」


「はい、私も行くって言ったんですけど~、あまり店にいる人減らしたくないからって一人で行っちゃいました」


「そうですか…… (今日も連絡来てないということか……、本当にどうしたんだ深川さん)」


「あ、そういえば昨日夜中に陽与ひよちゃん先輩から電話来たんでしょ?」


「えぇまぁ……」


「やっぱ泣きついてたんだ~、かわいいなぁ」


「いや泣きついてませんから、連絡来たかどうかの確認されただけです」


「そっか~、じゃあ私が代わりに泣きついてあげましょうか?」


「結構です、それより俺の賄い作ってください」


「色気より食い気ですか誠磨さんは……、ダ~メ~で~す!」


「分かりましたよ…… (というか何だことラブコメみたいな恥ずかしいやり取りは! 職場といい友人関係といい、色々と傾きつつあって怖いわ!)」


 その後は誠磨が勤務時間になる直前に雛月が一人、落ち込んだ様子で戻ってきてそのまま何とか仕事をこなしていつものように就業時間に控え室へ4人で集まる。


「そんなに気を落とさないの、彼だってきっと事情があるんでしょ」


「でもあの子は無断で何日も欠勤する酷い子じゃないよ! 店長も知ってるでしょ!?」


「そりゃアタシも年単位で見てきてるからねぇ」


 城崎店長はデスクに向かってタイピングを打ちながら、隣に立っている雛月の少し不安定な情緒を宥めるように優しく受け答えをする。

 反対側のテーブルに並んでもたれている誠磨と一流木も、不安そうな顔で黙って考え込んでいる。


「で、そろそろ話してくれるかしら? 深川ちゃん家で何があったのか」


「……」


「陽与ちゃん先輩、私たち何も悪い風に捉えませんから。ありのままを話してもらえませんか?」


「俺たちも心配ですから」


 二人の言葉により決心を抱いたのか、雛月は重い口を開いた。


「……いたわ」


「あ、いたんだ」


「でも出なかった」


「……それだけ?」


「うん……」


「話はした?」


「してない、インターホン越しにちょっと返事されただけですぐ切られちゃった」


「もう~、押しが弱いなぁ。明日というか、今日の昼過ぎくらいに私が行ってきますよ」


「あ、じゃあ俺も行きます。もしかしたら男にしか相談できない悩みかもしれませんし」


「それならLINERで誠磨さんに連絡来ない?」


「あ、確かに……」


「まぁ何にせよ二人で行ってきてもらっていいかしら? アタシまで行くと恐喝と思われそうだし」


「うぃ~っす」


「分かりました」


「お願いねーーって誰か恐喝にツッコみなさいよ!!」



 翌日、深川の住む少し古びたアパートの前へ13時頃に一流木と現地集合した。一流木は誠磨が目にする時はいつも仕事場の制服なので、透けたフリル付きの肌色ワンピースにジーンズのホットパンツといった陽気な夏服に内心でうつつを抜かす。


「(普段着を見る機会があまり無いせいか、インパクトが強いな……って思う俺もまたキモいな)」


「誠磨さん、深川君って確か一人暮らしですよね」


「え、えぇ……そう聞いてます。雛月さんが昨日来た時間より早いですけど、居るかどうか確認してみますか」


 そう行って古びたアパートの階段を上がって行き、二階の真ん中にある203号室の前で足を止めて、ひび割れたネームプレートに“深川”と書かれているのを確認する。というのも彼とは二人とも一年以上の付き合いがあるのだが、本人が普段から人を招き入れようとしないが為に二人は城崎店長から送られた住所を便りに各々歩いてきたのである。

 初対面に会うような緊張のもと、誠磨が黄ばんだインターホンを鳴らして数十秒待機する。


「……」


「……出ませんね」


「もう一回鳴らしてみます」


 その後も何回も鳴らしては待機を試みたが、扉の奥からの物音1つすらしないので二人は留守を疑った。


「どこか出掛けてるんですかね~?」


「う~ん、どうしましょうか」


 二人困って立ち尽くしていると、食材を積めたトートバックを片手に持った中年の主婦らしき人物が階段を昇って二人に話しかけた。


「あなたたち、そこの人の知り合い?」


「はい、職場の友人です」


「こんにちは~」


「はい、こんにちは。あたしはその隣の部屋に住んでるんだけどね、この間変な物音がして以来部屋から出てこないのよ」


「変な物音……ですか?」


「物音というか騒音? 何かよく分からないんだけど、心配になってあなた達みたいにそやって何度も呼び鈴を押したんだけど暫くは返事が無かったのよねぇ」


「ん? その言い回しってことは、一応返事はあったんですか?」


「えぇ、だいぶかかって警察を呼ぶところだったんだけどねぇ、聞き覚えの無い声だから尚更ビックリしちゃったんだけど……しつこいあたしに呆れたんだと思ってそっとしておいたわ」


「そうだったんですか……、情報ありがとうございます」


「すみません助かりま~す」


「いいのよ、じゃあ余り騒ぎ立てないようによろしくね」


 そう言って主婦は自分の部屋に入っていった。


「さて、どうしますか? さっきの人が言ったように粘ってみますか?」


「う~ん……」


 誠磨のLINERには、あれから城崎店長からのメッセージが一件届いていた。


『維持でも連れてきなさい、でないと暫くの間は誠磨ちゃんで穴埋めするわよ』


 と、語尾にハートの絵文字を添えられて、何故自分だけなのか疑問ではあったが返答すると長引くかもしれないので戦果無しに戻る道を絶たれてしまっている事実だけ鵜呑みにした。


「……取り敢えず嫌われてでもどうにか事情を聞き出しましょう」


「了解~っす、じゃあ今度は私がやりますね!」


 一流木が今度は誠磨に代わってインターホンを鳴らし、ピンポン連打やドアノック、扉越しに大声で呼び掛けるなりして積極的に取り組んだ。


「もしも~し! 深川君いるんでしょ~!? 一流木と誠磨さんが来たぞ~、開けろ~!!」


「ちょっと一流木さん、あんまり騒がないで……近所迷惑になりますから」


「分かってますけど、これくらいやらないと出るもんも出ないっしょ~?」


「そんな裏家業みたいな言い方しなくても……」


「いいから、ツッコミしてる暇があるなら加勢してください! お~い開けろ~!!」


 一流木がしつこくノックして呼び掛けていると、いきなり扉がゆっくりと顔半分だけ開いた。


「……何?」


「あれ? 深川君……?」


「の、ご兄弟の方でしょうか?」


「違うッスけど」


「あ、その口調は深川君だ! て、声変わってない? つうか何その髪!? てかその格好ーーんんっ!?」


 周囲や先程の隣人には男として認識されているので、深川に変な印象を持たれないようにと誠磨が一流木の口元を慌てて手で覆って食い止めた。


「すみません、いきなり押し掛けてきちゃって……。ここ数日、深川さんが店に来てないから心配で」


 そう言いつつ、顔半分の隙間から見える深川の印象からかけ離れた格好への驚きを一心に堪える。


「……どちら様?」


「……えぇ?」


 深川の一言で、冷静さを装ったつもりでいた誠磨の意識が真っ白に漂白された。



つづく

私は情景描写より会話にキレを見出す方が難しい時があって、行き詰まった時はいつも息抜きにノベルゲー厶やアクションゲームのシナリオ見て参考にしてます。

PSストアでまたノベルゲームのセールやってくれないかな~……個人的に一番好きなジャンルなんですが中々セール対象に入らなくて買うの躊躇っちゃいます。



ではまた次回、来週の金曜日をお楽しみに!

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