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Say!天缶!  作者: 信条
42/53

42缶目「無断欠勤?」

デスストランディングのコレクターズエディション、近日再版したと知ってすぐにAmazon見に行ったら完売てて世やぅ出来ませんでした……。転売屋だけでなくクリエイターファンの勢いであっという間に無くなっちゃいますね、また再版してほしいです

 昼食摂るのを忘れたまま、天辺から少し傾きかけている日光を背中に浴びながら椅子に座ってミユリの寝顔を見つめる。


「(あの爆撃音みたいなのって結局何だったんだ……、ミユリの首にあの女が手で絞めた跡があって、俺が駆けつけた時にはあの女は手に刃物を持っていた)」


 誠磨は屋敷で見た光景、扉を開けて一瞬だけ見えた戻りかけの狂喜に満ちたピルカの横顔が脳裏をチラつかせる。


{(一人で立てず両腕の力も抜けていた、あのミユリの状態からして反撃したとは思えない。となると、あの爆撃による屋敷の揺れであの女が転倒して失敗し、急いで武器を持ちだしたということか?)」


 何もない真っ白な密室でピルカがミユリに股がり、刃物を振りかざしていた状況からして紛れもない明確な殺意があっての行為だと誠磨は察する。


「(体調を整えてきたつもりがミルクティーを飲んで、少ししたら急に意識が飛んだのは偶然か? マッサージするからってミユリと俺を引き離す理由にはならないし、それにあの女にミユリを預けているとスピルさんは言っていた……。姉の性格を知らない筈が無いし、もしや共犯か?)」


 状況を振り返り考え込むほど嫌な想像をしてしまい、マッサージベッドで横になっていた時に向けられたスピルの笑顔が今は恋心のようにときめいていた感情から恐怖に塗り変わる。


「(けど一緒に駆けつけた時や、さっきの謝っていたスピルさんの様子からして共犯には見えなかった。だからと言ってもうミユリを会わせる気は無いが、少なくとも俺はあの二人に会わないとな……まだミユリの情報を聞き出せていないから)」


 誠磨が諦めずに今後のことを考え始めると、ミユリがゆっくりと目を開けて周囲を見回す。


「ここは……?」


「病院だよ、病気や怪我を治してもらうところ」


「あやつは……?」


「あやつ? あぁあのお姉さんなら確か、俺が病院へ電話してる間にスピルさんが警察へ電話したらしくて、今は自宅で事情聴取してるんじゃないか? あぁ事情聴取ってのはーー」


「……殺すッッッ!!」


 ミユリは勢いよく目を見開いてベッドから飛び起き、誠磨が慌てて両腕を掴んで取り押さえる。


「離せ……離せぇえええ!!」


「落ち着け! 今は誰も襲ってこないから! 来ても俺が追い払うから!!」


「んぬぐぁあ”あ”あ”あ”あ”!!!」


「どうされました!?」


 病室の外に漏れたのか、看護師が一人慌てて入ってきた。


「起きた途端、急に暴れ出して……」


「今、先生を呼びますからそのまま抑えていてください!」


 そう言って看護師はベッドに備え付けの呼び出しボタンを押して、ミユリを取り押さえるのに加わる。


「ーー大丈夫ですか!?」


 5分と経たないうちに先程の医師が駆けつけ、3人がかりで暫くミユリの四肢をベッドに押さえつける。


「君、ここは二人で抑えるから鎮静剤の点滴を至急持ってきてくれ!」


「は、はい!」


 指示通り看護師が点滴を取りに病室を出てからは医師と誠磨、二人の成人男性が全力で押さえ込むがミユリの狂暴さは弱まるどころか増す一方で、とても少女の外見から発せられる力ではなく医師も驚きを隠せない。

 そして看護師が急いで戻ってきたのだが、疲れ知らずでミユリが延々と暴れているせいで点滴を射せる訳も無く3人でまた押さえつける羽目になった。

 その後も実際経っているのは20分程だが、押さえる側が永遠とも思えるほどに長く感じて弱まることの無い暴れっぷり続くが、突如電池が切れたかのように勢いが止まってミユリは再び眠りについた。


「はぁ……はぁ……少女とは思えないとても強い力をお持ちですね、大人3人で取り押さえているというのにここまで……貴方も大変でしょう」


「えぇまぁ……、すみませんお忙しい中」


「いえいえ、これも仕事ですからお気になさらず。ではこれからこちらの方に点滴で、精神安定剤を混ぜた水を投与しますので……次に目が覚めた時には大丈夫かと」


 看護師が早急かつ的確にミユリの左腕に点滴を射し、ベッドの乱れを整えて医師と共に一礼して去っていく。


「すみません、ありがとうございましたーーはぁ……、暴れたのは今回が初めてだが、まさかここまで狂暴だったとは……。大人3人、それも大の男2人が左右から取り押さえてギリギリとかヤバすぎるだろ……これ俺ん家で暴れられた時どうすりゃいいんだよ……」


 脱力し落下する勢いで椅子に座り、乳酸を消耗し切ってクタクタな両腕で顔を塞ぎ込むように支えて落ち込む。問題が1つも解決しないまま一方的に増える悩み事や隠し事が身心みこころに重くのしかかり、マッサージで解消されたはずの上半身の筋肉がまた凝り固まる。


ーー次にミユリが目覚めたのは二時間後、精神安定剤入りの水が入った点滴が無くなった頃に再びゆっくりと目を開けて周囲を見渡し同じ質問する。


「ここは……?」


「覚えていないのか? ……ここは病院だよ」


「病院……?」


「……病気や怪我を治すところだよ、ミユリは怪我をして病院に運ばれたんだ」


「怪我……あやつは?」


「今は警察に捕まってるんじゃないか? 行っても会えないぞ (正気を失いすぎて、さっきの記憶すらそのまま抜け落ちているのか)」


「……こーー」


「(まずい!)ーーそ、それより腹減らないか? もう14時過ぎだけど俺らまだ昼ご飯食べてないだろう?」


「腹……減った……」


「そ、そうだろう? 俺もずっとここ座って腹減ってんだ。もう退院しても良いみたいだから、看護師さん呼んで点滴を外してもらうから待っててくれ、な?」


 猛獣をあやすような口ぶりで何とか暴走を食い止め、急いで病室を出て看護師を呼びに行こうとしたが先程の看護師が一人病室へ入ってきた。


「そろそろ点滴が終わる頃なので参りましたーーっと、お目覚めになられたのですね」


「はい、ついさっきです」


「具合はいかがですか?」


「……」


「今は大丈夫そうです、取り敢えず点滴外していただいてからすぐご飯食べさせに行こうかと」


「かしこまりました、では外しますのでお待ちくださいーーミユリちゃん大丈夫だからね~、痛くないからじっとしててね~」


 そうあやすような口調で素早く丁寧に外して、注射針の跡を消毒濡らしたコットンで拭いて絆創膏を貼り処置を終えた。


「はい、これでおしまい! お風呂入る時も外さないようにね~、明日になるまではちゃんと付けててね」


「……うむ」


「ありがとうございました」


「いえいえ、ではお大事に」


 看護師は一礼して点滴を持って退室し、誠磨達も受け付けを済ませて病院を出た。


「(救急車で運ばれるのに1万円くらい取られるから、スピルさんに全額支払ってもらって助かったと思うべきか……複雑なところだな)」


「腹減った~、何か食わせろ」


「気品の欠片も無い言い草だな、もっと見た目に添った可愛げのある言い方は出来んのか?」


「うるさい! 暑いし腹減ったし今にも倒れそうなんじゃ!!」


「さっきまで寝てただろ……、まぁいいやこの辺にどっか旨い店があるかなっと……」


 一先ず徒歩ですぐ行ける安くて食べごたえある店をスマホで検索し、吉原屋よしはらやという牛丼チェーン店として名高い店舗がヒットしたのでそこへ足を運んで腹を満たす。


「根負けで仕方なく買ったけど、特盛り2つどうやったらその腹ん中に入んだよ……周りの客みんなこっち見てて恥ずかしかったんだぞ!?」


「人の食うところを覗き見する、はしたない連中が悪いんじゃ。ほんとはもう一杯食うつもりじゃったが」


「何杯食っても満たされないんだろ? 俺の財布にダメージを負うだけだから、頼むからもう少し抑えてくれ……」


「あの女と違って懐の狭い奴じゃ」


「“あの女”って言うな、粕・寺・さん! いい加減覚えてくれよ、もう……」


 一向に名前を覚えず失礼な態度にブレがないミユリに呆れながら近くのバス停を探して、そこからバスに乗って帰宅した。

 その後は自宅から出ること無く空き時間を二人一緒にゲームで過ごし、そのまま夜を迎えて深夜1時に就寝した。だがその数分後、誠磨のスマホにLINERの着信のバイブレーションが鳴り誠磨だけ目が覚める。


「なんだこんな時間に……、スピルさん?」


 いい具合に寝かけていた重い瞼を開けてスリープモードのスマホに電源を入れ、画面を確認したタイミングでバイブレーションが止まった。そしてそれはスピルからのメッセージではなく、今ちょうど居酒屋“千夜桜ちよざくら”のシフトに入っているはずの雛月からの不在着信であった。

 誠磨は慌てて雛月に電話を掛け直す。


『あ、もしもしごめんね……寝てた?』


「いえいえ大丈夫です……どうされました?」


 寝かけていたのを隠すために気を遣おうとしたが、声色を隠すことが出来ず結局察せられてしまう。


『ごめんね……休みの日のこんな時間に……、ちょっと聞きたいことがあって』


「と言いますと?」


『最近その……深川君から何か連絡来てない?』


「いえ、何も……というか今日シフト入ってませんでした?」


 誠磨がそう言うと、返答に間が空いて電話の向こうで口ごもる様子が伺える。


『その……来てないの』


「え?」


『私と店長が電話しても出ないし、メッセージに既読の表示もされないし……』


「具合悪いんじゃないですか?」


『……多分、違うの』


「ん?」


『深川君、土日いなかったでしょ? いつも出勤の日は関係ないことでも何かしらメッセージを送ってくれるんだけど……、それが無かったから代わりの子も用意出来なくてそのまま乗り切ったのよ』


「そうだったんですか…… (だからあんなにしんどかったのか……、というか深川さん意外と積極的に関わっていたんだな。受動的な俺と違って)」


『だけど二日とも……今日だって連絡来てないの』


 電話越しの声が次第に曇っていく。


「多分、熱中症とかで寝込んでいるんじゃないですか?」


『寝込んでても一言くらい連絡するでしょ!?』


「あ、いや……す、すみません……」


『ごめん……急に怒っちゃって』


「いえいえ」


『本当にすっごく不安で……、だってあの子ここ1年間で無断欠席どころか一度も……遅刻すらしなかった真面目な子だから』



ーーー

ーー


 数多のモニターのバックライトのみが照らす薄暗い部屋で、機器の稼働音に囲まれた中心のデスクに白衣の男が座っている。可動式の椅子で横に向いて足元を揺らし、その先で土下座する黒いライダースーツの藍色ショートヘアな女性の頭に靴底を押し当てる。


「ねぇ君さぁ……何でうちが言った指示通りにできないのかなぁ?」


「申し訳ござ……いだっ!」


「いだっ……じゃないよもう~、うちはさぁ……あの邪魔な二人を速やかに暗殺しろと言った筈だよねぇ?」


「はい……」


「で、一人も殺せず人ん家の一部を爆破しただけで帰ってきたと」


「申し訳ございません……」


「いやさぁ、爆発させるのは良いよ? 暗殺ってのは無音で忍び寄って殺すだけの手法じゃないからね、君がやったように爆発とか物音で別方向へ気を引かせたりして隙を作ってから仕留めるのも方法の1つであるから」


「はい……」


「けどさぁ、君ただの器物損壊って罪を背負って戻ってきただけじゃん。不審者の愉快犯でしかないよ?」


「申し訳ーー」


「あぁもういいよ、せっかく壁抜け出来る君にぴったりな暗殺任務を言い渡したのにさぁ……。もう使えそうに無いから捨てるわ君」


 頭から靴底を退けられ、デスクに向かわれた男の横顔を見上げて恐怖に涙を浮かべる。


「ぃや……そんな……お願いします! 何でもしますから!! お願いですもう一度チャンスを!!」


 ライダースーツの女性は額を床に打ち付け、擦り付けて血を滲ませながら吠えるように赦しを乞う。


「ギャンブルで背負った借金まみれみたいだな~、見てて心が痛いよこっちも。でも一番適任な仕事すら出来ない君をどうやって使えばいいの?」


「お願いします……どうか……」


「あぁあぁ血なんて出しちゃって……床に染みたらどうしてくれんのさ、取り敢えずうちも鬼じゃないから。2度の失敗も我慢してあげるよ。だけどーー」


 ライダースーツの女性は男の二言目に来る言葉を咄嗟に推測し、土下座の姿勢のまま手をクロスするように両腕を抱いて恐怖に震える。


「へぇ~、君はそれを想像したんだ。それでも良いけど~、それじゃ君がドールにしか使えないままだから違うことだよーーほらおいで」


 男が暗闇に向けて手招きすると、黒髪ロングでスレンダーな黒ジャージの人影がゆっくりと歩いてきた。


「これからはこの女の子が君の上司で、二人に指令を送るからちゃんと従って動くんだよ?ーーえっと……名前なんて言うんだっけ?」


「……深川……すばるッス」




つづく

プロローグを終えて本編突入したところで一度、「現状の主要人物一覧」を近いうちに上げてみようと思います。

週一でどうしても間が空くのと、他の作品に比べて名前が覚えにくく特徴と一致させにくいと思いますので;


登場人物の容姿についてはそれぞれ鮮明な描写は無く、見分けがつくように少し特徴を描いているだけで大半は読者さんのイメージにお任せしています。その方がより楽しめると思ったので。

なので来週一覧に纏めるものも容姿については描写している以上のものは書きません、あくまでこれまでの情報を分かりやすくする整理するために纏めます。


では来週の金曜日に次話か人物まとめを上げますので、お楽しみに!

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