39缶目「カラクリ柵?」
最近、執筆に使っているキーボードの「K」と「O」の文字が完全に消えてしまっていて、「L」に至っては横棒が綺麗に消えて近所の「I」と同化しています。
そろそろ白いペンで書き足すべきか……
人影の侵入から二日目。昨晩は結局人影の侵入を見張ることが出来ずうっかり寝てしまった為、いつものようにミユリに11時頃叩き起こされてから部屋の状態を確認する。
「(特に何か盗まれたり動かされた形跡は無さそうだな……、このまま数日様子を見るにしてもまずはミユリの安全を確保しないとな。だが誰に預ける……? 粕寺さんは今仕事行ってるし、繋益さんも当日いきなり預かるよう頼まれたら困るだろうし……)」
「おい、はよ飯作らんか」
「ミユリ、今日何時に起きた?」
「数十分前じゃが……て、流すでないわ!」
「誰も来てない?」
「う、うむ……」
「そうか、じゃあ今日は仮に俺が帰ってくるまで起きてても警戒しなくていいから、鍵開けて入ってくるの俺しか居ないから気にしなくて良いぞ (部屋入って真っ先に俺の薬を手に取ったってことはミユリ狙いじゃないってことか? 薬は元の位置でそのままの状態だし、髪の毛も含めてやっぱ幻か?)」
呪いが舞い込むのではないかと保管せず、そのまま捨ててしまった藍色の髪の毛について後悔する。だが寝起きの頭に食事を作れと罵声を蓄積され、しつこく急かしてくるので7日目の雑魚寝であちこち痛みが来ている身体をバネのように起こして食事を作り始めた。
その後は慣れてきた食事の作り置きと二人分の家事をこなして、空き時間を使って記憶の復元に纏わる情報や缶詰の出所をネットで探る。
「はぁ~……、こんだけ色んなワードで一週間探し続けても情報が無いっておかしいだろ。どうなってんだよこの缶詰、俺どうやって手に入れたんだよ!?」
苦悩する誠磨の横で何食わぬ顔をして胡座をかいて、プニィの巨大クッションに背中を預けながらだらだらとゲームをする自堕落な天使に呆れ果てる。
「はぁ~……ダメだ、こんなんじゃいつまで経っても進展しない。流石にこれ以上ネットを漁っても意味無いだろうし、頼んでいた置久さんもお手上げだし……どうすりゃいいんだ」
弱々しく力が抜けていくような声で呟いて床に寝転び、両手を後頭部で組んで軽く背筋を伸ばす。
そのまま暫く横になって半分寝かけたところ、テーブルに置いてあったスマホにLINER通知のバイブが短く鳴った。上半身を少し上げてスマホを手に取り、横になったまま通知を確認したらスピルからのメッセージだった。
『先日は水族館へお連れいただきありがとうございました、甘巻さんの目的にお力添え出来ず申し訳ございません……。何か私に出来ることがありましたら、遠慮なくお申し付けください』
「(いや、お申し付けくださいって……友達に送る文章じゃないだろこれ)」
『いえいえ、こちらこそご同行いただきありがとうございました。その件につきましては完全にこっちの不手際なので気にしないでください』
『あとちょっと文章が固いといいますか……友達なのでもっとラフな感じで大丈夫ですよ』
そう後から付け足すも、前半の文面が完全に引っ張られている文章を送りつけてしまっているので人のことは言えない。
『すみません……まだ少し緊張してしまって』
『軽い感じにしていただいた方が、こっちも話しやすいので良ければそうしていただけると助かります』
『でしたら、甘巻さんからは敬語無しでお願いできますか? そしたら自然とその方向へ馴染めるかもしれません』
『善処します』
『ところで、早速ですが1つお願いをしてもいいですか?』
『はい、もちろんです!』
『今から送る写真について、分かることがあれば教えてほしいです』
『分かりました』
誠磨は台所の上の棚からミユリが入っていた例の空き缶を取り出し、テーブルの上に持ってきてスマホで撮影して送りつける。
『これ、部屋にあった缶詰なんですけど、いつ買ったか覚えてなくて気になってずっと調べているんですよ』
だが誠磨が写真を送った後にメッセージを添えたところで先程までのテンポ良くやり取りしていた流れが途切れ、数分ほど返事が来なかったのでその間ミユリのゲーム画面を横目に眺めていた。
すると、唐突に返信のバイブが鳴って確認したところメッセージで一言だけ送られていた。
『それ、いつ開けたものですか?』
『丁度先週辺りですね』
『中には何が入ってました?』
『えっと……透明でネバネバとした、オレンジみたいな匂いがする液体が入ってました』
『他には何か入ってました?』
『いや……予想以上にスゴい勢いで飛び出して来たので、ビックリした拍子に頭をぶつけて気絶してしまって……。床を見た限りではその液体だけ散乱してました』
『そうですか……、ではその缶詰を一旦お貸しいただけませんか? こちらで色々と調べさせていただきます』
『実物でないとダメでしょうか?』
『はい、心当たりがあるかもしれませんので実際に手に取って確かめさせていただきたいです』
『分かりました、明日俺休みなんですがスピルさんは空いてますか?』
『はい、明日は一日空いてますので大丈夫ですよ』
『では明日そちらへ伺いますので、住所を教えていただけませんか? あとミユリと二人で行こうと思います』
『分かりました、少し遠いかもしれませんがよろしくお願いします』
メッセージの後すぐにスピルの住所が送られ、確認すると確かにバスを使っていく必要があるくらいには距離があった。
『ミユリ、明日スピルさん家に行くことになったから一緒に行こうか』
『……』
『ミユリ?』
『誰じゃそやつは』
『この間一緒にイルカショー観た子だよ、ミユリの記憶について調べてくれるみたいだからその場で話を聞けるかもしれないし行こうぜ (にしても相変わらず名前覚えない奴だな……この間渡した表を見てないのか?)』
『それなら行ってもよい、手短にな』
『はいはい…… (自分のことなのにその態度は無いだろ……はぁ~ムカつく……)』
内に沸き立つマグマが噴火しないように、疲れ気味の身体を癒す為床に寝転がってまた背筋を伸ばす。そして片耳とスマホにイヤホンを差して動画の配信サイトを開き、立ち絵イラストが動きながら喋る配信者のアーカイブを眺めて出勤までの数時間を休憩に割り当てる。
その後の仕事場では昨日と違って睡眠と休憩を取って何とか体調を持ち直したので、店内の賑やかな急がしさ以外に苦しむこと無くシフトをこなした。
「ーーさて、そろそろ行くか」
慣れない雑魚寝による身体中の痛みを解し、十分に体調を整えた誠磨はミユリの空き缶を忘れずにビニール袋に入れて鞄に仕舞い、ミユリと二人でスピルの自宅に向けてまずはバス停へと歩き出した。
「あぢぃ……」
「あぁ……今日はいつもよりちょっと暑いな~」
誠磨が少し遠めに出掛ける時に限ってまた36℃という気温の高さに苛まれる。
「もう帰る」
「いや早ぇよ! 頼むからもう少し頑張ってくれ、今回はもしかしたらミユリのことで何か分かるかもしれないからさ」
「むぅ……」
暑さに負けてUターンしようとするミユリを説得させながら歩くこと約10分、屋根とベンチ付きのバス停に到着して数分ほどそこで腰を下ろしてバスを待った。
「喉が~」
「ほれ水、ゆっくり飲めよ?」
「ングングング……ゲホッ! ゲホッ!」
「だからゆっくり飲めって言っただろ、人の話聞けって」
むせるミユリの背中を軽く叩いて呼吸を整える。
「……フンッ」
「そこは、ありがとうって言うんだぞ」
「……」
「(ほんと記憶無くしてるとは思えないほど一貫して嫌みったらしいというか、ひねくれてんだよなぁ……。粕寺さんは食べ物のこと以外では上手くやってたみたいだけど、どう上手くやり取りしていたのか……)」
バスが到着する頃にLINERで粕寺にメッセージで質問を投げ掛けてみたが、乗車した後に返ってきた言葉は“それはまさしく、愛だよ!”と尤もらしいが参考にはならない一言だけだった。
「(もっと具体的に言ってもらいたかったけど……自分で見つけるよう敢えて濁したのかな)」
20分程車内で揺られながら、窓際にいるミユリが景色に映る店舗について質問し誠磨が分かる範囲で簡潔に答えている内に目的のバス停に着いた。その後降車してまた数分ほど地図アプリを見ながら歩いていってようやくピンの刺さった場所へ到着し、目の前のそこそこ大きな屋敷を前に眉唾を飲み込む。
「でけぇ……これがスピルさんの家か?」
「お前のより立派じゃのう」
「うるさいな、マンションと屋敷で比較するんじゃない! それより本当にここで合っているかどうか確認しないと」
誠磨は念の為インターホンを押す前にスピルへ電話を掛けようとしたが、屋敷前を囲っている柵に設置されたインターホンから先に声を掛けられた。
『こんにちは甘巻さん、スピルちゃん。どうぞ中へお入りください』
「あ……はい」
スマホを閉まっていると、近くに人が居らず機械音もせず一人でに柵が横へスライドしたことに誠磨は若干の恐怖を覚え、ミユリは仕掛けが気になるのか暑さにやられて死にかけの眼に光が灯る。
「(確かにここなら非現実的な現れ方をしたミユリについて何か分かるかもしれない……)ーー行こうかミユリ」
「これどう動いたんじゃ? 妾もう一回見たいぞ!」
「後で頼もうな、いいから行こう」
「えぇ~今すぐ見たいぞ! もう一回!」
「俺に言われても出来ねぇって、ほら行くぞ」
誠磨はミユリの手を引いて玄関までの通路へ足を踏み入れる。
つづく
今回はキャラにおける台詞の一貫性が薄まっている感じがして、気になった方がいらっしゃるかと思います。申し訳ございません……後日推敲し修正します
それと、この一本だけでは進みが遅いと思いますので今週中にまた次話を投稿します。




