20缶目「Lili Princess of Night:前編?」
5週連続2話投稿、2週目です
今回は前後編で分かれていて、ゲームプレイの視点なので読むのが少し大変かもしれません。
今までの書き方と違うので、ご意見聞かせていただけると嬉しいです
『白銀を基調とし、膨大な富と魔力に栄えた美しき街《ミーオン(Meon)》。街中に魔力が充満しているせいで、街灯の灯りや噴水の水が緑を帯びている。ここの住民は飢えることを知らない』
暗転から画面が切り替わり、眩しいまでの真っ白で大きな街が全面に映し出された。そこには裕福な衣類を纏った住民が大勢行き交いしていて、中世の大都会を思わせる。そうした光景をバックに女性の語り声が流れる。
「……」
ミユリは食い入るようにその光景を眺め、その後ろで繋益と誠磨はお茶を片手にモニターとミユリを交互に見守る。
『その住民達が大通りにて商談や井戸端会議をしているところ、突如一斉にその大通りの中央へと目をやった』
カメラが中央へゆっくりと地を這うようにスクロールしてゆき、茶色の使い古されたブーツが見えたと同時に一気に視点が上を向いた。
『「さて、騎士を募集しているあの城はどっちかな~っと?」』
すると、この街に到底見合わない風貌の黒く破れた衣類を纏い、一本の刀を腰に据えた一人の黒い少女が張り紙を片手に辺りを見回す。その様子を住民達は顔を歪めたり、冷たい視線を浴びせている。
ここで左スティックのキャラクター移動と右スティックのカメラ移動が可能となり、ミユリは誠磨達に教えてもらいながら黒い少女を操作して住民の1人に□ボタンで声を掛けた。
『「すみません、この張り紙にある城を知りませんか?」』
『「え、えぇ? それならこの通りをずっと真っ直ぐだが……」』
『「ありがとうございます、では失礼します!」』
黒い少女は住民の指す方角を向き、そこにマーカーが表示された。それを辿りながら走っていくと、カメラの右端に巨大な王城が映り始めた。
街と同化していて、巨大で美しい街の象徴とされる住民誰もが知り得る建造物だと、道中の住民の会話から情報を得た。黒い少女をそこの門番へと近寄らせ、□ボタンで話しかけると黒い少女は張り紙を見せる。だが有無を言わさず容姿に嫌みを吐かれ突き返され会話を打ち切られてしまった。
「なんじゃ彼奴ら! 節操の無い奴らめ……」
「(それをアンタが言うかいな……)」
仕方なく退散し、門番の視界に入らない位置に移動すると再びマーカーが表示される。そのマーカーは城壁の上を指し示した。そこから侵入せよとのことである。黒い少女は持ち前の腕力と体幹で番人に見つからぬよう城壁をよじ登って行く。その裏ではミユリが二人に教えてもらいつつ×ボタンと左スティックで手元を確認しながら探り探りによじ登ってゆき、最上階の窓に到着しムービーが始まる。
黒い少女が顔を出すと、そこに広大な空間でたった一人真っ白のドレスを見に纏う、白い髪の少女が別の窓の前に立っていた。黒い少女はその別の窓へと移動し、真っ白な少女の眺める窓に張り付いて張り紙を提示する。
『「この専属騎士募集の張り紙ってここであってますか? 試験受けたいんですけど~」』
真っ白な少女は目を丸くして、若干怯えた様子だが急いで窓を開けて黒い少女を中へと引っ張った。
『「な、何をなさっいておられるのですか!! ここは地上200mの最上階なのですよ!? 落ちたらどうすーーんっ!?」』
黒い少女は真っ白な少女の口元に人差し指を据えて、自分の口にももう片方の指を添える。
『「しーっ、色々ツッコみたいのはお互い様ってことで、まずは静かにこれについて答えてくれない? アタシこの試験を受けにきたんですけど、日付も何も書いてなくて……」』
黒い少女は添えてる指を離して再び張り紙を前に出す。
『「……お父様が私の……婿候補を探す為にばら蒔いたものですわ……」』
『「え……お婿さん!? 参ったなぁ~……アタシ女だからお婿さんにはなれないし、けどこんな遙々国越えてやってきて今更帰れないし……どうしよう」』
黒い少女が悩み始めると、巨大な入り口の扉が蹴破られ国王と思わしき者が騎士を数名連れて現れた。
『「盗賊だ! 引っ捕らえろ!! くれぐれも我が娘に一切怪我を負わすんじゃないぞ!?」』
『「ハッ!」』
騎士は黒い少女の前に一列になって道を塞ぎ、大盾と槍を構える。黒い少女は真っ白な少女の前に立ち、張り紙を前に突き出す。
『「ごめんなさい、ここに王様がいると思って来たんですけど、いたのは綺麗なお姫様だったみたいで……この専属騎士に応募したくて来ました」』
『「なに? 貴様どこから来た? この街の者ではないようだが、私は娘の婿として募集をかけていたんだが……見たところお主は女ではないか」』
『「はい、女ですけど、この張り紙には婿候補なんて書いてませんよ?」』
『「騎士たる者、男児して屈強で強靭たる戦士でなければならん。女人ではそれが勤まらんだろう」』
『「決めつけは良くないですよ王様、女だって立派な戦士になれます。何でしたらこの騎士の方々を全員倒してさしあげましょうか? それを証拠にお姫様の専属とさせていただきたいのですが」』
『「何を勝手な……」』
『「お父様! このお方はあの窓からいらして、私がここに引き入れたのです。その……婿としては一旦置いておくとして、お試しになられてはいかがでしょうか? もし倒せたなら私は候補に入れるのも有りだと思います」』
『「うぅむ……良かろう、この精鋭達を纏めて倒せた時には考えてやってもよい。だがその前に娘を返してもらおうか」』
『「それでしたら王様、せっかくの専属騎士の試験ですしお姫様をこのままこちらに置いていただくのが宜しいのでは?」』
『「どこの骨かも分からん輩を信用できるか!!」』
『「お父様、……このままお願いします」』
『「んなっ……!?」』
『「お姫様、先の無礼をお詫びすると同時に、アタシの3歩後ろまで下がっていただくようお願いしてもよろしいですか?」』
『「えっ……」』
『「ピッタリくっついていただいても大丈夫ですが、念のためです」』
『「は、はい……」』
真っ白い少女は指示通りに後ろへ下がり、両手を胸元で組んでじっとする。
『「ありがとうございます、にしてもお姫様って、良い匂いがするのですね。絵本で見た通りだ」』
『「えっ……」』
『「この……、貴様ら! そやつを徹底的に叩き潰して、地下牢へブチ込めー!!」』
そこでムービーが終わり、チュートリアルの戦闘が開始された。逐一テロップが表示されるが、攻撃ボタンのR1や強攻撃のR2などが表示されてミユリは混乱する。しかしその通りにボタンを押すまではキャラクターが自動で回避してくれるので、安心して手元を見つつボタンを押すことが出来る。
そして操作とは裏腹に黒い少女が巧みに一本の刀と四肢を操り、大盾の構えをキックで崩して鞘のついたまま先端を騎士の甲冑の間を通して突いたり、甲冑の頭に力一杯横から叩き込んで気絶させたりとテクニカルな戦闘により騎士に刃を向けること無く勝利した。
「おぉ……!」
簡単操作で華麗に一層する様は、ゲーム初心者としては爽快感に溢れて恍惚とせざるをえない。その楽しそうな光景を安心した様子で誠磨達は見守る。
「導入は凄く良いんだよな、何回やっても面白い」
「そうですね~、俺も後でじっくりやりますよ」
そうして戦闘を終えた後、その場で立っている国王と真っ白な少女は黒い少女を見て圧巻する。黒い少女は刀を腰布に仕舞い、深く一礼する。
『「ありがとうございました」』
『「……たった一人の少女を相手に、それも抜き身無しの刀一本で……」』
『「……お父様」』
『「……ぐぬぬ、誰か! 誰かおらぬか!?」』
国王の大声を聞き付け、数人のメイドが慌てて駆け込む。
『「はい、ただいま!!」』
『「この者に服を持って参れ! その不衛生な格好のままうろつかれては敵わん!!」』
『「かっ、かしこまりました!!」』
『「すみません、洗っているんですけど長旅でどうしても服が縒れてしまって……」』
『「フンッ、くれぐれも我が娘に手を出すんじゃないぞ? すぐにでも婿候補の騎士を集めて、お前さんを叩き潰し地下牢へ放り込んでやるからな」』
『「まぁ婿にはなれませんもんね私……不法侵入者ですしーー」』
その時、空いた窓の方から突如赤黒いエネルギー体が侵入した。
『「な、何じゃ!?」』
黒い少女が抜刀を構えながらそのエネルギー体へ踏み込むと、その右腕を貫通して真っ白な少女に直撃した。
『「「あ、あぁあ”あぁあ”あっ……!!」」』
二人はその場で転げるようにして悶え苦しむ。そして、その日を境に真っ白な少女は清楚な容姿とは真逆に暴飲暴食の日々に明け暮れるのであった。
後編へつづく
ミユリ達の視点とゲーム内の視点で交互にしつつも、ごっちゃにならないよう意識して書きましたが難しいですね……。
では次回、後編は同時に上がってますので宜しければご覧下さい。




