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Say!天缶!  作者: 信条
10/53

10缶目「二人目の難癖?」

新年、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します


今回から新しい子が追加されます

 暫くしてミユリが泣き止み、しゃっくりしながら誠磨の胸の中でじっと留まる。


「……ひっく……いっぐ……」


「少しは落ち着いたか? 何か食べられそうか?」


 ミユリは無言で首を横に振る。


「そっか、腹減ったら言えよ? 時間帯によるけど飯はちゃんと作るからさ」


 ミユリは小さく頷いた。


「うっ……うぅ……」


「すみません粕寺さん、ミユリの手が出て眼鏡飛んじゃってーーって泣くほど痛かったのですか!? すみません!!」


「違うわよっ……! もらい泣きよ、もらい泣き!」


「あ、あぁ……ははは……(良かった、まぁ俺ん時みたいな威力で当たったら、泣くだけじゃ済まないもんな……俺死にかけていたし)」


 それから数十秒程経過し、それぞれ落ち着いたムードへと切り替わっていった。しかし、粕寺と誠磨はミユリが食べないと主張する中で残りの昼食を摂る気にはなれなかった。


「さて、んじゃ残った分……というか殆ど減ってないですが、分けてタッパーに入れときましょう。俺、部屋から持ってきますよ」


「いいわ、うちの使いましょ。その方が手間掛からないでしょ?」


「すみません……後日洗ってお返しします」


「いつでもいいわよ、それより甘巻君はミユリちゃん抱っこしてるから、私が台所で移してくるわね」


「あ、す、すみません何から何まで……」


「いちいち気負わなくていいわよ、んじゃ移してくるわね。ごめんね、せっかく作ってもらったのに」


「いえいえ、またお腹すいた時にでも召し上がってください」


「はーい、ありがと」


 3等分で2:1の割合で2つのタッパーに詰めて冷蔵庫に保存し、コップ3つに麦茶を注いで戻ってきた。


「さて、じゃあもう少ししたらミユリちゃんの服を買いに行きましょ。大丈夫、私もしっかり出すから安心して」


「すみません……ありがとうございます」


 ミユリはうつ向いたまま暫く誠磨にもたれた状態でじっとしている。声を発することなく、自分や周りのことについて静かにゆっくりと考え込んでいる様子だ。


「(さっきまで張り詰めていたこともあって、やたらツンツンしていたけど本来……というか今のこの子の素はこのくらい素直なんだろうな、きっと)」


 誠磨が頭を撫でようと、自身を後ろで支えていた右手をミユリの頭上付近に持っていく。すると、ミユリは小さくハッと驚いた吐息が肋骨辺りに降りかかるのを感じ、その直後に右腕は強く弾かれて思いきり突き飛ばされた。


「いってて……」


「……さ、触るな馬鹿者ッ!! このロリコンが!!」


「えぇ……」


「甘巻君大丈夫!?ーーちょっとミユリちゃん、ダメよ人のこと叩いちゃ」


 粕寺がミユリの傍に近寄って、同じ目線までしゃがんで両手を優しく握る。


「……彼奴が、何か触ろうとしてきたのが悪いんじゃ!」


「いや俺はただ、ミユリが落ち着けるよう頭を撫でようとしただけだ。あと俺はロリコンじゃない! (にしても、何か昨日の昼過ぎくらいに受けたパンチよりは全然耐えられるな……。今のは多分、育ち盛りの少年のグーパンより少し強いくらいで、死に直面するくらいの威力は無かった。一応は手加減してくれているのか?)」


「まぁいきなり頭触られるのは、女の子としてはちょっと怖いところあるわよね~」


「あぁまぁ……確かにそうかもしれませんね (さっきまでベッタリとくっついてきたくせに、頭はダメなのかよ……)」


「ねぇミユリちゃん、お姉さんは頭撫で撫でしても大丈夫?」


「……うむ」


「(まぁ、そういうスキンシップは同姓であり、良いお姉さんでもある粕寺さんに任せるとしよう。でないとまた殴られるだろうしな)」


 そうして誠磨とミユリは、外出の支度をするために一旦誠磨の部屋に帰ることにした。


「はい、ミユリちゃん、これさっきのお昼ね~。大事に持って帰ってね」


 粕寺はミユリに二人分の冷しゃぶが入ったタッパーと、特製トマトドレッシングが入ったタッパーを渡された。


「うむ」


「では、こっちで色々準備してからまた来ますね」


「はーい、んじゃ後でね」


 誠磨はミユリの手元を確認しつつ、ゆっくりとドアを閉めた。


「おっし、んじゃ一旦戻ろうか」


「うむ」


 二人は誠磨の部屋に戻って冷蔵庫にタッパー2つを閉まって、誠磨が床の隅に立て掛けて置いてある手提げ鞄に財布、冷やしたスポーツドリンク、そして小さい水筒に水を汲み入れて準備を整える。その最中、昨晩からやり損ねていた歯磨きについてようやく思い出した。


「(やっべ、俺昨日の夜から歯磨きしてねぇじゃん……!? 粕寺さん嫌な顔一つしてなかったけど、多分臭におってただろうなぁ~最悪だ……。ーーとりあえず、俺は今からしっかり磨くとして……ミユリの分はどうしたらいいんだ? スペア用意してないし、あの口を濯ぐモンデミンってやつも無いし……)」


 鞄の前でそわそわしていると、少し離れた所に座っているミユリから鋭い視線を浴びせられる。


「おい、何を浮かれておるのじゃ変態」


「いやいや、浮かれてねぇ! お前の歯磨きについてどうするか考えてたんだ!」


「あぁ、そういえばそうじゃな」


「(おいおい、女子と主張する割には衛生面の意識が少し低くないか……? まぁ俺も人のこと言えた義理じゃないが……)」


「無いのならこのまま行くしかあるまい」


「いや待て! さっきの粕寺さんってお姉さんは気を遣ってくれてたけど、外では多分臭いって言われるぞ?」


「その時は、大声でお前のせいだと主張してやるから安心せい」


「いや盾代わりにされてる奴が安心出来るかァーッ!!ーーコホンッ、とりあえず俺が近所のコンビニへ歯ブラシ買ってくるから、部屋で大人しく待っててくれ。いいな?」


「フンッ、あまり待たせるでないぞ」


「分かってるっつの、んじゃな!」


 誠磨は急いで財布とスマホだけ持って部屋を出ていった。


「……」


 ミユリはその場で目線だけで見送った後、不貞腐れた様子でプニィのクッションを抱いて寝転んだ。


「(ーーさて、まぁ片道5分だしささっと買って帰るだけだから大丈夫だろ。取り敢えず粕寺さんに報告してっと……」


『今コンビニへミユリの分の歯ブラシを買いに行ってますので、集合まで少しだけ時間がかかります。あとさっきはすみません、昨晩から色々あって俺も歯磨き出来てなくて……』


『あぁ大丈夫よ、全然匂いしてなかったし。キツい臭いがするもの食べてないんでしょ?』


『えぇ、まぁそうですが……』


『事情は分かってるんだし、いちいちそんなことで嫌な気にならないわよ。それより、早くミユリちゃんの分買ってきてあげて。あと飛び出していった時には私がちゃんとキャッチしておくから安心して』


『ありがとうございます』


 そうしてLINERのやり取りを切り上げ、コンビニに丁度着いたのでスマホをポケットに仕舞って入店した。


「いらっしゃいませ~」


 女性の若い店員の元気な挨拶がレジから聞こえていた。誠磨は入り口から左に向かい、店の内側に陳列された雑貨コーナーの前に立つ。


「(なるべく小さいやつがいいんだが……子供用のは無さそうか。まぁ幼児ではないから大丈夫だよな、色はまぁテキトーでいいや、後でちゃんと自分用のを選んでもらえば良いんだしな)」


 吊るされている黄色に透き通った持ち手の歯ブラシと無地のハンドタオルを手に持ち、そこから更に左奥のショーケースへと向かって、ジュースが置いてある場所の扉を開けようと手を伸ばした。


「(まぁ態度はあんなだけど、せっかくだし留守番してるご褒美でも買ってやるかーー)」


 すると右の死角から白く綺麗な左手が取っ手の前で接触した。


「オアッ!?」


「ヒャァッ!?」


 振り向くとそこには、明るい黄色で垂れ下がってる方のピッグテールに、赤色のリボンがグルグルとネジのように巻かれた、まるで“剥きリンゴ”のような特徴をした髪型の小柄な色白少女が身構えていた。


「な、何すんのよ……!」


「す、すみません……先どうぞ」


「フンッ、全く……気をつけなさいよ!」


 少女は不機嫌な様子で誠磨を睨み、直ぐに目を反らしてショーケースの扉を開ける。そしてその中から黄緑色のラベルが貼られた円柱のボトルを2本取り出して足早に奥へと歩いていった。


「(……綺麗な子だったけど、身近であいつ以外に似たような性格の子に合うとはな……最近女性運でも悪いのか俺は?)」


 誠磨は小さくため息をつきながら、先ほどの少女が開けた所と同じ扉を開ける。そこから“マスカット・オレ・ソーダ”と書かれた黄緑色の円柱ボトルを2本取り出して扉を閉める。


「(まぁいいや、それより留守番してもらってるミユリにご褒美を買ってあげなきゃな)」


 誠磨はそこから奥に回ってレジへ向かっていくのだが、先ほどの少女がまだいるかどうかを警戒しながらゆっくりと歩いていく。すると、少女がレジに並んでいたのを見かけたので弁当コーナーにて数十秒の間待機した。


「ありがとう」


「ありがとうございました~、またお越しくださいませ~!」


「(あの子、ツンツンしてるかと思いきや店員さんにお礼言うんだな)」


 誠磨は少女が退店した後にレジへ並んで会計を済ませ、足早に自宅へと帰宅する。


「ただいま~、ってかこの家でただいま言うの何気に初めてだな」


「遅いぞ怠け者」


「そこは“おかえり”って言ってくれよ……、あと怠け者は人の歯ブラシをいちいち買いに行かない」


「うるさい」


「……まぁいいや、はいこれ。待ってたご褒美な」


 誠磨は袋からマスカット・オレ・ソーダを一本取り出し、ミユリにそっと手渡す。


「何じゃこれは?」


「マスカット・オレ・ソーダだ、旨いぞ。炭酸キツめだから少しずつ飲むんだぞ?」


「ほう、気が利くではないか」


「開けられるか?」


「馬鹿にするでないわ、このくらい……ふんぬぬぬ……!!」


 ミユリは蓋を持って縦に真っ直ぐ肘を伸ばして力を入れる。


「待て待て! こう横に捻るんだ」


 誠磨は自分の分のマスカット・オレ・ソーダを取り出して、ミユリに見せるようにして開封した。


「ふ、フンッ! 今のは軽い余興じゃ!」


「ジュース開けるのに余興は要らないと思うぞ」


「うるさい! 良いから黙って見ておれ!」


 ミユリは誠磨と同じ持ち方に変えて、思いっきり力を入れた。すると、何故か蓋の根本からポッキリ折れて中身が溢れ出した。


「おいおいおいおいおい! 何故そうなるんだ!!?」


「知らぬわ! はよどうにかせい!!」


 誠磨は袋からハンドタオルを取り出し、開封して床とミユリの手元からジュースを拭き取る。


「丁度良く買ってたけど、これ想定して買ったわけじゃないんだよなぁ……ハハハ」


「……黙れ……」


「ごめんごめん、今コップに入れてくるから待ってな (洗面所で俺の使ってるやつが嫌だと言われた時用だったんだが、まぁ開封して渡さなかった俺が悪いか)」


 誠磨は先の折れたペットボトルを持って台所へ行き、中身の3分の1をコップに入れて残りを別のコップに移し、残りの方をラップして冷蔵庫に仕舞った。


「おし、んじゃこれ飲んでから歯磨いて粕寺さんのところに行こうか」


「……うむ」


 それから二人はマスカット・オレ・ソーダを3口ほど飲んで、洗面所に向かい横並びで歯磨きを済ませた。そして粕寺に事前報告をして、返事が来てから粕寺の家に訪ねた。


「すみませんお待たせして」


「いいわよ全然、じゃあ行きましょうか!」


 3人は近くの服屋へと徒歩で向かっていった。




つづく

登場人物の特徴を、くどくない程度に書き収めるのがとても難しい……。

おそらく初登場以来全く特徴を書かないので、誰がどういう見た目なのか覚えてない方がおられるかと思います。


なので、まだエブリスタの方でも主要人物が揃っていないので、揃った際に一覧を書こうと思います。(多分早くて30缶目くらい……?)



では今回はこの辺りで、来週金曜の更新をお楽しみに!

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