第9話:お祝い
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キーンコーンカーンコーン
「もう時間か。 よし、今日の授業は終わり! 帰っていいぞ〜。」
そう言い残して、先生はすぐ出ていった。
「憂、帰ろうぜ。」
「うん。 ちょっと待って。 今片付けてるから。」
今は放課後。あのアンケートの後は、何事もなく普通に授業があって、それも今終わり、帰る準備をしている最中なのだ。
「しっかし、ほんとに普通の生活できなくなったな。」
「ま〜ね。 雅瑠があんなこと言うから……。」
「おいおい、俺のせいにするなよ。 あれは感だって言ったろ。」
そ〜だけどさ、やっぱり言いたくなるじゃん。
「あの〜、柿腋君。」
「あっ、波場白さん。 ど〜したの?」
「生徒会就任おめでとうございます。」
「ありがとう。 それをわざわざ言いに?」
「それもありますが、もう1つ要件があるんです。」
「なに?」
なんだろ?この辺りのことを教えて欲しいのかな?
「あの、一緒に帰りませんか?」
「え? 一緒に?」
「ご、ご迷惑でしたか? 申し訳ありません……。」
「いや、迷惑なんかじゃないよ。 ね、雅瑠?」
「ああ、別にかまわないぞ。 帰る道は同じなんだろ?」
「ありがとうございます。 帰る道は途中まで同じです。」
「そっか、じゃぁ帰ろっか。」
「おう。」
「はい。」
その後楓にも、波場白さんのことを許可してもらい、4人で帰ることになった。
「あの、柿腋君。 お願いがあるんですけど……。」
「僕に? 何かな?」
「名前で読んでも良いですか?」
「名前で? 全然かまわないよ。」
そんなこと、いちいち許可取らなくてもいいのに。律儀だな〜。
「ありがとうございます。 ついでに、私のことも茉莉と呼んでくれませんか?」
「「え?」」
さすがに名前で呼べなんて言われるとは思わなかった……。ん?
「なんで楓が反応してるんだ?」
「別に。」
あれ、なんかちょっと機嫌悪いな……。
「羽崎さん、ど〜かしたんですか? 私、気に食わないこと言いましたか?」
「ううん、何も言ってないよ。 だから気にしないで。」
「そうですか。」
「それで憂、波場白のこと、名前で呼ぶのか?」
そ〜いえば元はその話だったね。でもいきなり名前で呼ぶの恥ずかしいな〜。
「いきなりはちょっと恥ずかしいかな。」
「だ、ダメですか?」
「うっ。」
その目は反則だ……。しかも目が少し潤んでるし……。
「わかった。 名前で呼ぶよ。」
「そうですか! ありがとうございます!」
「ねぇ雅瑠。 あの目は反則だね……。」
「ああ……。 もしあれが計算なら、とんでもなく厄介だな……。」
「だね。」
あれは計算ではなく、自然になったということにしとこう。
「あっ、みなさん、私はこっちなのでここでお別れですね。」
「わかった。 また明日ね、茉莉。」
「また明日。」
「さよならだ。」
「…………。」
「ど〜したの茉莉?」
なんか顔が赤いぞ?暑いのかな?
「い、いえ! なんでもありません! それでわ!」
ダダダダダッ
走って行っちゃった。さっきのはなんだったんだろ?
「ねぇ雅瑠、なんで茉莉は顔赤かったの?」
「たぶん、お前に名前で呼ばれたからだろう。」
「何言ってんだよ、そんなわけないじゃないか。 楓もそ〜思うよね?」
全く、雅瑠も何言い出すんだか。僕に名前を呼ばれたぐらいで、赤くなるわけないじゃないか。
「私は雅瑠の意見に賛成かな。」
「楓まで……。」
2人ともありえないことばっかり言って……。もういいや、早く帰ろ。
「ただいま〜。」
「おかえりー。」
「おかえり憂兄! 今日のアンケートどうだった?」
帰ってくるなりいきなりそれか……。やっぱり気になるんだな〜。でも当然か。僕だって逆の立場なら気になるし。
「勝ったよ。 だから僕、今日から生徒会に入った。 でも決まってからは、まだ一度も生徒会室に入ってないんだよね〜。」
「ほら、やっぱり勝ったでしょ! 憂兄なら勝つって言ったじゃん。」
「なんで言い切れてたのか謎だけど、とりあえずありがと。」
「うん!」
「そう、やっぱり憂が勝ったのね。 食材たくさん買っといてよかったわ。」
「えっ、母さんまさか……。」
「今日は楓ちゃんの家族も呼んで、みんなでお祝いをするわよ!」
やっぱり!母さん何かあるたびにお祝いだって言って、豪華な料理をたくさん作るんだよな〜。実は豪華な料理を作る口実が欲しいだけなんじゃ……。
「やったー! 今日はいつもよりおいしいお母さんの料理を食べれるー!」
「さて、早速準備をするわよ。 菫、手伝ってくれる?」
「はーい!」
「あの、母さん。 僕は?」
「憂は今日の主役だからゆっくりしてなさい。」
「わかった。 部屋にいるからできたら呼んでね。」
「わかったわ。」
さて、部屋に戻って着替えよう。でも着替えてからど〜しよ〜。とりあえず今日の授業の復習でもするか。
「憂兄ー! 出来たよー!」
「ん……。」
何か下で菫が呼んでるみたいだから出来たのかな。ってか、復習してたら途中で寝ちゃったよ。そんなに疲れが貯まっていたのかな……?そんなことを思いながら下降りると
「うわ〜、今回もすごいな〜。」
テーブルの上にぎっしりと料理が乗ってあって、近くにあったもう一個のテーブルも使い、それもいっぱいなのだ。これはちょっと多くないか……?
「今回はいつもに増してすごいわね〜。」
「あっ、楓。 こんばんわかな?」
「こんばんわでいいんじゃない?」
「そっか、こんばんわ楓。」
「こんばんわ憂。」
「憂兄、カエ姉、2人の世界に入ってないで早く食べよう!」
「は、入ってなんかないわよ!」
「そうそう、ちょっと挨拶を交わしてただけだよ。」
「ふ〜ん。 まっ、そんなことより早く食べよ!」
「そうだね、いただきます。」
「「いただきます。」」
今この部屋には僕の母さん父さん妹、楓に楓のお母さんとお父さん。全部で7人か。多いな〜。
「それにしても、まさか憂君が生徒会に入るなんて思わなかったな〜。」
楓のお父さんが意外そうに言ってきた。ま〜僕だって選ばれなければなるつもりはなかったけど……。
「偶然というやつですよ。」
「偶然でもすごいわよ。 生徒会の仕事、頑張ってね。」
「頑張れよ、憂君。」
「ありがとうございます。」
楓の両親から応援してもらって、ますます頑張らないといけなくなったな〜。
その後は、みんなで談笑しながら食事をした。あんなにあった料理も、7人で食べたら意外にすぐになくなった。母さんは
「もっと作ればよかったかしら……。」とか言い出すからさすがに焦ったよ。そして今は、楓達も帰り、風呂にも入って、後は寝るだけの状態でボッーとしてたら
ガチャ
「憂兄、ちょっといい?」
ノックなしに菫が入って来た。あれ?ちょっと雰囲気が暗いな……。ってかやっぱりあのノックは幻聴だったのか……?
「うん、いいよ。 ど〜かしたの?」
「憂兄はこれから生徒会の仕事だから、いろいろと忙しくなるよね?」
「まだ断言は出来ないけどなると思う。」
「そしたら疲れて、遊んでもらったり買い物行ったりとかはできなくなるのかな?」
なんだ、そんなことを心配してたのか。だから雰囲気がちょっと暗いんだな。
「大丈夫だよ。 例え疲れてても、菫のお願いなら聞いてあげるよ。」
「憂兄……。 ありがとう!」
僕は甘いだろう、それでも菫は家族だから、家族のお願いをむげになんかしたくない。それに、暗い顔なんて見たくないしね。
「どういたしまして。」
「それじゃ憂兄、お休み!」
うん、お休み。」
バタン
さて、もうやることないし寝るとしようかな。お休み〜……。