緑の軍隊
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「薬草を採りに行ってくれない?」
とある村で一人の母親が我が子にそう言う
この村では近くに森があり、比較的魔物も居ないため、子供はよく森に薬草を採りに行く事は
普通の事だ
「はーい」
その母親の子供はそう答えた
あの森は安全だと昔から教えられているので
特に怖がったりはしない
今まで森で子供が遭遇した魔物は
ホーンラビット程度なのだ、
そうして森用のブーツに少女は履き替え
外に駆け出して行った
森は村から歩いて10分程で着く
その間には木の棒が刺さっていて、まぁ 迷子になることは無い
彼女は道中、森の木になる甘い木の実を齧り
椿に近い花の蜜を吸いながら森へと到着した
「んーやっぱ少ないなぁ」
彼女の求めている薬草はリリスノと言う薬草で
滋養強壮の効果や体を温める効能があり
特徴的な青色の花を咲かすので比較的分かり易い
薬草だ
でもこの薬草は万能なためギルドも採取依頼が出ていたりして
穴場はすぐに取り尽くされたりする、
「うーん…少し奥に行ってみようかな?」
そうして彼女は少し森の奥に行ってみた
すると何か音がした
「…? なんの音?」
「…声?」
声のようにも聞こえるけれど…これは声じゃない…、
彼女は恐る恐る音が聞こえる草むらの向こうを
のぞき込む、
すると……そこには
数百か数千のゴブリンが集結していた
思わず悲鳴が漏れそうになるが必死に堪える
その群れ…いや軍隊の先頭にはグギャグギャと
声を上げる、一際大きく鎧を纏い強そうなゴブリンが居た。
その左右に大きな剣を持つゴブリンがその
鎧のゴブリンを守っていた
彼女は急いで駆け出し
すぐに村へ戻った
それを親に報告する
「お母さん…!」
「あら?、どうしたの泥まみれじゃない!」
「ゴブリンが…森の中にゴブリンが…」
「大丈夫よ、ゴブリンはたまに出るから…」
「違う………いっぱい居た…いっぱいッ!」
それを言った瞬間彼女は泣き出してしまった
「大丈夫!?…ゴブリンがいっぱい?」
母親は我が子の言った事を考える
ゴブリンがいっぱい……まさか!
母親の考えは間違いなかった
でも信じたくない、起こって欲しくない…
母親は娘を抱き抱え村長の家へと走る
遅くならないように、手遅れにならないように
ガチャンッ!と村長の家の扉が勢いよく開けられる
またお節介小僧が来たのかと思うと違う
村人の一人が子供を抱き抱え入ってきたのだ
それは子供を私に届けた物では無かった
その彼女の顔は青ざめており、息は上っていた
どう見ても普通では無い、
「いったい何が!?」
「ゴ…ゴブリンキングが現れました……
たくさんのゴブリンを使者していたそうです…」
「何っ!!!?」
ゴブリンキングとは全ての村人に恐れられ
忌まわしき魔物として言い伝えられていた
最悪の魔物の一つであり
村を壊し残虐の限りを人に尽くすらしい
その軍隊は数百から数千、悪ければ数万まで行く
可能性があった
私が取るべき行動は
全ての村人を村から避難させる事のみ
そして災厄は刻一刻一刻と近づいて行った。




