キセキ(2)
『何しとるんじゃお前達』
箱を持ったボブロが、驚いた顔で俺達を見る。
『た、助けてくださいっ』
ボブロは箱を置き、剣に手を掛ける。
『待てやコラーー!』
目を釣り上げたホーマが、ボブロ目掛け飛び込んでくる。
ボブロが、ほんの少しだけ剣を持ち上げた。
次の瞬間、『もふっ…』と変な声を上げてホーマが崩れる。
『…ハァハァ…、す、すみません。ありがとうございます』
『一体何したんじゃ?』
『間違ってセービーに抱きついてしまって…』
『そりゃお主が悪いわ』
ゴツッと鈍い音がして、頭に衝撃が走る。
ボブロからげんこつを食らったと気付くのに、少し時間が掛かった。
『った…』
頭を押さえる。
ボブロは箱を持ち、すたすたと行ってしまった。
◇ ◇ ◇
『待たせたのぅ。これでどうじゃ?』
『ありがとうございます』
『…どうしたの?ジャン』
ボブロの後ろから、頭を擦りながら部屋へ入った俺を
サトは不思議そうな顔で見た。
『あ、いや、ちょっと』
『なんじゃ、ホーマと喧嘩しとったから制裁じゃ』
『はは…』
『バーカ』
『ボブロ殿。わざわざ申し訳なかった。丁度良さそうだ』
セービーは箱の蓋を開け、箱の底に何かを描き始めた。
『セービー、それは何?』
『呪文を描いている。私達は魔方陣と呼んでいる』
『魔方陣…』
『これを描いておけば、呪文を唱える必要なく、魔法を発動出来るのだ』
『え?セービーって、いつも呪文唱えてたっけ?』
『唱えておらん』
『え?じゃあどうやって魔法を使ってるの?!』
『私が使うのは、無詠唱魔法だ。魔力の流れを知る者だけが使える。アヴェルの首長は代々使えるのだ』
『へぇ~』
『魔法も色々と奥が深いんですね』
『これで大丈夫だろう』
魔方陣を描いた箱に、キセキの板を入れる。
『恐らく明日にはキセキが増えていると思う』
『増えてれば』
『問題一つクリアじゃな』
『あとは、キセキからセービーへの魔力補充だけですね!』
『それなんだけど、思いきってキセキを食べちゃうとかどうかな?』
『え?!い、石だよ?!』
『キセキは粉末に出来るし、何かに溶かして飲む…とか?』
『うぅむ…。しかし石、じゃしのぅ』
『いや、可能な限りやってみよう』
『え?!石だよ?!』
『効率よく魔力を補充出来れば、私としても助かるからな』
その時、部屋の扉が開き
鳩尾を擦りながら、ホーマが入ってきた。
『ったぁ~。ねぇ、なんかココ痛いんだけどさぁ。あたし転けた?』
『さ、さぁ?』
微かに感じた空気の流れは
間違いなく気まずい物だった。




