ジャンとセービーの旅(3)
いつの間にか、気を失うように眠っていた。セービーは一人で魔物を集めたのだろうか。簡易テントが立っていた。
空は、いつもと変わらない。
朝が来たことを優しい光で教えてくれていた。
一つ背伸びをして、大きく息を吸い込めば、森の香りが鼻の奥をくすぐる。
昨日見た光景が、まるで夢みたいだ。ともすれば、忘れてしまいそうなくらいに。
『良く眠れたか?』
『あ、おはよう…。ごめん、寝ちゃって』
『眠れて良かったな』
『もしかして、一人で魔物集めた?』
『…あぁ。気にするな。私も十分休息を取れたから、今日はかなり飛べるはずだ。先を急ごう』
『ありがとう』
『ちょっとした疑問なんだが』
『え?』
順調に飛行を続け、少し休憩しようと河原に降りた所で、ふいにセービーが口を開いた。
『お前の瞳は少し赤いが、家族もそうなのか?』
『え?俺の目?赤いですか?』
『知らなかったのか?』
『あー、うん。自分の顔なんて見たことないし。俺の家族か…。目、赤かったかな~?…気にしたことないな~』
『…そうか。お前の家族や村人は、みんなそうなのかと思ってな』
そう言われて、セービーの目をまじまじと見てみると、確かにその瞳は茶色だった。
『アヴェルの人はみんな茶色なの?』
『…茶色…だと思うぞ。気にしたことはないが』
『ま、そんなもんだよ。みんな瞳の色なんて気にして見たことないよ~』
『それもそうか。いや、赤っぽいのは珍しいなと思ってな』
『そうなの?』
『あぁ。赤い瞳と言えば、伝説の竜人だろう』
『りゅうじん?』
『な、知らないのか?!アヴェルは知ってたのに、竜人は知らないとは!バカなのか?』
うん…。バカ扱いもだいぶ慣れたな~(棒読み)
『…初めて聞きました』
『昔々、青い海の上にお城がありました。…って聞いたことないのか?!』
『ないで~す』
『なっ?!…世界中に伝わるおとぎ話だと思ってたが』
『へぇ』
『赤い瞳で、体に鱗が生えた人で、優しくて強いんだ。ある時、竜人の姫が別の国の王子と恋に落ちた。人間ではあるが、体に鱗が生えた竜人を王様は良く思わなかった。そこで、王様は竜人の姫を殺そうとする。姫と王子はなんとか逃げたが、あまりのショックに二人で海の沫となってしまった…っていう、悲恋の話なんだ。小さい頃、よく母上に絵本を読んでくれとねだったものだ』
『…なんか、セービーに絵本って似合わないね~意外だな~あはは…』
話半分に聞きながら相槌を打ったのがマズかった。
シン…とした空気に、恐る恐る振り向くと、氷の女王よろしくそれはそれは冷た~い顔のセービーが立っていた。
『…遺言があるなら聞いてやるが?』
『ご、ごめんなさーーーーーーーい!』
絨毯は順調に進む。
美しき魔法の女王と
顔の原型が判らない人を乗せて。
短くてすみません。とりあえず二人の旅は終わりです。次からは新しい地【バスラ】に行きます。




