第八話
「F地点、制圧。
これより予定通り、前線に向かい、防衛に徹する」
セルフィの腕にある探知機が、味方の青と敵の赤にと徐々に染まり上がる。
そうして、自然とみんなが予感する。
その開始。
「こちら、アルファ。
敵部隊発見と、拠点R前方に到達。
俺らがファーストコンタクトに移って良いか?
応答願う」
そんな通信が入り、セルフィの発言が開始の合図だった。
「待たないで、各員、戦果を挙げなさい」
部隊の男子三名は、各々に頷き。
「うおおおお!!」
拠点制圧のために敵部隊に駆け出した。
「来たぞ…防衛!!」
その勢いを二階の窓から眺めていた、近隣住人は緊迫するのは無理もないが、
「最初は!!」
「グー」
だが、じゃんけんである。
「シュールね」
あちこちでじゃんけんの掛け声があがる様子を見て、セルフィは頭を抱えそうになるが、
それはモノの数分で、このゲームに幼稚さは無くなっていた。
「チームガンマ、二名を拠点Eの防衛に向かわせて。
残りはアルファに合流して攻撃側に加わって。
……。
やめておきなさい。
もし貴方が攻め落とせても、一人で防衛が務まると思うの?
攻勢に出るなら絶対に固まって向って」
そんな自分も攻勢に出ていたので、セルフィがじゃんけんで相手を倒していると、自然に動きが止まった。
「どうやら楽しんでくれているようだな?」
ちょうど防衛に回っていた、自分の姉が目の前に立っていたからだった。
「想像以上に忙しいのに、楽しんでいられないわよ」
楽しんでられない苛立ちと、さらにセルフィの表情に諦めがあるのは、彼女の手元に使えるカードも一枚しかない。
それを察しているレフィーユは、自らが会話がてら止めを刺すつもりでやって来たのだろう。
「忙しい、それはよかった。
基本的に交流会の催し物というのは、治安部の能力上昇を目的としている」
「地理の把握は、参謀を選ばせた事でわかったけど、ほかには何があったの?」
「他校のコミュニティ機能の円滑化を目的もある。
そして、指揮能力、勝負に対する勘を鍛え上げる意味合いもある」
「勝負に対する勘?」
「さっきお前も言っていただろう。
このゲームは、一人で攻め込んでもどうにもならならん。
だからこそ、いかに合流する事が大事なのか知ってもらいたい」
レフィーユはセルフィについてきた人の乱戦を眺めていると、カードを用意する。
当然、こう聞いてきた。
「ところでアラバはどこだ?」
セルフィが呆れて、姉に肩をすくめてみせるのは、自分が止めを刺される時にそんな事を聞いてくるからと思ったからではない。
「姉さん、あんな事をしておいて、良くそんな事を聞いてくるわね?」
そう言っている間にも、その男から通信が入ったので、その感情を加速させる。
「セルフィさん、何とか出来ませんか?」
ところ変わって、アラバは困っていた。
「これじゃ、身動きが取れないですよ」
セルフィがこの男に与えた役割は、遊撃だった。
まあ、簡単にいえば適当に攻撃してなさいという事だったが、セルフィにしても、適当にそんな役を与えたのでなかった。
「確かに私が適当に動いていたら、レフィーユさんも警戒するでしょうが…」
セルフィの打った、この一手、これが姉に読まれていた事を、セルフィの通信越しに拾っていた。
「へへ、アラバはん、アンさんは包囲されてまっせ?]
「あのう、動きを止めるくらいなら、五人もいらないでしょう?」
その分、人手が足らなくなるのは不味いと思うのですが?」
するとガトウが、答えた。
「悪く思うな。
これも立派な作戦だ。
お前がここで負けたとして、回復に戻るだろう?
俺らはそこの回復拠点を攻撃するようにと、レフィーユに言われているんだ。
これはお前の動きを封じるための防御部隊でもあり、俺たちは遊撃を担当する攻撃部隊でもあるんだ」
アラバは探知機を見て、苦い顔をする。
「こちらとしては前回のように、逃げれば問題もないのですが、どうやらレフィーユさんが設定を変更したようですね」
「まあな、一定の距離になると、逃げた者が自動的に負けになる設定は、足の速いお前をマークするのには助かる。
お前も、数を減らさんと、回復の際にみんなに迷惑を掛けるぞ?」
「今なら、完全に逃げ道を立たれた者の気持ちがわかる気がします」
そうして、アラバはイワトにじゃんけんを挑み、負けていた。
「……」
よほど嫌な沈黙だったのか、セルフィから通信が入った。
「ちゃんと守りの多い拠点に戻りなさいよ」
それだけ言うと、レフィーユは言う。
「まあ、何をしでかすかわからん男だからな。
先手を持って潰すのは、定石だろう?」