第七話
「ただいま、戻りました」
そうして、アラバが白鳳学園に帰って来たのは、夜になっていた。
「お、遅かったわね」
そう報告を受けたセルフィは、何故か驚いていた。
アラバはその理由を察していたが、電気のスイッチを手にして聞いてみた。
「何をやってるのですか、こんな所で?」
未だに暗闇の中ではあるが、セルフィは緊張を隠せずにはいられないでいる。
「部屋にてっきり戻ったモノだと思ったわ?」
「一応、報告はしておかないといけませんからね。
そこでセルフィさんの部屋に行ったのですが…」
そこでようやくレフィーユの部屋の明かりを付けてアラバは聞いた。
「妹さんとはいえ、勝手にレフィーユさんの部屋を探るのは、プライバシーの侵害というのでは?」
「ふん、アンタは監視に来たわけね。
今孔明さん?」
「そのあだ名、やめてもらえませんか?」
もう数時間前の話だが、その時につけられたあだ名にアラバは難色を示す。
「この勝負に勝つなら、10人で十分だと言った人は誰かしら?」
「『稲葉山を落とした、今孔明にでもなったつもり?』と言ったのは貴女の方じゃないですか。
実際、誰もついて来て来ませんでしたし。
レフィーユさんも、やっぱりその辺は看破してましたよ」
「やっぱり、看破していたって?
だったら貴方は、どうしてこんな時間まで…?」
セルフィは不信そうに聞いた来たので、アラバは回答代わりとカギを見せた。
「呆れた…」
だがセルフィの緊張は解けない。
アラバにしてもそれは、セルフィが、いつもあてがわれている部屋にいるのではなく、姉の部屋にいるのが、あまりにも不自然だというのを知っているからだった。
魔力を練り、今でもハルバートを作り出すような雰囲気があったので、明らかに『催し物』を調べようとしてはいなかった。
「まあ、別に良いと思いますがね」
「何がよ?」
「このじゃんけんゲームの攻略法を、探りに来たのでしょう?」
明らかな嘘だった。
まだ、セルフィの警戒は解けなかったが、アラバはそれに構う事なく、色々と自分の姉の棚にある資料を色々とあさり出すので、セルフィは少し苛立ち混じりに聞いてきた。
「探っても無駄だというわけ?」
「何の事でしょうか?」
「惚けないでよ。
アンタ達の事を調べていたと言ってあげるわよ」
やけが混じり出すので、アラバは調べながら聞く。
「でしたら、あの人がボロを出すとは思えませんよ。
探りを入れるなら、私の部屋に来ると思ったんですがね?」
それを聞いたセルフィは、ますます機嫌が悪くなる。
「ふん、だからこそ裏をかいたのよ」
アラバは、頷いて…
「なるほど」
セルフィに言う。
「無理でしょ?」
「うるさいわね」
だが、この行動力を見ると、やはり妹だなと思っていると、
「もっともアンタに部屋のカギを渡すくらいですもの、無駄足だったわね」
だが、セルフィも構わず、作業を再開する。
「探索は続けるのですね?」
「ふん、アンタ達の事を調べる事をやめただけよ。
だからアンタの言う通り、催し物を調べてみようと思ったのよ」
そう言ってセルフィは作業を再開するので、アラバはただ見ているだけというわけにはいかないなと、続くように捜索をし始める。
そこで目に付いたのは当然、PCだった。
「さすがに電源を入れたら、不味いですかね?」
「別に見られて駄目なモノは、ロックを掛けていると思うわよ?」
妙なニュアンスを感じた言い方だったのだが、
とりあえず妹の了承を得たという、軽い言い訳が勝って電源を入れようとするが、それにはすでに電源が入っていた。
「セルフィさん、姉妹とは言え、勝手に物色するのは私はどうかと思いますよ?」
「……」
珍しくセルフィが黙るが、画面を見れば彼女の心境は少しばかりわかりもする。
「ご丁寧にど真ん中に『じゃんけん大会 詳細』なんてフォルダがありますよ」
他にもフォルダがある。
しかし、それが円を描くように設置されているので、かえってそのフォルダが目立っていたのだ。
当然、それを先に見たセルフィは答える。
「押しても無駄よ。
姉さんの言っていた事が、まんま記載されているだけだったのよ」
言われながら、軽く目を通す。
それだけでも同じような内容だとわかる文章だったが、アラバはじっと見ていた。
「どうしたのよ?」
「何か見逃してはないかと思いましてね」
「無駄よ、全部、読んだもの」
ちなみにこの資料は、まとまってはいるモノの大層な量の文章が並んでいます。
「これを全部、読みますか?」
それにアラバは肩をすくませ、答えた。
「ですが、そこまでがレフィーユさんの掌中だというのに、いい加減気づいてほしいですね?」
「どういう事よ?」
「貴女はただでさえ、ルールを指摘して、レフィーユさんにとって予想外な事が起こしたではありませんか?」
「ルール変更の事?
でも、あれはお互いにフェアにするための…」
セルフィが少し黙る。
「もしかして、私、ミスった?」
アラバは笑顔を見せる。
「そうとも言います」
セルフィの苛立ちを感じながら、アラバはこうも言う。
「ですが、私もそれを承知で、レフィーユさんに報告をしたのですから、あの人もまた最初から、戦略を練り上げる事になったのですよ」
「ふん、じゃあ、姉さんは元から準備していた戦略を準備し直しているという事?」
アラバは画面をじっと見ていた。
「私たちは穴を教えたのだから、そこから何を考えているのか…?」
「作戦を練り直すしかない?」
「私たちは作戦を熟成させる時間はあるでしょう?」
アラバの言い方は、あくまで自分は味方だという表現だった。
セルフィは少し信用ないのが伺えた。
「ホント、アンタだけよね。
ここまで姉さんに敵対しようなんて…」
当然、セルフィはこの後、別件でこの男と姉の接点を調べるつもりだったが、今でもアラバ背中をむけているのだから、調べているふりをしてそうしようとしたのだが。
「何人の人がレフィーユさんが、こんなゲームを考える人だと思うのでしょうね?」
アラバのその問いに、セルフィはそうする事をやめていた。
「勝ちたいわよね」
「はい…」
そして、夜が更けていった。