第六話
「いいえ、隊長。
これが黙っていられますか!?」
ヒオトが怒りをあらわにしていた。
30分前だろうか、ここにアラバがやって来たのだ。
「もともとルールの穴があったから、アラバはそれを指摘して来ただけだろう?」
「確かに拠点を制圧した時点で、当日を迎えたら、有利も不利もないといのは、ルール把握のために、本日から始めた私たちの不備でもあります」
さすがにヒオトは思い出して来たのだろうか、怒りが頂点に達していた。
「ですが、宣戦布告なんて、失礼にもほどがあります!!」
対照的にレフィーユは、にこやかに彼の動作を思い出して、じゃんけんカードを眺めて言う。
「ふっ、私にしても見事に敗北を喫するとは思いもよらなかったな」
敗北と言っても、今回の催し物で負けたと言う意味ではない。
はっきりいえば、彼女にしても、先のアラバの来訪は予測できていた。
「ちょっと待つんだ、アラバ」
だからこそ、アラバの足早に立ち去ろうとする意図も、看破した上で、こんな質問をしていた。
「旗の位置くらい聞かないのか?」
「いえ、それは事前にセルフィさんから聞きましたから、必要ありませんよ」
妥当な言葉、だから、ヒオトは納得する。
「納得いかんな」
ただ一人、レフィーユだけが、アラバの足を止める。
「ならば、どうしてお前は生きている?」
「それは生きてますよ」
「違う」
突っ込みながら、彼女の腕にもある時計を指しながら言う。
「理由はどうあれ、お前はじゃんけんで勝負を挑まれずに、ここまでやって来ているではないか。
旗を取るには、その生者。
つまり、じゃんけんで生き残った者や、そうでない者でなければならない。
お前は、後者だろう?」
アラハ少し呆れもする態度で答えた。
「今から始めるとはいっても、それは勘繰り過ぎですよ。
こんな軽く取り囲まれているような状態で、旗なんて狙えるわけないじゃないですか?
当然、伏兵なんていませんし…。
確認してもかまいませんよ?」
「ふむ、私もそれくらいは予測はしていたのだが、今のところ報告も何もないな」
二人にしかわからない、お互い手の内を明かすような会話だった。
それにレフィーユはもともと鋭い目がさらに険しくなるのは、彼の正体を知っているからだろうが…。
「緊張感ありますね?」
しかし、アラバの方はそこまで張り詰める様子もなく答えた。
「まあ、今まで勝負を避けてここまでやって来たのは、確かに意味がありますよ」
「旗を取るためか?」
アラバは首を振り、じゃんけんカードを見せた。
「このカードじゃんけんについて、少し確かめてみたい事がありましてね。
ここまで来るのは、そういう理由もあるのですよ」
アラバはカードを一枚出してほしいと言うので、レフィーユは取り出しながら答えた。
「そう言えば、言ってなかったが、二枚や三枚同時出しは、無条件で負けになるからな?」
「グーチョッパは禁止というわけですね?」
アラバの言葉を変換しようと、少し時間が掛かり、見ると、まるで前のような、あと出しじゃんけんのような形になっていた。
当然、アラバはレフィーユに勝って見せて答えた。
「セルフィさんからの、伝言でしてね。
私たちは負けるつもりはない、という事です」
完全な宣戦布告だった。
周囲が唖然として、その中をアラバは悠々と去っていく。
それくらい、場が静かになった。
「やってくれるではないか」
レフィーユは嬉しそうにカードを見ており、ヒオトにとってはそれが気に入らない。
「隊長はあの人を評価しすぎなんですよ。
失礼すぎるのにも、ほどがあります」
「セルフィの指示なのかも知れんのだぞ?」
実際、『挑発しろ』というのは、予想通りセルフィの指示だったが、その方法はアラバに任せていたのだろうなと、周囲を見るとわかった。
怒っているのはヒオトを怒らせ、周囲にも同じような感情を持つ者が出だすので、改めてアラバを評価するのは無理もない。
「ここまで完全に挑発に乗せられるとはな。
さて、当日はどんな手を使って来るかな?」
白く整った顔は設定を変えながら、微笑みを浮かべていた。