表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/41

第五話

 「今は…ですか、昔はいたのですか?


 そんな話、聞いた事がありませんが?」


 「ヒオトよ」


 「ヒオトさんが?」


 「私も聞いた限りでしか、知らないけど…。


 まあ、今は目の前の勝負に取り組みましょう。


 いい案があるなら、遠慮なく出しなさい。


 出し惜しみしたら、間違いなく敗北を呼ぶ相手だというのを忘れないでよ」


 そう言って、地図をアラバとセルフィが眺めなおす頃。


 そのヒオトはレフィーユの隣にいた。


 一歩下がって、どちらかの隣。


 それが、かつての自分がいた立ち位置。


 おかげで昔の事を、思い出してしまうのは無理も無い。



 「私は、間違って、こんな事を言ってはいない」



 私がレフィーユ・アルマフィの声を始めて聞いたのは、こんな一声だった。


 名家、アルマフィの血族にして、ご令嬢、ただでさえここに入学しただけでも話題になった人が、治安部に入部したいと言って来たのだ。


 「で、ですが、もしもの事があっては…」


 当時の顧問も、本来なら治安維持に必要な人材が確保できると言うのに、さすがに難色を見せている。


 彼女とて自分の事をわかっていたのだろうか、それらの意図を組んで毅然と答えた。


 「私とて『もしも』というのが、怪我だけでは済まない意味合いがあるのを知っていて、こういう事を言っているつもりだ」


 年上相手に堂々と言い、当時も一歩も引かないのは相変わらずだった。


 そんな彼女に、私は…。


 「じゃあ、腕前を見るという意味で、一回、私と模擬戦を行うと言うのはどうですか?」


 そう提案していた。


 その時、まだ彼女の腕前を知らないとはいえ、顧問はまだ困った顔をしていた。


 そして、彼女は…。


 「モギセン?」


 キョトンとして、私を見ていた。


 そして、思い付いたように答えた。


 「ああ、手合わせの事か…」


 とんでもない、お嬢様だ。


 そう感じたのは私だけじゃないだろう。


 周囲にそんな印象を与えていたのではないだろうか?


 おかげで私は、注意を込めて忠告する。


 「一応、聞いておきます。


 ここの学園の『手合わせ』は、実際、自分の東方術を使う事を知ってますよね?」


 「知っている、ここの名物といえば聞こえが悪いかも知れんが、特徴でもある訓練風景と聞く。


 実戦に限りない訓練を行うが故、ここの部員は高い戦闘力を有している事も…。


 戦乙女ヴァルキリーだったか?」


 そんな会話の中、私は開始線に立ち、エストックを作り上げる。


 彼女はというと、白い手袋を付けていた。


 まだ身なりを気にするのかと思いもして聞いてみた。


 「じゃあ、この色違いの制服を見て、わかりますね?」 


 そこでようやく彼女は、サーベルを作り上げて言う。


 「わかっている、そうでなければ意味がない」


 今にして思えば、ヴァルキリーを見て、意気込んで来たのは、犯罪者を含めて、彼女が最初で最後だったと思う。


 その時の下馬評は、私の方が上だっただろう。


 それだけヴァルキリーの戦闘力は高く、その推薦を受けて合格したのだから、私は誇りにもしていた。


 「始め!!」


 顧問の号令と同時にブザーが鳴る。


 ゆったりと構えたレフィーユは余裕を持って言う。


 「行くぞ?」


 なめて掛かっていた。


 彼女も、それを感じていたのだろう。


 前の発言は、私に予め先攻を予測させた一撃は、とても鋭く、とんでもない重みがあった。


 さらに危うく武器を落としかけるのが、災いする。


 「ふんっ!!」


 お腹に鈍い痛みが走る。


 当て身を入れられたのだけは自覚出来たが、そこから見事に転ばされていた。


 荒々しいが、それには雄々しさすら感じさせる戦法。


 そこには品の良いお嬢様なんていなかった。


 「まだ、やれるようだな?」


 そんなレフィーユの言葉は、私に回復する時間を与えているのだと自覚できた。


 私にしても戦うための訓練を受けていたので、ダメージに対して回復力はある。


 頷いては見たモノの…。


 この時、わかっていたかも知れない。


 この人に実力では、決して勝てない事を。


 だが、自然な動作だった。


 「もう一度、お願いします」


 私はこう答えていたのは、今でもはっきり覚えている。


 屈辱からではない。


 これは意地でもある。


 「はあっ!!」


 今度は先制を仕掛けるが…。


 だが何度、この後試したのだろう。


 「もうこれくらいにしておけ?」


 彼女に気遣われてしまうのも無理もない。


 認めざるおえない実力差があった。


 しかし、彼女は言う。


 「どうやら入部は無理なようだな?」


 サーベルを眺め、彼女はこうも答える。


 「家柄など、そんなモノに縛られたくはないのだがな。


 ふっ、どうやら私を縛るモノは、相当複雑らしい」


 その時、初めて悲しい顔を見た。


 私は自然と動いていた。


 「待ってください」


 ……。


 そうしてヒオトは回想をやめて、レフィーユに言う。


 「隊長」


 かつての役職を口にして言う。


 「絶対に勝ちましょうね?」


 「当然だ。


 負けてやる気など毛頭ない」


 地図を眺めるレフィーユの頼もしさは、昔と変わっていないが、彼女は呆れてヒオトに言った。


 「いい加減、気を静めてくれないか?」


 それを人は、なだめに掛かると言う。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ