第四十一話
一方、セルフィは白鳳学園近くにある、中華飯店にて、ため息を付いていた。
その仕草は、どことなく姉に似ているが、何の料理を食するワケでも無く、一人、案内されたテーブルに座っているだけだった。
だが、今はその事が彼女の『仕事』だった。
「すまないヨ、君の仕事に便乗しちゃって…」
店主のヨウは、謝りながらお茶を差し出してきた。
「構うことは無いわ。
地域の安全を守るのは、治安部として当然の義務よ。
それに…。
外であの人を待つより、ここで待っていた方が確かに、周りに怪しまれる事はないわ」
『貴方の指摘通りね』と皮肉と聞こえたのか、店主のヨウは頭を掻いていた。
「今はあの人は何をしてるの?」
「アラバさんは、今、皿洗い中ヨ…」
ヨウは、そう言って、厨房の方に目をやる。
そこではランチタイムを過ぎ、客足が遠のいた所為か水道の音が聞こえていた。
「……」
そして、自然とヨウの目が細くなるのは、無理も無い。
そこには誰もいないだから…。
しかし、ヨウは声を上げた。
「アラバさ~ん?」
すると声が帰って来る…。
「はーい、何でしょう?」
ヨウが予め用意していた機材が、それを可能とさせていた。
セルフィが身体を傾けるが、自分が案内した位置からは厨房は見えないのを知っていた。
「ちゃんと、働いているのでしょうね?」
そのためセルフィは、そう言うので、ヨウは対応するスイッチを入れた。
「大丈夫ですよ~」
…そして、場所を変えて歩みをすすめていたレフィーユが、頷くように答えた。
「なるほど、近づけば近づくほど、モノが見えなくなるというのは、よく言ったモノだな?」
「突然、何を言っているのですか?」
魔法使いは『いつもの事』に、濁った声で呆れていた。
『漆黒』の法衣というより、彼の周囲は実際は『夜』だった。
そんな姿を見かければ通行人は逃げるように遠ざかるのを、レフィーユは見ながら答えた。
「ふっ、どうやって抜け出したのが、こちらとしては気になったのでな。
だが、それにはつまり、その店の店主は『協力者でなければならない』という事だな?」
レフィーユの強調した意図は、ヒオトにはわからなく、アラバにしかわからないのだろう。
「まあ、よほどの用事かなければ、彼にしても抜け出そうなんて考えないでしょうね」
「よほどの事件がなければな…」
レフィーユは鋭い視線を送り、魔法使いのアラバは視線を泳がせていると、ヒオトは聞いた。
「偽者を掃討して騒ぎを起こして、漆黒の魔導士、貴方には隊長が偽者かどうかわかるのですか?」
ヒオトの問いに、アラバは一瞬、睨んでしまい、
「わかるワケないじゃないですか?」
誤魔化して答えていたのは、ヒオトにはわからなかった。
「矛盾してます。
どうして貴方は、さっきから偽者を掃討できるのですか?」
意図のつかめない答えだったので、魔法使いが法衣を正したのを見計らって、レフィーユが手助けをする。
「この男の場合、別にどちらでも構わないだろう」
「えっ」
「本人であろうと、偽者であろうと、私は倒す目標である事には変わりはない。
私の姿形をした人物を無差別に襲うことは、何のおかしい事ではない」
魔法使いはなおも『痛み』を思い出して、近くを撫でていると、彼女は構わず答えた。
「しかし…、そうなるとお前自身にも問題がある。
どうして、お前がボスに会う必要がある?」
そして、アラバは嘘をついた。
「自分の保身のためですよ」
言い訳っぽく聞こえたのか、レフィーユは何か引っかかった。
「保身、身を守ると言うことか?」
対照的にヒオトは皮肉を込めて言う。
「命乞いですか?」
「そう受け取ってもらっても、構いませんよ?」
それに不振に感じたのは、レフィーユだった。
「だが、お前は先の偽者と戦う際、法衣を伸ばして相手に触れる事無く戦っていた。
大した問題じゃ無いだろう?」
「ですが、万全じゃではありません。
不意打ち、多勢に攻めれたり、方法は色々とありますよ。
そして、相手は『触れたら、その人物になれる』のですから…」
「正体がばれると終わりな、お前は降伏をするという事か…」
レフィーユの回答に、魔法使いは表情をしかめるがわかりようがない。
「貴女方とて、同じことが言えるのでは?
相手は『他人になれる』のですから、現状、調べようがないでしょう」
明らかな挑発ととれたのか、ヒオトは意気込む。
「貴方こそ、戦乙女の実力がわかってないようですね?
もうすでに、首謀者を挙げてます。
確保も時間の問題です」
そして、ヒオトは続けていった。
「隊長の指示さえあれば…」
だが、それは彼女に対してなのだろか、
「相変わらず、隊長がいなければ何も出来ないのですね?」
レフィーユも黙る。
「言ってる意味がわかりません。
貴方の言い方は、私たちが無能と言ってる感じがします」
さすがに魔法使いが、気を使ったのが見て取れたのか、レフィーユが答える事になる。
「そう言ってるのだろう?」




