第四話
「そんなモノでしょうかね?」
いつも見慣れた学園、その治安部の部室。
だが、やはり見慣れぬ制服の割合が9割を占めると、さぞ居心地が悪いだろう。
とりあえず視線を落ち着かせようとキョロキョロしていると、セルフィが携帯で連絡をとっていた。
「あっ、姉さん、今着いた?
こっちは旗を置いたわよ。
そこで朝礼台があったでしょ?
あれを持ってきて、目立つようにしてみたわ。
そうそう…。
目立った方が良いでしょう。
あっ、そっちもそうするのね」
携帯を切ると、旗の位置が自分達と同じようにグランドにおいてある事、ルール把握の為に、今から始めるという事をセルフィは伝えていた。
「セルフィさん、私にとってはどこなのか、まったくわからないのですが?」
アラバはセルフィを通して、旗の位置を確認していると、リスティア学園の精鋭達が、横やりを入れるように質問をしてきた。
「ここは黒く表示されてますが、どうなっているのですか?」
「ええと、ここは…工事中でして。
通れなくなっているから、黒くなっているのだと思いますよ?」
アラバは妥当な回答を見せる。
だが、それが気に入らないのだろう。
「そんな事はわかってます。
どんな工事をしているのかと、聞いているのです?」
今回の勝負に必要なのだろうかと思うが、仕方の無い事だった。
元々、アラバ嫌いのヴァルキリー達は敵として、いや、的としてしか見てないのだ。
「では、ここは?」
その証拠に、
「ここは、そうですね。
通れる箇所だったと…」
彼にしても話しながら『しまった』という顔をする。
「『だった』?
曖昧な発言は、必要ありません」
身長が縮むような錯覚を覚える、そんな中をセルフィが仕切りなおすような言い方をした。
「私は、アンタを頼りにしているわよ」
それはとても強く言ったのが、印象的だった。
「ねえ、アンタ、こういう制圧戦、どういう事が大事なのか答えてみなさい」
アラバは少し戸惑うが答えた。
「本陣を目指す事でしょうか?」
すると当然、周りから小言が飛ぶ。
「何を当然な事を…」
「そのための拠点を確保しないといけないのでしょ?」
罵声に近い小言、だが、セルフィは構う事無く聞いてきた。
「本陣とは、どういう事?
旗を取るとか?」
「言葉通りですね。
まあ、この場合は、旗ではなく本陣を目指すという意味ですか?」
「ふん、自分の意見に自信を持ちなさい。
でも、こういうゲームはいかに守るかが大事でしょう。
当然、貴方の戦法は、無理なのはわかっているのよね?」
セルフィの問いに周囲は頷く、アラバはそれを見ながら答えた。
「まあ、無理ですよ。
ですが、レフィーユさんは、その分、その人たちの防衛に人員を割かないといけなくなります。
それは各拠点を守るために必要な人員を奪う事となります」
「なるほど、その分、拠点を制圧するのが楽になるという事ね」
まだ『当然でしょ』という声が上がっていた。
だが、それを黙らせるのはセルフィだった。
「でも、それじゃ、勝負に勝てないわよね。
何故だか、わかる?」
それに頷いていたのは、アラバだけだった。
「レフィーユさんも、同じ戦法で来るからでしょうね」
ホワイトボードにも同じような地図があったので、アラバはその一つを指す。
「このゲームは、一つのポイントを制圧するのに、10分掛かるからこそ、前線の維持の重要さが浮いて出てますが、本質は違うのでしょう。
前線の維持、その逸脱。
それが今回の勝負の意味合いなのでしょうね」
セルフィも同じ答えに至っているらしく、頷いて見せるが、アラバはさらに一人、苦い顔をしていた。
「どうしたのよ、また変顔?」
「誰が好き好んであんな顔をしますか。
セルフィさん、話しながら気付いたのですが、感じた事を言って良いですか?」
「何よ、言ってみなさいよ?」
セルフィの不快な顔は、彼の言葉を走らせる。
「絶対、ここまで、レフィーユさんに読まれてますよね?」
あくまで勘で答えていた。
おかげで周囲はキョトンとしていたが、セルフィだけが共感していた。
「ふん、アンタを選んで正解だったわ」
「元々、このゲームを考えたのが、レフィーユさんですからね。
『今から始める』というのは、不利なのは、お前達だと言いたかったのでしょうね」
その時、アラバはセルフィが自分をじっと見ていた事に気になった。
「どうしたのですか?」
「何でも無いわよ。
ただ勝算があるのか、気になったのよ」
アラバは周囲を伺う。
確かに先ほどの不利な点に、落胆する者もいた。
中には『さすが』という者もいる中、アラバは言う。
「たまには負け戦くらい、あの人も味わってほしいですね?」
セルフィは肩を竦ませていたが、
「レフィーユ・アルマフィに勝負を挑むなんて、今はもう、アンタくらいしかいないのかしらね」
表情は明るかった。