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第三十九話

 「『金的』とは、どういう事か知ってますか?」


 治安部に入部する前に、こんな質問がある。


 これは女子生徒に向かって、どこぞかのタイミングをもってする質問。


 もし、これがセクハラな質問だというなら、その女子生徒は、しばらくは内勤、後方支援に決まる。


 例え、実力があってもだ。


 その質問の意図は、すぐに実戦に使えるかどうかを意味していた。


 武装した異性相手に躊躇無く急所を狙えるかどうかは、それは実戦において大きな違いがあるからだ。


 「金的、それはどういう事だろうか?」


 だが、意外にも当時のレフィーユは知らなかったが…。


 その質問は所詮、質問だと思い知らされる事になる。


 そうして強盗事件が起きた時、私は前線より少し下がった辺りを担当する事になった。


 それは前線部隊の打ち漏らしを、叩く役割を担っており。


 質問に答えられなかったレフィーユはさらに後方部隊、けが人、避難誘導に回っていた。


 「一人、そっちに行くぞ!!」


 「了解!!」


 私はその報告を受け、一人の犯罪者に向かって行き、武装と同時に叫んだ。


 「止まりなさい!!」


 恫喝、そして、エストックを構えて『衝撃波』は放って、相手を怯んだのを見て捕縛術をする。


 堅い地面に滑り込むような状態になるので、私も歯を食いしばりながらも取り押さえ。


 計らずも、それが私の初めての検挙となろうとする。


 が、それが災いした。


 自分が未熟だったのもある。


 相手が東方術者だと、タカをくくって掛かっていたのだ。


 「!!」


 相手は東方術者ではなく、西方術者だった。


 炎が相手の手から放たれ、思わず身を屈め、拘束を解いてしまった。


 目を開けた時、避難誘導するレフィーユに向かって行き。


 正直、


 「駄目!!」


 と思った。


 まるで自分と同じように、レフィーユも地面に滑り込むような捕縛術を見せる。


 「ふん!!」


 違いがあるとすれば、私は捕縛するのに組み付いたが、彼女は組み付かず転ばしていた。


 だが、同じような目にあったのだから相手も『同じ目に合わせてやる』とでも思ったのだろう。


 幾分か火を放つ動作に入るのが早くなっていた。


 が、


 「ぐああ!!」


 私は決定的な瞬間を見た。


 「『金的』とは、どういう事か知ってますか?」


 そんな質問が脳裏によぎったくらいだ。


 転がった相手に、レフィーユは踏んづけていたのだ。


 「ヒオト、確保!!」


 そんな相手を尻目に、私はそんな彼女の言葉で正気に戻る。


 そして、事が終わった時、レフィーユは頷くように言った。


 「なるほど、これを金的というのだな?」


 「知らなかったんじゃ?」


 「犯罪の現場で、異性を相手にするのだから、急所を狙うくらいの事は知っている。


 だが、『金的』とは『異性の股間を狙う』という言葉だとは知らなかっただけだ」


 私は呆れもするが、彼女はこうも言った。


 「ヒオト、倒れた相手には確実に急所に当てて、行動不能にするのは基本中の基本だ。


 初めての実戦という事もあったかも知れないが、基本は忘れてもらっては困る」


 注意されてしまい気分を害し、


 「お前が逃したら、次は一般の人が巻き込まれるのだぞ?」


 この正論が私を黙らせた。  


 それを察した、レフィーユは言い過ぎたと思いもしたのか、


 「今度からは、組み伏せようとした相手の尻に、指を突っ込む事くらいは出来る様になるのだな?」


 「な、何を!!」


 お嬢様らしかなぬ発現に思わず彼女を見る。


 「ふっ、私はお嬢様扱いされるのが一番気分を害すぞ?」


 そして、自信たっぷりにこうも言う。


 「もっとも私をそこまで追い詰める相手などいればの話だがな」


 ……。


 そんな回想が流れているとはつゆ知らず、アラバは不機嫌そうに被害のあった場所をさすり。


 聞き取り調査をしている、レフィーユを恨めしく見ていた。


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