第三十七話
「信用できないと言われ、調書はとれませんでした」
こんな報告は、不十分である。
『それでも事情聴取はしなれば、話が前に進まんだろう』
普段の私なら、そう注意する。
だが、それには納得が出来ていたのは、奇妙にも同じような台詞を聞いたからだ。
この報告を聞く、数時間前の事だった。
「イワトが、襲撃にあっただと!?」
私はガトウから自分の部屋で驚きと共に、その報告を受けていた。
「…ああ、幸い俺も近くにいたからな。
あまりけがの様子も、大した事も無い。
一応、治療に保健室にいる」
「わかった、そこに行こう」
さっそく向かってみることにしたが、聞いた話は大変な問題に直面していた。
「なるほど、私では無かったという事か?」
イワトを襲ったのは、私の偽者ではく、アラバの偽者が現れたらしい。
ついでにセルフィそっくりの偽者も現れたらしい。
私にしても、警戒はしろと言っていた。
しかし『偽者のレフィーユに気をつけろ』という指摘は、『他の人間の偽者に気をつけろ』という指摘には弱いという事だ。
「でも、レフィーユさんが、注意してくれていたおかげでもあるんですわ。
それじゃないと、この程度で済まんと思ってます」
しかし、イワトは何かを隠すような表情を見せる。
元々、この男は隠し事は得意では無いのは、アラバとのやりとりでわかる。
私は、こう聞いてみた。
「よほどそっくりだったようだな?」
イワトは静かに答えた。
「正直、今でも接してくる人が偽者かと思って、信用出来んのですわ」
「何を言ってるのですか、貴方は…!!」
それには近くにいた、ヒオトが行き掛かる。
私はそれを制した。
それは私にもあった不安でもあるからだ。
「これで、信用できるか?」
私はアラバに言われた様に、東方術を行使する。
「……」
私のサーベルを見て、イワトの反応は、一瞬だった事もある。
「あ、ああ、そこまでせんでも、ええですよ」
だが、おかげで確信には至れる。
おそらく心のどこかで、信用出来ないだろう。
セルフィとアラバが証明するに当たっては、それを隠し切れないでいたのが印象的だった。
そして、後日談みたくなるが、イワトは日常でも休む様になり、自室に引き籠もるようになって行った。
そうして、その日の夜の事。
私は夜のトレーニングの最中、戦闘訓練場にて人影を発見する。
一瞬、誰かと思い警戒をするが、アラバだった。
普段では見慣れぬ雰囲気、構え。
その周囲に自らの西方術で生み出した。
本物でしか生み出せぬ、数個の闇の球体。
「ふっ!!」
息を吹き、膝を曲げ、
「しゃっ!!」
進行方向にある球体に距離を詰める。
その距離の詰め方は、外見から見れば、早くは無い様に見える。
だが、アレは味わった相手からしてみれば、下手に動くとこの男の得意な距離になる。
漆黒の魔導士の近寄り方だった。
「はっ!!」
掌底と呼ばれる張り手突きが、球体を弾け飛ぶのが、皮切り(はじまり)だった。
手で足で、時には身体で当たり距離を取り、大きく飛び上がって蹴飛ばす…。
と、思いきや、そのまま着地してアラバは表情が曇る。
「おかしいですね、大体、この辺りで、セルフィさん達がやって来て、私は大きくずっこける予定だったのですが?」
「そんなの知るかっ」
アラバはワケの分からない事を言っていた。
だが、どうやらここで小休止をとるらしい。




