第三十三話
アラバは、その仕草を納得しながら答える。
「その見解は間違いはないでしょう。
でしたら、何故、『誘われた』と言われたのか、コレが納得出来ないのですよ」
自分の姉がこうも言う。
「パラサイターズが、同じ変身能力の人間を見つける。
それがイエローテープから集い寄せるというのは、別におかしい手口ではないだろう?」
その通り、姉の言うとおりなので、セルフィも思わずだが頷いていた。
ただこの男、アラバはため息をついていた。
レフィーユの白々しい説明文に、アラバはため息をついて答える。
「あの人たちは『見ている』と言ったのですよ?」
そして、ドア越しに誰が(セルフィ)がいるのかが、わかって来て、その人が緊張感を醸し出すので、アラバは言った。
「これは、それはあくまで自分の想像ですけど。
あの人たちの『見ている』という表現には、『手は出さない』という意味もあると思ってましてね。
でも、ミーアさんが言うのを見ていると、『手を出している』のにしか見えないのですよね」
「組織を相手にするというのは、完全に信用してはいけない。
所詮、組織の言うところなのではないのか?」
レフィーユにしても、その言葉が納得出来ないらしく。
「結局、私たちは『何を見ている』のか、全くわかっていないという事か。
ヒオトらには組織の『見ている』というのは控えておく事にしておいた方がよさそうだな」
「ですが、ミーアさんのアリバイの無い事も、いずれはバレるでしょうね」
アラバはどうかわからかったが、姉の発言には自分の存在を認識している感じがしたので、セルフィは当然、不機嫌になったが…。
「ふう…」
集団浴場の湯船に浸かるが、機嫌など良くなるわけがない。
先のやりとりを見て思う事は、自分の姉、レフィーユの事じゃなく、
「また、あの人…」
アラバの事である。
セルフィにしても、数々の事件に関わっている。
その中も、安い事件も複雑な事件も経験している。
だからこそ、見えてくるものもある。
「まるで探偵モノの主人公ね」
そんな感想で、湯を手で救うと、浴場のドアが開いた。
「あれらは予感で、人を殺せるから、部類としては違うと思うぞ?」
こんな気分にさせたのは誰の所為だといいたくもなるが、セルフィはいい機会だと思ったので聞いてみた。
「ねえ、姉さん、あの人、一体何者なの?」
「アラバの事か?」
レフィーユの態度には白々しさを感じているので。
「ふん、先の件はあからさまに私に聞かせてる雰囲気があったでしょう?」
言葉でクギを指すのに自然と力が入る。
「私にしても、自分がいろんな事件に関わって来たわ。
でも、あの人が関わって来るのは決まって、複雑な事件よ」
そして、その力の入り方は、真相を知ろうとする緊張でもあるのが、姉だからわかったのらしい。
「さすがに魔法使いと知り合いだというのを理由に『何者』と聞いたわけではなさそうだな」
身体を清めて湯船に入るレフィーユは、向かいに座る。
「だが、魔法使いの知り合いとしか言いようがなくてな」
「…とぼけるのは、良くないんじゃないの?」
「とぼけてなどおらん。
それ故に、色んな厄介事に巻き込まれる」
「だったら、どうしていつも彼なの?
今回に至っては、誘拐事件まで起きているじゃない?
それを事件として取り上げなかったのは、姉さんよ?」
レフィーユは妹と同じしぐさで湯を掬って答えた。
「それは今回の件を、ある程度隠しておかなければならないと判断したからだが?」
「ふん、そんな理由で何度も何度も誘拐されて、そんな理由で片付けられるの?」
確かにそうだなと、レフィーユは肩をすくませたが答えた。
「だが、無傷で帰って来る…」




