第三十二話
「何だと?」
そして、そんな言い訳など、
「はい、私たちはミーアに接触しました。
そこで、隊長、貴女に変身できる事を確認しました」
当然、ヒオトの前では、何の意味もなかった。
「……」
レフィーユは、アラバに視線を鋭く送るのは、無理も無い前置きがあるからである。
「…確か、何もなかったと聞いたのだが?」
「それこそ、『彼』の言いがかりです。
『私たち』は、彼のアルバイト中に隊長の姿で、接触を図るのを『経験』し…。
誠に『遺憾』ではありますけど、『アラバさん』は偽者を見抜き、様々な情報を取得したみたいです」
ヒオトが様々に強調するのは、他の部員がいる事を意識してからだろう。
レフィーユにしても、
「さて、アラバ、どう言い訳するつもりだ?」
睨むというより、予想通りな展開だったらしく、肩をすくめてみせる中、ヒオトはいった。
「彼女は、隊長に変身出来るのですよ。
これは良い証拠です。
まずは重要参考人として、こちらに招くべきです」
毅然とした態度で話すヒオトを見て、レフィーユは簡潔に解釈してアラバに聞いた。
「アラバ、お前は、招くべきでは無いと思ったからこそ黙っておこうとしたのか?」
アラバにしても、軽く追い詰められた感じがしたのか答えるしかなくなる。
「容疑者として『招く』つもりなのでしょう?
レフィーユ・アルマフィになりたい人間なんてどこにでもいると、言い逃れして来るのが目に見えているでしょう?」
「それならどこで手に入れたのか聞きます」
「触れば変身出来る相手に、それこそ幼稚な質問だと思いますが?」
「でしたら、この事件当日のアリバイを聞く権利はあるでしょう?」
「先の取り調べで、黙秘権を行使するような人ですよ。
私は約束は守るべきだと思いますがね?」
それに食いついたのは、レフィーユだった。
「約束?
なるほど、だから、お前は嘘の報告をしたという事か?」
周囲を呆れさせる中、誰もいなくなった部室に、レフィーユと二人きりになった。
そして、じっとアラバを見つめ、聞いてきた。
「アラバ、実際のトコロ、気になる点があるだろう?」
「それは、ありますよ」
二人きりになったからこそ、こんな事を話し出すので、レフィーユはさらに呆れもする。
だが、二人きりだからこそ、話すのだから緊張感があった。
「その前にレフィーユさんは、ミーアさんが、この教室に来た当日のアリバイを話さないと思ってます?」
「まるで先の立場から、逆転したな?
だが、お前も感じていると思うぞ。
話す気は無いだろう。
何故、お前がそんな事を聞いてくるか、それは…」
そして、レフィーユはアラバではなく、ドアの先にいる『誰か』を見ているかのように答えた。
「おそらく、ミーアにはアリバイが無いからだ」
完全に気配が無いのが、誰なのかを知らせていた。




