第三十話
それにはさすがに二人とも、驚いて見せる。
幸い、それは目の前に立っているレフィーユには気づかれなかったので、見計らって離れて話した。
「私はこういう事は、ジョークでも言いませんよ?」
そう言われて、セルフィが周囲を見るのも無理もない。
自分の姉は良く目立つ。
前で周囲の人も『レフィーユだ』と言って写真を撮るモノ、ヒオトにも接している態度、これはいつもの姉だった。
「セルフィ、アラバと何を話している?」
いつものとおりに見てないところで反応も見せる。
「隊長、聞いてください。
やっぱり、あの人、当てずっぽうで…」
途中で、セルフィがヒオトを制した。
「いえ、何でも無いわ。
姉さんこそ、どうしてここにやって来たのよ?」
「私がアラバの警備をする事に、何がおかしい事がある?」
毅然として答えるレフィーユだが、アラバの通信が入った。
「偽者が良く言う台詞ですね」
「アンタこそ、遠目で良くわかるわね。
この場合、貴方の方が、怪しいわよ?」
「装備からして、おかしいと思いませんか?
通信機をどうして付けてないのか、聞いたみたらどうですか?」
「ふん、どうして東方術で判別しないのよ?」
「『東方術を使うと、一日分の消費量だと知らないワケないだろう?』
『そうやすやすと東方術を発動させるのは、周囲を困惑させる事になる。
治安部として、それはやってはならんだろう?』
こんな言い訳が返って来るのが、目に見えてますのでね?」
「……」
セルフィが黙ってしまうのは、先ほどの言い訳が、その通り返って来たからだ。
「私に考えがあります。
そこまで付き合ってもらいますよ?」
そう言って、アラバは店の中に入っていくと、セルフィ達が待たされたのは終わりまでだった。
「すいませんね、レフィーユさん。
お待たせしました」
だが、そこにはセルフィ達の姿はいない。
「いや、これが就業だ、別に構う事は無い。
しかし、セルフィ達には気を使わせてしまったな?」
周囲を伺っていると、アラバもそれに従うようにキョロキョロとしていると、通信が入る。
『未だに信じられないのですが、ホントに偽者なのですか?』
「二人とも、今、どこにいるのですか?」
『今、ヒオトが姉さんの後ろを横切るわ』
軽く振り返ると言うのが早いか、横切って行ったのが見えたので、小声で答えた。
「あれに気づかないのは、さすが偽者ですね」
『誰でも気づかないモノです?』
「気づくように反応したつもりなのですが?」
『やっぱり偽者なの?』
「近づけば近づくほど、見れば見るほどって、感じですね」
『そんなの信じられません』
未だにヒオトはアラバを疑っていたが、それが所定の位置に付いた合図らしい。
「レフィーユさん、ちょっと寄り道をしませんか?」
「アラバ、これでも任務中だ。
私はお前を学園に連れ帰る義務があるのだがな」
『さすが隊長です』とヒオトの意気を感じ取れたが、
「せっかく二人きりなのですよ?」
アラバは軽くそう言って、
「もしかして、偽者じゃないのですか?」
皮肉を言うので、レフィーユは答えた。
「私を疑っているのか?」
「それはどちらとでも?」
「仕方ないな…」
そう言って、手はず通り、公園に足を運ぶ事になり。
「幸い、夕暮れ時もあって人はいませんね…」
周囲に誰もいない事を二人に知らせてから聞いてみた。
「それで貴方は、誰なのですか?」
とても単刀直入過ぎたのか、目の前のレフィーユは言う。
「言っている意味が、わからんな?」
「どう見ても、偽者じゃないですか?」
「……」
「本来なら、ここで言い返すのですがね?」
『ほら、やっぱり当てずっぽうだったんじゃ…』
『黙ってて…』
アラバはゆっくり距離をとる。
レフィーユは、近づこうとするが、
「もう駄目ですね。
完全に偽者だとわかりましたよ」
「何を言っている!?」
当然、苛つく彼女を言葉で制した。
「この際、言っておきますが、偽者を見分けるコツを一つ教えておきますね」
周囲が聞く姿勢になるのを感じ取れたので、アラバは偽者に言う。
「このグダグダ感ですよ」




