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第二十九話


 そして、次の日。


 「あのう、いい加減、機嫌を直してもらえないでしょうか?」


 重苦しい空気の中で、アラバはようやく発言するが、ヒオトは冷たい。


 「言っている意味がわかりませんね。


 貴方こそ、今はアルバイトに集中するべきではありませんか?」


 それに何の言い返しも出来ないのは、ここに彼女がいないからもある。


 「お弁当は、温めましょうか?


 はい、では、860円になります」


 何故なら、彼は、アルバイト中であり。


 「…はい、おつりは140円ですね」


 「よく女性の身体を触った手を、惜しげも無くさらすものですね?」


 「ありがとうございましたー」


 こんな小言を通信機越しに聞きながら、コンビニバイトの客の対応をアラバはこなしているので、彼がどんな心境なのかは、あえて書かないでおこう。


 「ふん、アンタも大変でね。


 でも今は学園生徒は全員、警戒態勢にあるのだからわかってほしいわね?」


 「たとえアルバイトの身分でも、仕事は急に休めませんからね。


 それはご迷惑を掛けている事くらいは知ってますよ」


 治安が下がったこの時代、警戒態勢になると、アルバイトをしている学園生徒は治安部の警護が付く。


 だが『警護』と言っても、実際はセルフィとヒオトはアラバの働いているコンビニの外で待機しており、帰りを一緒に行動する事なのだが…。


 「これを一般的に『監視』と言いませんかね?」


 アラバは、付けられた通信機に向けて不満を漏らす。


 ちなみにこの通信機きのうは、緊急時以外は切っても構わなく、現在、会話内容はダダ漏れだった。


 「随分と小さな事を、気にする人ですね?


 通信を切らないのは決まりですよ」


 先の前置きがあって、このヒオトの発言である。


 「……」


 アラバは言い返したい気持ちをぐっとこらえたのは、前回の事があったからだろうが。


 不満であるのは、次を見ていただきたい。


 それは商品を補充のために『よいしょっと』と、力を入れる独特の発言をするのだが、それに対して、


 「非力ですね、もう少し筋力を付けたらどうですか?」


 など、


 「また、隊長を触った手でおつりを出しますか、自慢ですか?」


 事あることにヒオトの小言、耐えられない指名手配犯である。 


 「私は右利きですよ!!」


 この通信内容は外に届いてないのだから、客を驚かせる結果になっていた。


 アラバは取り繕うように、通信を入れる。


「いつもの人は、どうしたのですか?」


 「どういう事ですか?」


 「本来なら、貴女達じゃなくて、今まで担当していた人が警護に当たるのが普通でしょう?


 つまり白鳳学園生徒の治安部の人が、私の警護に当たるはずだったのですが?」


 その指摘に、よけいにヒオトは気分を害する。


 「この期に及んで、隊長をご要望ですか、良いご身分ですね?」


 ちなみに本来、アラバの警護に当たるのは、レフィーユなのだったりする。


 「こっちだって、自慢だと思ってませんよ。


 ですが魔法使いさんに、見分け方を教わったのですから、もう、レフィーユさんは出てきても良いのでしょう?」


 「それこそ公私混同ですね。


 だからこそ、私たちが率先したのでしょう?」


 ヒオトがいかに率先したのか、アラバにしても軽々と想像出来てしまうので、ため息をついて答えた。


 「気になる事があるのですよ」


 それをセルフィが反応をして見せた。


 「どういう事?」


 「結局、見分ける事が出来るのが、私だけだというワケですからね」


 「また、自慢ですか?」


 ヒオトが相変わらず不満を漏らしていたが、アラバがコンビニから出て来た。


 思わず二人は目を合ってしまい黙ってしまうので、アラバはゴミ箱の整理を始めて答えた。


 「貴女もそうですが、私はその組織にとって、私は邪魔なだけでしょう?」


 「パラサイターズ側が、何か起こしてくるのがそろそろだと言いたいの?」


 すると、


 「何が『そろそろ』だと言いたい?」


 背後から突然、セルフィは声を掛けられ、振り向いて驚いた。


 「ね、姉さん!?」


 「隊長、どうして?」


 その騒然さに、アラバもそちらを見ている中、レフィーユは答えた。


 「ふっ、もともと私がアラバの警備だったのだから、おかしい事でもないだろう?」


 「姉さん、いくら判別方法があるからって、迂闊じゃ無いの?」


 そう言いながら、セルフィは肩をすくませていたが、自分の姉の性格を知っているのか、これ以上追求はしない事にしていた。


 ただ、


 「セルフィさん、気をつけてくださいね」


 アラバだけが、警戒を見せていた。


 「それ、偽者ですよ?」

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