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第二十八話

 「それで座ってみて何ですが、胡散臭さが、蔓延しているのですが?」


 アラバは椅子に座り、手かせをはめられ、さらにそこにある鉄板の上に手のひらを密着させてと指示を出されたので、言われた通りに手を置いていると、セルフィが答えた。


 「アンタの気持ちは分かるわよ。


 でも、予防策は『いくらでも』『考えつく限り』が『ベスト』ではないの?」


 機器のついたかぶり物を用意されたが、先にアラバは手をふさいでいたので、ヒオトは苛立ちながらも取り付ける。


 「まあ、こちらとしては治安部としての対応と受け取ってもらいたいわね、観念しなさい」


 アラバのこめかみに機器を付ける手が心なしか強めだったが、準備が整ったらしく。


 「では、隊長、始めます」


 そう言って、レフィーユに了承を得るのはクセなのだろう。


 レフィーユは頷いていたが。


 「まるで電気椅子だな?」


 呆れているのを隠せないのは、この嘘発見器が信用からだろう。


 アラバにしてもそれは同じなのか、体感的にスイッチが入るのを感じ。


 「びびびびび…」


 ブルブルと震えだした。


 「試してみたのですから、ふざけないでください」


 そう言って、ヒオトは質問を始めた。


 「まず、どんな質問にも、『はい』と答えてください」


 「はい」


 「貴方はアラバさんですか?」


 「はい」


 アラバの横目でも、自分を計ってるらしい計器が見て取れた。


 「計器に変化は無いな」


 「隊長、これからです」


 「あなたは男ですか?」


 「はい」


 変化はない。


 だが、次の質問だった。


 「あなたは社会人ですか?」


 そんな嘘の質問に、


 「はい」


 嘘で答える。


 すると計器は変化を見せた。


 そして、次の質問も嘘の質問だった。


 計器は反応を見せる。


 「反応があったな、これは嘘をついていると言う事だな?」


 「計器も進化しているという事です。


 では、アラバさん、次の質問は『いいえ』と答えてください」


 「いいえ」


 妙な間があった。


 「…ふざけているのか、どうかわかりませんが、今は良いです」


 ヒオトの十分な威圧が、アラバにのし掛かる。


 そして、質問内容は続く。


 「アラバさん、貴方は女ですか?」


 「いいえ」


 計器は反応無し。


 「今日、朝食を取りましたか?」


 「いいえ」


 計器が反応を見せないので、レフィーユは不満そうに言う。


 「不健康だな、作るのは面倒にしても食堂で用意してくれるのだから、甘えたらどうだ?」


 「隊長、それは頷けますね。


 あなた治安部は体力が基本だと知らないのですか?」


 「私は治安部じゃありませんよ」


 レフィーユが少し態度がおかしかった。


 これをヒオトは不思議そうに思っていたが、アラバはこうも言う。


 「もしかして『いいえ』と答えていれば、私は治安部に引き込まれてましたか?」


 「ふっ、チャンスを逃した」


 その態度に、ヒオトは苛立って答える。


 「ふざけないでください!!


 次の質問です。


 ここから出来る限り、連続で答えてください。


 貴方は今日、トイレに行きましたか?」


 「いいえ」


 「……?」


 「いいえ」


 二つとも正しい解答の出来る質問であったのだが、次の質問だった。


 「貴方は、漆黒の魔導士ですか?」


 数コンマ、レフィーユは息を呑んだ。


 「いいえ」


 アラバはそう言って。


 レフィーユの中では嫌な間が広がっていたのだが。


 「……」


 計器には変化は無かった。


 レフィーユは思わずアラバを見るが、彼はヒオトにこう切り出した。


 「そろそろ、本題に入ってもらえませんかね?」


 深夜に差し掛かるかも知れないという事もあるので、この言い分は通った。


 だが、様々な質問を繰り返す。


 その際に彼女にも身に覚えのある質問もあったのだが、


 「あてにならないな」 

   

 これがレフィーユの結論だった。

 

 「まったく、その通りですね。


 そこ、もう少し、踏み込んだ質問をしてください」


 ヒオトはイワトとガトウを叱りつけていた。


 彼女にしても、こうしてアラバの秘密を暴きに掛かっていたのだろう。


 「やっぱりそういう事も含めてましたか、さすがにここまで拘束されるのは、私も怒りますよ?」


 だが、今回アラバはむかつき始めていた。


 「アラバ、そうは言っても、お前が偽者か調べる事が大事なワケであってな」


 ガトウはそう言ったのが、


 「そういえば、ガトウさん」


 災いだった。


 「何だ?」


 「最近、付き合ってる、幼なじみ。


 泣かしましたよね?」


 「な、何だと?」


 「いやあ、原因は確か…。


 ご両親に連絡していたのを、女の人と話していると誤解されたためでしたっけ?


 それ、私に相談しましたよね?


 『アレの、泣きっ面だけは見たくないんだ』とか言ってましたよね?」


 ガトウが顔が見る見る赤くなる。


 「な、何でそれを今、言う?」


 沸騰しそうな顔の男に、アラバはニコリと答える。 


 「いえ、一応『知っている事が本物かどうか見分ける手段』ですからね?」


 「ふっ、計器には異常が無い、事実か?」


 「これも嘘発見器のあり方だと思うのですよ」


 すると興味深くなるのは、ここにいるレフィーユだけだったのだろうか?


 「アラバ、他にはないのか?」


 レフィーユの問いに明らかに全員が耳を傾け出すのを感じていた。


 こうなるとさらににこやかに止まらない。


 「そういえばサイトさん?」


 「オ、オレか?」


 「初等部の時、最後の学年になるまで告白し続けていたそうですね?」


 曖昧な発言だったが、サイトは表情を変えた。


 「何で、知ってねや!!」


 「確か、一年の時の担任の先生でしたっけ?


 初等部卒業の時に号泣したというのは、もはや伝説…」


 「黙れぃや!!」


 「ぐおおおお!!」


 サイトのパンチが腹にめり込んだ。


 「サイト、手伝うぞ!!」


 ガトウも口を塞ぎに掛かるが、それは中々上手くは出来ない。


 「最近は、確かお父さんから包丁を受け取ったらしいですね?」


 アラバの暴走は止まらなかった。


 「何で知ってんね、やめろや!!」


 「料亭の息子の貴方、泣いてました?」


 「もう一丁、パンチ!!」


 「ぎゃあああ!!」


 誰も好きで、秘密を暴かれたくないだろう。


 「最っ低ですね、この人?」


 せい惨な光景が、広がっていた。


 「レフィーユさん、この人、本物です。


 これ以上、秘密暴露はつらいっス」


 この後、体罰に近いダメージを負いながらも様々な秘密暴露をするアラバを見て、レフィーユは答えた。


 「こちらとしては聞き入っていたかったが、まあ、仕方がないだろう?」


 撤収を促して、全員を下がらせた。


 「あの外してもらえないのですか?」


 そして、二人きりになったので、


 「あんな事をしでかしておいて、良く言えるモノだ」


 レフィーユは口を開いた。


 「しかし、ばれなくて幸いだったな?」


 「危なかったですよ、実際、結構、当たってましたし…」


 「確かに、どうして反応しなかった?」


 「これですよ?」


 アラバは手の平を何とか見せて、集中させる。


 「ふむ、魔力がEランクとはよく言ったモノだな?」


 「(コレ)を装置の上にはべらせて、装置を誤魔化す事が出来たのですよ」


 「なるほど脈拍などの計器は、密着させてこそ効果がある…」


 ヘルメットを眺めだすので、アラバの髪の一部が不規則に乱れた。


 彼が何者かそれを十分に感じたレフィーユは…。


 「とうっ!!!」


 飛び上がって思い切り開ききった右手の上に、尻から圧し掛かった。


 「痛ったあ!!!」


 「なら、改めて、質問しよう、お前は漆黒の魔導士だ?」


 「いいえ、いいえ、というより痛いです!!」


 突然の行動に、アラバは先の『いいえ』を連呼し、計器がびんびんと反応する。


 「ふむ、これで闇を発生させることが出来ないな?」


 「何するんですか、レフィーユさん!?」


 「私にしても、一つ聞いておきたい事があるからだ…」


 強めに押し付けられ、


 「では、次の質問だ」


 レフィーユは改める様に聞いた。


 「どうして、私の偽者がわかった?」


 「ど、どうしてと言われましてもね」


 「答えてほしいものだな?」


 「どうして?」


 「不安だからだ」


 レフィーユは不満とばかりか、バランスを取るためにアラバの肩に手を付いて聞いた。


 「私はもし、お前の偽者が現れたら、見分ける事が出来るか?


 そう聞かれたら、不安だ」


 手から彼女の脱力を感じていた。


 「答える事は出来ない。


 だからこそ、聞いておきたい」


 その後、質問を始めた。


 『仕草か?』


 『クセか?』


 『言葉使いか?』


 『服装か?』


 これ以上に色々と聞かれたが、アラバは、


 「いいえ」


 全部、そう答えた。


 そして、計器は動く事は無かった。


 「じゃあ、どうやってお前は見抜いた?」


 『ぐりっ』とされた発言が、彼女の心境を表すには十分だったが、アラバは頷いて答えた。


 「大丈夫ですよ。レフィーユさんでしたら」


 「気楽に言ってくれるモノだな」


 「多分、言ってもわからないと思いますからね。


 ですから『見れば分かる』という言い方しか出来ないのでしてね」


 「私にも出来るというのか?」


 「出来ますよ」


 アラバははっきり答え。


 「……」


 ヒオトとセルフィに見られていた。


 男の手の上に女が座っている光景を、女性陣はどう見るだろう?


 「納得いきませーん!!」



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