第二十六話
「確かに信用は出来ないのは、察するわ。
でも、これが、組織『パラサイターズ』としての発言として受け取ってもらっても構わないわ」
『組織』という言葉が、レフィーユを黙らせてしまう。
「それは不自然な発言ですね?」
そこで話したのは、アラバだった。
「あら、この手の事件は私たちの耳には簡単に入るのよ?
だから私は、関係ないと組織としての発言をした。
それが何の不自然?」
「私も『漆黒の魔導士を利用した者、模倣した者を許さない』というルールを持ってますからね。
そのため不思議なモノで、模倣した者の事件とか簡単に手に入るのを知ってます。
当然、あなた達の様な同じ経験をした人たちも知ってますよ」
「それなら、おかしい事は無いと思うわ」
「では、一番の対処法を知ってます?」
知らないふりをしているのを感じさせながら、
「それは何かしら?」
カレンがゆったりと聞いてきた。
「手を出さない事ですよ」
それにはレフィーユが頷く。
「確かにそれが関与が無い事を示すには、十分な行動だな。
それで今回の事件は、模倣犯の仕業と出来る。
だが、我々の前に本物の組織『パラサイターズ』が現れた」
「それこそ『関与してますよ』と言った方が疑われませんよ?」
カレンはゆっくりと二人を眺めた。
「じゃあ、貴方と同じね。
魔法使いさん」
アラバを見て答えた。
「貴方も、自分で不自然な発言を言っているのよ。
貴方は『手を出さない』というのを、一番の手段だと言ったけど…。
貴方は様々な事件に関与している」
「……」
「当然、関与してないと事件もあったかも知れない。
けど、貴方は模倣していようが、いまいが…。
手を出している…。
貴方と一緒ではないかしら?」
アラバは黙る。
「アラバとお前達を一緒にするな」
そんな中、レフィーユは答えた。
「この男は、確かに色んな事件に関わった。
だが、お前達と、この男、どっちを信用する?
私はこの男を信用したいよ」
カレンが、微笑んで答える。
「当然の感想ね。
だって貴女は…」
「違う」
「……」
「お前の発言、お前達の発言は全部『組織として』の発言だ。
体の良い言い訳を言い続けて、逃げる隠れ蓑を盾にしているだけにすぎない。
だが、どんな場面、どんな事件でも…。
逃げる事はなかったよ。
お前達にそんな覚悟があるとは、思えんな」
周囲が有るにしても、カレンを中心に空気が凍るのがわかったが。
「良い反応ね?」
カレンは睨みにも似た、態度だったが、外見に値する柔らかさで答えた。
「どういう事だろうか?」
それにはレフィーユも、調子を崩されたのか態度を変えざるおえなかった。
「確かに『私たち』というのは、無礼に値したわね。
でも、この態度を変える事はないわよ」
レフィーユは、肩をすくめるが。
「ただ…」
カレンは自分の顔の前で手を組む。
「言い方を変えさせてもらおうかしら…」
それだけだった。
それだけがレフィーユを凍り付かせた。
「『私たち』は見ているのよ」
普段、臆する事が無いレフィーユが、
「…何を、見ている?」
辛うじて言葉を発したがわかる。
アラバも、この時点で絶句して、カレンを警戒で睨んでいた。
無理も無い。
カレンはすでに、白髪だった。
ここまでゆっくりと『擬態』を解いたのだろう。
黒い髪は、全部が白髪になり。
モデルのような、カレンの顔はもうそこにはなく。
年を取った女性。
『かつて世間を賑わせた組織』というのは、そういう事だと思い知らされたといえば…。
「姿を変えることが出来るというのわね…」
言い方は良いかもしれない。
だが、それ以上に、二人は黙らせる彼女の表情がそこにあった。
「貴方達が思っている以上に辛いことなのよ」
『姿を変える事が出来る』というのは、そういう事だというのを思い知らされる。
「人に、何になれなんて、当たり前、
人の代わりにはなれないのは誰もが知っている常識なのに、全員が全員、それを望む苦悩。
それは、生き地獄よ?」
老婆のカレンの眼球の無い目が、自分たちを見ていた。
「これは自分がやった証。
私は見るモノ全て、信じられなくなったわ」
自分たちを脅すには十分だった。
「貴方達がどう頑張るのか、見せてもらうわ」




