第二十五話
「アラバ…」
「どうしました?」
「少し落ち着いたらどうだ?」
レフィーユはアラバの様子を見て、笑みをこぼす。
アラバは察してくださいとばかりに、周囲を見回すのも無理もない。
「話は承っております」
と、そのオーナーに連れられてやって来たのは、レストランでだった。
レフィーユもではあるが、自分の服装が学生服だった事もある。
学生が学生服を着る。
それは身分相応の服装だろう。
「ですがね、そのレストランに『高級』と名が付いていれば話は別ですよ」
クラシカルな音楽を生演奏で奏でられるような食事場は、フォーマルな服装が普通だというのが、アラバにしても認識しており、自分たちは明らかに浮いていた。
レフィーユは演奏に合わせて、歌う歌手を見ながら肩をすくめる。
「だったら、先のオーナーの案内に従っていれば良かったではないか?」
「『判別方法』をわかっているとはいえ、私は不用心じゃありませんよ」
そう言いながら、食前酒代わりにジュースを差し出されていたが、レフィーユは一切、口にしてないのを知っているので口答えする。
「それに、警戒は解いてないのはお互い様でしょう」
「だが、確かに敵陣であるのは間違いない。
しかし、一般の客もいる事だ。
そこまで騒ぎを起こす気もないだろうがな」
その意見に、アラバは静かに答えた。
「その一般の客、敵だと思いますよ?」
その一言に、レフィーユは視線を細める。
「ジョークにしては立ちの悪いぞ?」
「人間、いくら食事の場であっても、周囲に興味を持たないというのは異常ですよ」
「なるほど、学生服の二人がこんなところで食事をとれば、嫌でも目立つ。
そうすると、あの歌手もか?」
アラバは言われて改めて、その歌姫を見る。
その時、ちょうど曲が終わる頃だった。
だが、目があったのかどうかだけは、次の曲でわかった。
それはデュエットソングだった。
レフィーユも知っているほどの、よくあるラブソング。
ただデュエットというのに、そこには彼女しかおらず。
そこにあったポールを傾れ掛かると、そこを境界線として男性に姿が変わったのだ。
「……」
先に『全員が敵』と言ったのが、改めて実感出来る感覚が二人に感じ取れた。
歌は続いている。
ラブソングが、独特の感情の高まりに差し掛かる、
歌いながら、くるくるとポールを右往、左往とする。
それだけで彼女は、この年に話題になった男女に変わり、それを歌う。
おかげで『この人』が男か女であるかわからなくなるが。
嫌でも歌は終わる。
その拍手の中、ゆっくりと近づいてきた。
「お初にお目に掛かるわ。
レフィーユ・アルマフィ」
あらかじめ空席だった、その席に座る、その女性にアラバは少し身じろぎを見せる。
「私は名前はカレン。
パラサイターズのボスよ」
それほど顔立ちの持ち主が、目の前に二人も座っているのだからこそだった。
「もしかして『KALEN』とでも言いたいのか?
かつて世間を賑わせた、頭目と同じ名前だがどういう事だ?」
「さすが、噂通りの女性ね。
そちらはどちらでも構わないわよ。
そして、魔法使いさん、案内、ありがとうね。
ああ、アラバさんと言った方が良いかしら?」
そう言われて、ようやくアラバは平静を取り戻したように対応する。
「あ、ああ、別にどちらでも…。
こちらとしても、願っても無い機会ですからね」
「どおりで素直に応じたワケね」
微笑みながらだが、アラバは少し態度悪く聞いてきた。
「できれば、前に車両で会った時の姿で変えてもらえれば、ありがたいのですが?」
この時、レフィーユはアラバを見ていた。
それは、ほんの一瞬だった。
「あら、こっちの方が話安い?」
そして、レフィーユが驚く表情を予測していたのだろうか、カレンは笑いながら『別人』になっていた。
「なるほど、予防策を教えても無駄だと言いたいらしいな?」
「方法はいくらでもあるという事よ。
そして、これが自己紹介の代わり。
さて、本題に入りましょう。
あまり時間を取るのは、良くないでしょう?」
ウェイターから、注文を受けるが、カレンは断りを入れて遠ざける。
そして、第一声、告げられた事に、当然だろうか、睨むような視線で聞いてきた。
「すまないが、言っている意味がわからないな」
「そうとしか、言いようが無いのが、私たち『パラサイターズ』の声明よ。
私たちは一切、関与していない」
アラバもさすがに、カレンに聞いた。
「現に事件が、一日で数十件も起きているのですよ。
それは組織的な犯行だと見てもおかしくありませんよ?」




