第二十四話
そうして、その夜、レフィーユは一人歩いていた。
帰宅ラッシュも過ぎた時間、市内とはいえ女性が一人歩くのは、危険な時間帯であるのは変わりはない。
男相手に戦闘経験のある彼女にしても、緊張は隠せないでいるのは仕方ない事だろう。
「隊長、配備完了しました」
周囲を伺っている彼女に、ヒオトからの通信を入る。
それを咳払いで誤魔化して、レフィーユは返答する。
「それでは指定の場所、その公園を目指す事としよう」
「空に、私もいるわ。
今のところ、尾行はないみたいね」
セルフィは上空、ヒオトは遠隔から、街頭に設置されてある監視カメラや、レフィーユに身につけさせたカメラなどでその様子を見ていた。
「映像からも、尾行はありません」
とはいえ、指定された人物がレフィーユであるため、市内では彼女は人目に付き、そのため尾行の有無は難航をきわめていたが、そう答えているのだろうと感じ取れたが彼女は不機嫌に答えた。
「気に入らんな。
魔法使いが言うには、ここから公園を目指せというワケだな?」
「そうですね、市内を外れ、目指すのは近くにある公園だと。
当然、公園にも配備を完了してます」
「……」
するとひとつ間が開いた程度ではあるが、レフィーユが大きくため息をついたのが感じ取れた。
「ヒオト、確認するようで悪いが…。
要求は『その指定の場所に来い』というのだろう?」
「はい、時間帯を計ったが故の行動だと思われますが…」
ヒオトも不穏な空気を感じずにはいられないのだろう。
「普通は人質を取り、そんな配備も予想された場所を指定するというのは、身代金なんぞ要求するのが普通なのだが、相手は何も要求してないのは、異常だと思わないか?」
「それはわかっています。
『アラバさんを預かりました。
返してほしければ、指定の場所に来てください』
確かに、要求はそれだけでした」
そこでヒオトはある一定の応答があって答える。
「その公園には、人は見受けられますが、怪しい人物はいないそうです」
「つまり目的のアラバもいないという事だな」
「罠でしょうか?」
タイミングが悪いのか、目前に公園が迫って来てそういう事を言うので、少し苛立ってレフィーユは答えた。
「受けざるおえない状況というのは、変わりは無いだろう。
あっちは人質がいる。
それにパラサイターズ、自らが偽者を見分ける方法を、ご教授したのだから。
魔法使いはそういうトコロから、『礼儀正しさ』を感じ取ったのだろう。
答えてやらねばならんだろう?」
「ですが、あの程度で信用しろというのは、難しい話ですよ」
あの時、魔法使いはこう言ったのだった、
『東方術を披露すれば、東方術者は見分ける事が出来るので、あまり問題ない。
かつて騒がれたパラサイターズの事件は、コレが予防策になったそうです』
それはあまりにも単純な見分け方なので、周囲はレフィーユの見分け方にやっきになっている最中に、それは拍子抜けするほどだった。
だからこそ、ヒオト、いや、周囲も不穏な空気を隠せないでいたが…。
レフィーユは曲がり角のさしかかったあたりで、足を止めた。
そして、芝居掛かったような素振りで話しかけた。
「ふっ、こういう時のための『催し物』だったというのに、誰も注目できないとは、皮肉な話だな?」
そこに立っていたのは、闇の法衣をまとった男だった。
遠巻きに見ていた通行人は、一変して小走りで通り過ぎて行くのを見て、魔法使い、アラバはレフィーユに話しかける。
「歩きながらで申し訳無いですが、カメラ、外してもらえます?」
「相変わらずの警戒心が強い事だな?」
「さすがにここまでは、予想出来てますからね。
この袋に入れておいてください」
どこにでもあるポリ袋にカメラを入れさせていると、彼女は動作で通信機を見せる。
「あ、それもお願いしますね?」
「通信機も、全く、勘の良いことだな」
白々しい会話、そんな事は周囲は知るよしも無い。
「後は空だけだが、どうする?」
まとめた機材を、回収しやすい位置に置いているアラバに、セルフィの存在を伝えるとアラバは曲がり角の細道にあるマンホールを指さした。
「生活関係ではなく、電力関係の地下なので、臭いはしませんよ」
「全く…。
私を酸欠にさせる気か?」
セルフィが異変を察知して、地上に降りたつが…。
「そして、まんまと逃げ切れるとはな。
逆に治安部として心配になるな」
誰もいないであろう場所を想像しながら、走るアラバを追っていた。
「それで、いつまで走り続ける?」
「もう少しです。
相手としては、ゆっくりとした場所で話がしたいそうです」
そして、レフィーユがたどり着いた場所は、意外な場所だった。
「最近出来たグランドホテルではないか?」
すでにアラバも法衣を解いているので、通り過ぎる人は、何も警戒することは無い。
「待ってるみたいですよ?」
「ここでか?」
高級感のある場所だったので、アラバは少し入る事に抵抗があったが…。
「レフィーユ・アルマフィさんですね?」
正面玄関から、自分たちをどう見つけたのか、オーナーらしい人物が出迎えてきた。




