第二十三話
「あ…!!」
思わぬアクシデントで、ヒオトが強盗団の2名を取り逃がしてしまう。
漆黒の魔導士とレフィーユの両脇を走り抜けようとするが、レフィーユは気づいているのか気づいてないのかわからなかった。
しかし、目の前の黒衣の男は、その2名にとって味方と思ったのか…。
「う、うわあああ!!」
放たれたの闇に捕まって、地面に叩き付けられた。
それを見て、レフィーユは頷いて答えた。
「ふむ、本物の様だな。
正直な話、安心したよ」
「安心ですか?」
「ふっ、みんなに言ってなかったが、私はアラバが偽者という可能性も考えていたのでな」
「なるほど、もともと偽者だからこそ、あの時、偽者の正体を見抜けた。
と、考えていたのですか?」
「心の片隅ではな…。
だが、こういう要因を考えるのも、治安部のリーダーの考え方だ」
軽く取り囲まれ出すので、レフィーユは肩をすくませ、
「ところで、アラバをさらったというが、どういう事だ?」
自分たちの会話をやめた。
アラバも戦況を見極めた上で、首を振った。
「それは、私にはわかりませんよ。
私は、ただのメッセンジャーとして、貴女の前に現れただけなのですからね?」
「随分な小役を引き受けたモノだな?」
「信用できるかどうかは、わからないですがね。
パラサイターズのボスが、直接、やって来たので引き受けただけですよ」
礼儀正しく接して来た事も彼女に伝えていると、
「そうなると要求は、当然…」
「貴女に、来てもらいたいという事です」
すると、それをちょうど聞いたのかヒオトが言う。
「隊長、聞く必要はありません。
明らかに二人の罠じゃないですか?」
「私は、今回関与してませんよ?」
「同じ事です。
組織にとって、貴方にとって、隊長は敵じゃないですか?
だから、貴方は隊長を見抜く、あの人をさらったのでしょう?」
「だから、私は実行犯じゃありませんよ」
「同じ事です」
こんな言い合いをして、見かねたのか、
「そもそも、今回は私のミスだ」
レフィーユはそう区切る。
「そりゃそうでしょうね。
貴女が、後方においた所為で、彼はさらわれる事に対応が出来なかったのですからね?」
「それは大変な事をしてしまったな」
「私も彼を知らないというワケではないのですが、さすがに可哀想だと思いましたよ」
「治安部とは違い、抵抗も出来ないだろうな」
「離れていたから、声も届かなかったのでしょう」
「「ああ、哀れだ、哀れだ」」
ヒオトの心境はコレで表される。
「むん!!」
良く剣道で『突き』をしてはならないと、聞いた事がないだろうか?
それである。
しかも、感情任せなので、付加能力の衝撃波もおまけ付きだった。
避けた肩をかすめ、建物の二階の窓ガラスが割れる。
「ヒオト、やめろ」
レフィーユは言葉で制しても、ヒオトは止まる事が無い。
「それで隊長を引き渡せとでも言うのですか、そんな見え透いた魂胆に誰が乗るというのですか?」
「何もいつも事だと思うのですがね?」
ヒオトは、攻撃を数度受けたのを見て答えた。
「ですが、今回は危険だというのは、貴方は知っていてそんな事を言っているのでしょう。
隊長がいない間、白鳳学園にパラサイターズ、偽者の集団を送り込まれたら防ぎようがありませんからね」
アラバは一瞬、レフィーユを見る。
ヒオトも同時に、隊長を見ていた。
その瞬間、闇がヒオトの全身に絡みついて組み伏せた。
「なるほど、彼は隊長を見抜けるから、ようやく外出出来るようになったというのに、そんな私の魂胆で台無しにされてたまりますかと言う事ですか?」
「そうだな、このままでは私は外出も出来なくなるという事だが?」
レフィーユは頷いて答える。
すると、魔法使いは身にまとった黒衣を払って、ヒオトを解放させて見せる。
「では、こう言えば、貴女達は信用してくれますかね?」
ボイスチェンジャーを使った様な濁った声だが、あまりにも考え込んだ態度なので、レフィーユだけでなく周囲も静かになっていた。




