第十九話
「そうッス、そうッス。
町のはずれにあるヤツです。
俺も確かに名前は言わなかったですが、そこで働いている事しか知らないですよ」
明らかに体格の違う相手に敬意を払う、ハマダの態度にヒオトは、これも聞けるだろうと思い、気を許しながら話しかけた。
「では、その金物屋の住所を教えてもらえないですか?」
すると態度を一変させ、こうはっきり答えた。
「断る,、最初にも言ったが、どうして治安部なんぞに協力しなけりゃならん」
「!?」
ヒオトの絶句が、やりとりの区切りとハマダは思ったのだろう。
「まあ、アラバさんには悪いがここまでだな?」
アラバは頷いて、会釈しながら答えた。
「その様ですね。
まあ、時間を頂いてありがとうございました」
そうして、
「納得いきません」
その帰路にて、何度、ヒオトのこの言葉を聞いただろう。
「話しかける相手が間違ってます。
貴方と私たちでは、態度が違うじゃありませんか?」
「ヒオト、あちら側からしてみれば、この人には恩義があって、私たちには何の義理もないから、あんな対応をとったのでしょう?」
見かねたセルフィが、ヒオトを制しに掛かるが、彼女はあきれてみせる。
「そうは言いますが…。
情報を提供するなら、相手を選ぶのが、皆を統治するボスとしての役割だと思いませんか?」
「考えがあったから、ボスだったから、貴女方には提供出来なかったのでしょう?」
「どういう事ですか?」
ヒオトは苛立ち混じりに聞いてくる。
「ハマダさんからね、前に聞いた事があるのですが、前科持ち、イエローテープというのは触れてはならない相手でもあるそうなんですよ」
「それは自業自得というのでは?」
「だからと言って、疑いがあるから、前にもやったからという調べるのは理由にはならないでしょう?
世の中には、半殺しのような目にあって、犯罪だってする人もいるのですよ?」
「ふん、アンタ、まるで彼女の事を知っているような口ぶりね?」
「いえ、全然、さっきも言った通り、直接会った事も話もした事もありませんよ。
ですが、調べるべきなら、その辺を調べるべきだったのでは?
ハマダさんの態度は、そういう意味もあったのでしょう」
ヒオトは黙っていれば、かわいい部類に入るそんな感じである。
「だったら、それを言えば…」
「それを言って、貴女達が納得できるとは思えないですがね。
そんな態度を貴女達に見せてみなさい。
どこまで絡めとられるのか想像も付きませんよ?」
「絡めとられる…。
それじゃ、まるで私たちが信用されてないみたいじゃないですか!?」
水に油を注がれたかのように、ヒオトはカッとなるが、アラバは平然として答えた。
「実際その通りでしょう。
簡単に嘘を付くような人を、軽々と信用すると思いますか?」
普段の会話なら、『どこが?』と言い返そうとするが、ヒオトはアラバの態度に息を呑んでいた。
「そのミーアさんの事、住所だけじゃなく、働いてる金物屋の住所までとっくに調べてるのでしょう?」
「それは…」
「どうなんですか、実際は?」
ヒオトはたちまち黙るので、セルフィが答えた。
「調べているわ。
でもどうして、アンタがそれを知っているの?」
「こちらとしては、あくまで世間での噂ですよ。
ですが、何故かこの手の噂は、信憑性は高いでしょう?」
セルフィは『ふん』と頷きを見せるので、アラバはヒオトに聞いてみた。
「それなのに、どうして『教えてくれませんか?』と尋ねたのか?
ハマダさんにして見れば、とても白々しかったのでしょう。
ボスだからこそ、仲間は守る義務がある」
「……」
治安部と部外者、アラバは、そんな線引きを感じながら答えた。
「それはそれで、ボスらしい態度だと思いますがね」
自分の部屋まで送ってもらう間に、言い返す事が出来なくなったヒオトの代わりにセルフィは聞いて聞いていた。
「じゃあ、アンタは今回の取調べをどう感じたの?」
「あの人は守ろうとしたのなら、どうしてなのか?
私はハマダさんの、その辺は信用してますよ」
「ふん、大した仲間意識ね」
「ですが信用なんて、そんなモンでしょう?」
送ってもらった事に、軽く礼を言ってアラバはドアに手を掛けたのだが、その動きが止まったのがセルフィは気になった。
「どうしたのよ?」
「…セルフィさん。
カギが開いているのですが、また立ち入り検査しました?」
「どうして何度もしなければなんないのよ?」
態度でやってない事がわかったが、それがアラバの表情を濁らせる。
「誰かいるの?」
セルフィにしても、アラバの態度がふざけてない事はわかったので、少し緊張する。
「電気付いてますよ?」
ヒオトは対照的に、
「自意識過剰なだけです。
うっかり電気やカギをかけ忘れたというのもあるでしょう」
そんな治安部に、指名手配犯は、
「ちょっとなんて目で見てるんですか?
ふざけただけじゃないですか?」
目で嫌悪を表すので、ヒオトはようやく警戒を始めた。
だが、それは無駄に終わった。
「まったく、お前は自分の部屋で何を立ち往生している?」
何故か自分の部屋から、レフィーユが出てきたのだ。
セルフィは驚きはしないが、ヒオトは違った。
「納得いきません!!」




