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第十八話

 「なるほどな」


 少し状況をつかめないボスはキョロキョロして、事情を聞き、気だるそうにセルフィ達に言う。


 「じゃあ、治安部。


 結論から言おう。


 答えは『ノー』だ」


 「どういう事ですか?」


 「お前らに答える必要は無いというこった」


 ヒオトは苛立つのが隠せないでいたが、ボスはあっさりと答えた。


 「多分よ、お前らも聞いたかも知れんけど、どうしてお前らに答えないとならんのよ?」


 「それは調査のためであって…」


 「だから知り合いの事をペラペラしゃべれってのかい?」


 そのボスにはスキが無く、その態度は場数を踏んでいるからこその対処だった。


 セルフィにしても、ここでの機会を逃してはマズいと感じたのだろう。


 「ただ聞きたい事があるから聞いてるだけで、アンタ達には迷惑を掛けるつもりはないわよ」


 「先に暴れたのはアンタらの方だろう?」


 先ほど膨れあがった殺気の上がり方より、比較にならないほどの殺気が風の様に流れ込んだ。


 言葉だけで、自分たちはあっという間に、形勢は不利になっていた。


 「まあ、大人しく帰れよ。


 俺らも、こんな手荒なマネなんかする…」


 人質を取るという、最終手段ですら自分らの正当防衛の様に聞こえてくる。


 「必要なんて無い…」


 言っておくが、


 この時、初めて、


 そのボスと、アラバは顔を見た。


 アラバ「……」


 妙な間があった。


 ボス「……」


 そして、人間、不思議かな、


 時には沈黙が『答え』を導き出す事もある。


 アラバとボス「あっ?」


 アラバは、ダウントーン。


 そのボスは、アップトーン。


 それはどっちが驚きが大きいのか言うまでも無い。


 「ア、アラバさん、じゃないスか?」


 「ど、どうも、ハマダさん」


 「な、何やってるんですか、こんなトコロで?」


 「治安部の活動の、お手伝いをしておりまして…」


 驚いたおかげで、アラバは刃物を突きつけられている状態であるのに、


 「あ、ああ、ば、馬鹿野郎!?」


 慌ててそのボスは、羽交い締めをほどく。


 「ボ、ボス!?」


 ワケのわからないまま、アラバの羽交い締めをほどかれるので、説明を求めようとしたが…。


 「こ・の・馬・鹿・す・け・が!!」


 ゴンッ!!


 ボスはその男の脳天にげんこつを見舞う。


 「お前、誰のおかげで、今の仕事にお前が、ありつけたと思ってんだ!?」


 殴りつけられた男はキョトンとしていたが、答えはまったく別の方向からやって来て滑り込んで来た。


 「あ、あああ!!


 すんません、アラバさん!!」


 「ど、土下座!?」


 別の男の態度にヒオトは驚き、セルフィはさすがに聞いてきた。


 「何、アンタの知り合い?」


 「そんな事になりましょうかね?」


 先ほどとは正反対な態度を取り、奥の部屋に案内される間、アラバは説明を始めた。


 「ふん、つまりアンタはこの人たちの職探しに一枚嚼んでいたという事ね?」


 それにはボスが突っかかって見せる。


 「一枚なんてとんでもない!!


 必要な資格を得る機会、教材だって提供してくれる!!


 この人には、感謝してもしきれないねえ」


 テーブルと椅子が設置してある場所に案内され、


 「缶ジュースですが…」


 先ほど刃物を突きつけていた男ですら、アラバに深々、ペコペコと頭を下げてボスを含めた四人に用意してきた。


 特に、


 「自分の自腹です」


 その言葉が、アラバの敬意を象徴していた。


 ヒオトは、それが気に入らないのか、


 「貴方、それなら相手のチームくらい覚えておいてほしいですね」


 「いえ、個人的な面識はあったのですが…」


 その途中、アラバは思い出したかのように言った。


 「そういえば、チームを結成してたって言ってましたね?」


 「ひでえな、アラバさん!!


 俺らのチームくらい、覚えておいてくださいよ!!」


 「アラバさんらしいわ~!!」


 ボスだけではなく、周囲が一斉に笑い出す。


 本来なら、チームの名前を覚えていないのは、失礼に当たるらしい。


 「人の名前しか知らないだろうって、ボスの言うとおりっスね!?」


 「あ~、有名になりてえ!!」


 先ほどのヒオトにしても、それを承知で皮肉を言ったつもりなのだが、このボスの態度を見てセルフィはアラバを横腹を突くのを見て、ボスは答えた。


 「ミーアの事でしたか。


 確かに俺が留置場に入れられた時に、知り合った事もあって、チームのメンバーに入れたけど…。


 ホントの話、そこまでしかわからないですよ」


 「そうですね、聞く限りですけど、抜けるのも自由みたいらしいですからね。


 貴方も、それを踏まえて、それなりに行動していると思いますが?」


 「それなりって、どういう事よ?」


 「おい、レフィーユの妹。


 俺らは確かに喧嘩チームだが、イエローテープの集まりでもあるんだ。


 やめた後の処理くらい、ある程度しねえとならねえんだよ。


 お前だって、俺らがいないと逆に治安が悪くなるというのを、姉から聞いてねえのか?」


 それを聞いたヒオトは睨みつけて、ボス、ハマダに言う。


 「聞き捨てならないですね。


 だからこその治安部じゃないですか?」


 ハマダとアラバが、同時に飲み物を一口あおるので、セルフィが不審そうにしていた。


 「おいおい、俺らは確かに前科持ちだがな。


 こんな奴らを野放しにしてみろ、どんな優秀な治安部でも手に追えなくなるぞ?」


 ヒオトは言い返そうとする。


 「確かに馬鹿やって、自業自得な場合もある。


 だが…。


 色んなヤツがいるのさ」


 ハマダは遠い目をする。


 「『仲間がやったから俺らもやった』


 お前達も聞いたことがあるだろう?


 そんな中にも、喧嘩、やんちゃだって出来ないヤツもいる。


 そんな奴らをまとめてねえと、また繰り返す。


 それをお前ら、治安部は取り締まる。


 それを何回繰り返す?」


 ヒオトは黙る。


 「そして、俺たちは働き口を無くす。


 そして、そんな奴らが年を取る。


 そして、行き場を無くす。


 そして、また繰り返す」


 「そんな奴らをまとめてねえと、いつまた何かやらかすかわからねえだろ?


 貴方はそんな事を言ってましたね?」


 アラバの問いかけに、ハマダは静かに頷いた。


 「はっきり言って、ミーアはそんなヤツじゃねえ。


 だから職も紹介した」


 「ボスの役目ってヤツですね?」


 「アラバさんだって、日は浅いはずですし、覚えていると思いますよ?」


 突然の指名に、アラバは『えっ』として思い出す。


 「あっ、もしかして『女の人なんだが?』と言ってきた話ですか?」


 そんな曖昧な発言にボスは頷いて見せ、ヒオトは呆れもする中、話は進む。


 「確か金物屋でしたっけ?」



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