第十七話
「失礼、私たちは治安部の者なのですが、少しお伺いしてもよろしいでしょうか?」
自分より大きい体格の相手に、ヒオトは毅然として聞く。
「ミーア・ペンタブル?
『N.O.N』(オレら)のメンバーじゃねえヤツの事なんて知らねえよ」
「それは元は、という意味合いですよね?
すでに貴方がたのメンバーでは無いにしても、何か知ってる事を教えてほしいのですが?」
「抜けたヤツの事なんか知らねえよ。
大体、あまり自分から話をするようなヤツじゃなかったからな」
男が周囲にも聞く、するとその通りだという反応が返って来て言う。
「大体、そいつ、うちらのボスの紹介だったって事しか知らねえし。
何でお前達に話さねえといけねえんだよ?」
男は強引めに映像をヒオトに投げ返す牽制を見せる。
しかし、ヒオトは怯むことはない。
「じゃあ、そのボスに会わせてください」
それには男は睨み付けるには、十分な理由だったのだろう。
「なあ、何を調べていんのかわからんけどさ。
あまり調子に乗んなよ?」
そして、セルフィの自分を促す言葉が、場の空気を表していた。
「ちょっと、アンタ、下がってて」
素人でも空気が殺気立つというのが、わかる雰囲気が周囲に漂い出す。
包囲がさらに堅くなり、アラバは逃げ出そうにも、逃げれないでいる中、ヒオトと男の火花が散りつき始める。
「いくら治安部だからってな。
そんなお高い態度取られて、ボスを紹介しろなんて言われて、ほいほい出すと思ってんのか?」
「私たちは調査のための『て・い・あ・ん』をしただけですが?」
ヒオトは怯む事無いのが、とても気に入らなかったのだろう。
「そっちもな?」
男が彼女の胸ぐらを掴んだ。
「権力をかざしてりゃ、何でも事が進むと思ってんじゃねえぞ?」
だが、それがヒオトにとって『好都合』だったのかわからない。
「…脅迫ですね。
では、私は、身の危険を感じたので、防衛行動に移りましょう…」
あまりにもぼそりと言った。
何を言ったのかわからないので、聞き直そうとしたのを、
ヒオトは狙って、関節を極めてゲーム筐体に叩き付けた。
「てめっ!!」
続いて二人目がやって来る。
こういう場合、先に手を出した場合が、非常にマズい。
その男にしても止めに入るつもりかも知れなかったが、ヒオトは挑発した。
「最初から、こうするつもりだったのではないのですか?」
均衡が崩れた瞬間を、アラバはこう表現した。
「最初から、そのつもりだったのですか?」
セルフィの伏せさせる突きが、妙に強かったのは気のせいだろうか?
魔法の使えるような今の時代、暴徒と化した集団が武装するのは簡単な事だった。
自分の魔力を消費すれば良いのだから。
『人は殺意を抱いた時、近くの火器より、身近な武器を手にする』
誰が言ったのかわからないが、
これは魔法が使えるようになってから『特に』言われている言葉、格言だった。
だからこそ全世界の治安レベルが下がった。
それを言い表せる光景がアラバの前に広がっており、ハルバートを振り回し構えたセルフィがヒオトに正確な指示を出した。
「ヒオト、右上に足場、2メートル先、腹部に足場」
武器を構えたヒオトが誰が見たのか、それが合図だった。
「はっ!!」
向かってきた相手に、ヒオトは衝撃波を飛ばし、指示された2メートル先の足場に足を掛け、身体を一回転させる。
当然、彼女はただでそんな事をしない。
「うわっ!!」
彼女の付加能力『衝撃波』を生かす為、『一回転の衝撃波』とは全体攻撃に匹敵する。
そこに武装したセルフィが立っていた。
「クソ!!」
立っていただけの相手、完全な反撃という体勢でセルフィの柄が相手の腹部を襲う。
正当防衛。
何度、その言葉が世間で、世界で、相手、自分の防護をしたのだろう。
治安を守る者が、完全に場を支配している。
そんな光景が広がっていた。
のだが、そんな光景はすぐ終わった。
「おら、お前ら、動くな!?」
アラバを人質にと、羽交い締めにして武器を突きつけ叫んだからだ。
「す、すいません、セルフィさん」
セルフィは何となく予想出来ていたのか、呆れてアラバに言う。
「アンタね、逃げるなり何なりしなさいよ?」
「囲まれてて、そんな事、無理でしょう?」
アラバの喉元にチクりと刃物独特の感触の痛みが走るので、怯んだところで男は叫んだ。
「この状況がわかったんなら、出てけ!!
いいな!?」
そんな中、ほかのメンバーがその男の背後の気配に気づいた。
「ボ、ボス!?」
周囲の多くはそのタンクトップで筋肉質な男の登場に、ようやくN.O.Nサイドが、統制を取り戻す。
「何だ、なんの騒ぎだ?」




