第十二話
「ふーん、そんな事があったんか」
サイトが、その報告を聞くのは最後になっていたが、白鳳学園の治安部、いや、全員に困惑している様子はなかった。
「まったく、あの人の年収がどれくらいだと思ってんねや。
警察もあてにならんな。
レフィーユさんが万引きなんてするわけないやろ?」
サイトが明確な罪状を上げる。
それがレフィーユに掛けられた容疑だというのを自分が知ったのは、身内であるセルフィからだった。
セルフィはここにはいない。
それはレフィーユの後の仕事を引き受けていたからだった。
「まあ、あの人の収入を直接聞いたわけじゃありませんが、相当もらっているらしいですね?」
治安部員には『手当て』と呼ばれる、収入が発生する。
その理由は治安を守るというのが、それだけ危険な事であるという意味合いがあるからだ。
そして、そのレフィーユ、治安部のリーダーである。
彼女にしても収入を隠す性格はしてはいない。
だが、
人に『いくらもらっている?』というのを、なかなか聞けるモノでもなく。
この治安の悪い世の中、
「ふむ、借金があっての犯罪か…」
大体、彼女の口から収入をイメージ出来るの発言が、
「一応、私の貯金で返済は出来るが、悲しい話だな」
となど、全部、事件で例えられてしまうので、周囲も聞けるような話ではない、
だが今もこの通りである。
「そういう疑いをする方が、おかしいのですが…」
「どしたんや?」
「それもまた、はっきりとコンビニの監視カメラに写っていたそうですからね。
警察が軽率な理由で拘束しますかね?」
その監視カメラの映像を直接、見たわけでは無いが、浮かび上がる言葉をつぶやく。
「他人のそら似ですかね?」
この町でコンビニを営む店員が、『彼女だ』と思うほど、そっくりな人はいるだろうか?
そう考えれば、自然と険しい顔になるのをサイトはどう感じたのか。
「何や、何か思い当たる節でもあるんか?」
「い、いや、無いですよ。
疑う方がおかしいじゃないですか?」
「いや、わからんで、治安部のリーダーなんて。
ストレスが溜まって仕方ないて、本人も言うてたしな」
「ストレス、ですか?」
「日々のストレスが溜まって、その発散のためにやりました」
「万引きは、ゲームじゃないのですよ?」
「学園には連絡しても構いません、だけど、家には連絡しないでください」
「この価値観の違いがわかりません」
「結局、連絡されるのにな」
「さすが治安部ですね。
そういう人も、取り締まっていらっしゃる」
サイトが茶化し、なおも悪ふざけをするので、さすがにやめさせようとして、
バンッ!!
机を叩くのは自分では無く、
「……」
ヒオトだった。
「な、なんや?」
「サイトさん、さすがにやりすぎですよ」
アラバがそうなだめる中、ヒオトは、
「……」
黙ったまま、自分を睨み付けていた。
そんな中を、彼女は帰ってきた。
「すまない、迷惑を掛けた…?」
空気の悪さを、レフィーユは感じはしていたが、それを拭うようにヒオトは聞いてきた。
「隊長、大丈夫だったのですか?」
「さすがに身の覚えのない話だ、心配するような事では無い」
「あ、姉さん、戻って来たのね」
ちょうどセルフィも、その時、戻って来るので、妹に話の内容を伝えると、さすがにレフィーユは肩で息をついた。
「ふっ、しかし、今日は謝りっぱなしだな」
「でも、事情聴取だけだったんでしょ。
随分と長かったわね?」
「そうだがな、私にしてもモノの見事に、私自身が万引きする様子が映っていたのを見れば。
さすがに聴取も長くなる」
周囲が当然の沈黙を見せるので、レフィーユは弁解する。
「当然、私はやってない。
警察にはアリバイも言った。
それが証明されたのだから、この通り、釈放されているだろう?」
それが効いたのか、ヒオトから周囲へと、ようやく安心が広がってみせる。
「そうですね、大体、隊長を疑う人がいる方が、おかしいですよ」
そう言いながら、自分たちを睨み付けるのを忘れてはいない。
それを見た、レフィーユの顔は険しい。
「だが、今回はそうは言ってはいられんだろう」
「どういう事ですか?」
「ヒオト、パラサイターズを知っているか?」
そう聞きながら、彼女は周囲を眺め、知らないのを察したのか説明を始めた。
「10年以上の前の事件だ。
パラサイト、つまり、寄生するという意味合いだな。
かつて、それを生業とした犯罪集団がいたそうだ」
ヒオトが自分たちを押しのけ、PCを起動させ調べ始めるのは一連の動作なのだろう。
「はい、確認しました。
パラサイターズ…。
確かにその事件はあります」
「東方術者の集団だが、重要なのはそこではない。
付加された能力を見てみろ」
「…付加能力、『擬態』」
「そうだ、この犯罪集団は、皆、『擬態』する能力を持っているそうだ。
それこそ、姿形、容姿を相手そっくりにな」




