第十一話
「昨日、どおりで随分と遅く帰って来たとは思っていたのよ」
そう言って、セルフィが『どうして、その時、取らなかったのよ?』とアラバをからかい突く。
実はあの後、もう一度、アラバはやって来ていた。
その日、二度目の来訪、この事でまた何かあると周囲が警戒する。
そんな中を、アラバがやって来たのだが、そこで一度目の来訪で行った、挑発行為が意味を成す。
「実は、伝え忘れていた事があったのですが…]
この程度で、警戒は解けはしないだろうが、
「あれ、すいません。
用件を忘れてしまいました…」
『携帯で連絡したら』とアラバは冷たくあしらわれていた。
言われた通り、アラバは携帯を手にして答えた。
「あっ、携帯で連絡するにも充電が切れそうなんで、充電出来ませんかね?」
決まらず格好も付かない男。
周囲にそれが印象ついている男に、誰が警戒出来るのか?
私が、この報告を聞くまでに、旗まで100Mというトコロまでアラバの接近を許していた。
その近くには、監視カメラがあり。
そこでレフィーユが見ているのをどうやって知ったのか、手を振り、怪しい人物を演じていた。
見続けている限りで、およそ10分。
見回りから身を隠し、足踏みをするのは、
いつでも旗を取れるという、意思表示だろうか?
ただ、映像ではなく、私の目の前でそんな事をやっていれば、ただの不審人物である。
あ、また、怪しい動きをする。
今度は、携帯を使って盗撮し始めたので、とりあえず見ておく事にした。
10分くらいだろうか、やはりこの男、見られている事に気づいている。
「…あのレフィーユさん、いい加減、突っ込んでくださいよ」
「ふっ、基本学園敷地内を撮影するのは禁止だが、私と同い年で、しかも、ずっとグラウンドを撮影し続けているのは、別におかしい事ではないだろう?」
「おかしいですね、今まで不審人物を演じていたつもりなのですが?」
「それは初耳だな?」
ワザとらしく話に乗るので、その困った表情をしたアラバに聞いてみる。
「取らないのか?」
「私が取らないのは、もうわかっているのでは?」
はっきり言ってこういう状態は初めてじゃない。
何度か交流会があり、私が白鳳学園にやってくる前にも、こんな感じで彼は反則スレスレの方法で勝利の一歩手前でやめるのだ。
「まあ、今回はついでにやってみただけでしてね」
私にしてみれば、今回もしっかり準備していたのだが、彼は『ついで』と言ってのけてしまうので、機嫌も悪くなるが、アラバは少し不安そうに言う。
「こちらとしてはこの間を利用して、おそらくセルフィさんが、私なりレフィーユさんなりの部屋に探りを入れてくると思うので、相談に来ただけなのですが?」
「ふっ、別に心配するような事は無い。
お前とて、突然、立ち入り検査されてマズい事を残すヘマはする事はないだろう?」
「確かにそうなのですが、完璧なように見えるモノほど、穴はあるというモノですよ」
そして、今に至るのだが。
「なるほどね、こんな大掛かりな催し物を一日で潰すのがいかなかったから、アンタにしても気を使ったわけね?」
セルフィの追求に、逃げるようにアラバは顔を背けていたが、そんな中、通信が入る。
「どうした?
…私に?
わかった、私は待っておこう」
私がよほど不審そうな顔をしていたのか、アラバが聞いてきた。
「警察が私に聞きたい事があるらしい」
「警察?」
いつの時代も、警察から連絡があったとあれば、不審な顔をするのは無理も無いが、彼は漆黒の魔導士なのだから、警戒は解けはしないだろう。
「レフィーユさん、貴女に容疑が掛かってますので、少しご同行をお願い出来ないでしょうか?」
やって来た警察から聞かされた事は。
「容疑だと?」
「窃盗の容疑です」
私にとって、身の覚えのない事だった。




