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千夜一夜

コラボレーション

作者: ひこ

「部長!ありえませんよ、くさやとグミのコラボなんて!」



「どうしてありえないと言えるんだ。今までなかったからか?お前には今までやってきたことだけで通用すると思っているのか。」



「それは・・・。」



「いいか。現状維持は下降するのみだ。現状を維持するためにも上昇を続けなければならいんだよ。むしろ上昇するためには奇抜な発想というのも大事なんだ。どうしてこのコラボがありえないと言える?やってみないことにはわからないじゃないか。」



「しかし、くさやとグミというのは・・・・まずいとしか思えません!」



「試作品を食べただろう。それでもまずいと言えるのか。」



「まずさとえぐさしかありませんでしたよ!試作品を食べた殆どの人間が、気分が悪くなって早退したくらいです!」



「ならば、なぜ世の中にくさやというものが存在し続けるんだ。グミだって同じだ。通好みと一般的に人気の二つが合わないというのは、問題は私たちの姿勢にあるんじゃないか。二つが寄り添うことはないという私たちの固い頭が、これまでどこかで食べたものしか作れない、今の現状を作っているんじゃないのか。」



「しかし、どう考えても美味くなるとは・・・。」



「よく考えてみろ。それを美味くするのが、俺たちの仕事だ。プロというものだ。」



「部長・・・。そうですね。やれるだけやってみます!俺、敷かれたレールの上を歩いてるだけでした!命懸けでやってできないことなんてありませんよね!」



「そうだ。その意気だ。」



そのお菓子メーカーの従業員たちは寝る暇も惜しみ、試行錯誤を繰り返し、何度も、何度も試食を繰り返した。何度も何度も。


すると、これまで不味くしかなかった商品に奇跡が起きる。


従業員たちに、一人、また一人と「美味い」というものが現れだしたのだ。


そして一年も経つ頃には、プロジェクトチームの誰もが「美味い」と思えるものになったのだ。





「部長、やりましたね・・・。俺今、感動してます・・・。やってやれないことはないって・・・。」



「よくやった。何度も試作品を食べ、研究に研究を重ねた結果、くさやの癖を残しつつ、グミの食感をより感じられるものになった。本当によくやった!」



「部長!!!」



そうして、汗と涙の結晶は消費者のもとに届けられることとなった。



「まずっ!なにこれ、食べてられへんわ!これ作ったやつ舌おかしいんちゃう!?作ってるうちにおかしなったとしか思えんわー。ってゆうか、くさやとグミなんか絶対に合わんやろ!洒落で買ってもたけど、損したー。気持ち悪いー。」



そうしてまた、ひとつの商品が世から消える。


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