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六喰の鍵師  作者: 長月 こたつ
エルフの里編
15/63

15.閑話

 ルシアとの関係改善?の次の日、ルシアを交えて談笑をしていた。

 来た当初はぶすっと不機嫌だったルシアも、紅葉の誠心誠意のこもった謝罪(どげざ)により機嫌を持ち直した。些細な誤解のせいで第二次冷戦になりかけたのだが、サージの取りなしもあり大事には至らなかった。


「どこかの異世界人は、女性に対しての扱いがなってない」


「…はい、その通りです」


 そのため、今日は大人しい紅葉なので会話がなりなっている。


「だが、本当に異世界から来ていたとはな」


 サージからの説明で漸く信じるに至ったルシアは、まじまじと紅葉を観察する。

 今までより少し軟化したルシアの態度。やはりこの世界の人間ではないのが大きいようだ。


『ここに来たときは激弱異世界人だったのだがな』


「サージてめぇ!」


「モミジ」


「はい、すいません」


 誤解とは言えルシアが気にしている年齢を、間違えたのは事実で。更に年上と発覚したこともあり、対応に困っている紅葉は尻に敷かれ始めていた。


『そこからチョロチョロと精霊力を垂れ流し…チョロ男に』


「はい、チョロ男でした」


「ぐっ…」


 ルシアが追随することにより、紅葉は耐えるしかなくなる。出来る抵抗はサージを睨む事たけだった。

 そんな苦悩の時間はまだ続く。


『チョロ男が進化して今のダメ男になるわけだな』


「サ──」


「おい、ダメ男」


「はい、すいません」


 ルシアに睨まれ、紅葉は肩を落とす。

 このままではサージが調子づいて止まらない。どうにかしなければと、紅葉が悩んでいる間に会話が進展。


「私も、おかしいと思っていたのです」


「おぉ、何がだ?」


 ルシアが話し始めたことにより、話題が変わると素早く相槌を打ち促す。


「なに、精霊力が少ないと聞いていた割りには精霊魔法を数多く使っていたしな。確かに一回の威力は低かったが、回数は朝から夕方まで持っていただろう?」


「ん~…確かにそうだな」


「自分の事だろうに…それに、今までは悔しくて言わなかったが、日に日に精霊力の放出が多くなっていただろ?普通はあんなに早く精霊力とは増えない」


 そうルシアが言えるようになったのは、和解出来た為だろう。それを嬉しく思いつつ、紅葉は手近に置いていたバスケットを漁る。


「それが今や私を遥かに越えているのだからな…キレて強くなるなどは、聞いたことがない。あぁ、ありがとう」


 紅葉からお馴染みのグロリアの実を受け取り、かじり付く。

 キレて強くなると聞き、紅葉は逆立った金髪を思いだし苦笑いを浮かべる。それを目ざとくルシアが見付けた。


「…何を笑っている」


「いや、たいしたことじゃない」


 また良からぬ事かと勘繰るルシアをやんわり否定し、グロリアを口に含み誤魔化した。


「やっぱ旨いな」


 どんどん口に入れていく様子を、ルシアは呆れながら眺める。


「良くそんなに入るな…」


 バスケット一杯にあった筈のグロリアが、紅葉の持つ物が最後の1つになっていた。ルシアもグロリアは好きな部類に入るが、そこまでは食べられない。

 驚きと呆れが混ざり、笑いがもれる。


「もう、なくなったな」


 空になったバスケットを眺めていると、ふと思い付いた。


「精霊魔法で味と見た目を完璧に想像すれば、グロリアだけじゃなくて何でも食べ放題じゃねーか!」


 自身の思い付きに身体を奮わせた。

 早速と手のひらに意識を通して、鍵を出そうとしたのだがルシアから溜め息がもれた。


「出来るわけないだろ。それが出来るなら、畑仕事も無くなるし…人族共は戦争などしない」


 最後は吐き捨てる様に言ったルシア。紅葉も話題を間違えたと、後悔した。


『ルシアの言う通り、水を除く飲料や食物等は作れなくなっている』


「くそっ!食べ放題だと思ったのに…せめてもグロリアくらい!」


 気まずい空気を大袈裟に悔しがることで、払拭することを試みる。

 紅葉の気遣いにルシアも気付き、表情が緩む。


「貴様は食べることばかりだな」


「食べることは大事だっ!ルシアも一杯食べろよ」


 何気なく言った紅葉の言葉。

 特に何を思って、特にルシアの身長を見て言ったわけではない。


「ふふ…ふふ…………ふふふふ」


 ルシアがゆっくり紅葉へと近付く。

 そこで、はっと紅葉は自分の失言に気づいた。

 両手を前にだし、ぶんぶん振りながら後退する。


「いや、違う!ルシア違うから!ルシアが小さいからとか思ってないから!」


「それに気づけると言うことは、少しでもそう思っている証拠ではないかっ!!」


「ぎゃーーっ!?」


 慌てて逃げ出す紅葉に、鬼の形相で追うルシア。


『…やれやれ』


 今日も二人は平和だ。

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