表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

星に願いを

作者: と、らすく

私には付き合っている男性がいる。


今は遠距離恋愛で年に1度しか会うことができないけど、幸せだと思う。


昔は近くにいていつでも会うことができたし、周りからはバカップルと羨望と嫉妬のまなざしを受けたこともあった。


事の起こりはお父様からの仕事の依頼だった


「お前の作っていたデザイン、試しに商品化してみたらかなりの売れ筋でな、

 うちのメーカーの主力に勝る勢いになりそうだ。

 どうだ、学生とうちの社員を兼任してみないか。」


私は服飾のデザインをするのが好きで、将来はこれで食べていくことができればと思っていたため、「YES」の返事で即答した

今にして思えば、この時の選択が彼との時間を奪っていったんだけど、それに気づくには私はまだ未熟すぎたのだろう。


最初は学校の授業を受けつつ、デザイン画を書き溜め、学校帰りに会社に立ち寄って縫製さんなどと打ち合わせぐらいで、学校帰りが遅くなる程度。

土日は毎日彼とデートをしたり、ちょっぴり増えたおこづかいでショッピングを楽しむのが日課だった。


それがいつごろからだろう・・・・・

私の作ったデザインが有名モデルの目に留まり、某番組で放映されてから世界が変わった。


私のデザインは会社にとって最大の商品となり、

既製品として作っていただけのデザインは、個人からの依頼が入るまでとなった。


人気と比例して、私の忙しさも加速度的に増えていった。


私はいつしか、学校から

「在籍してくれているだけでいい。卒業までの単位も心配しなくていいから。」

という担任のありがたくも無い言葉で、学校に行く必要が無くなり会社に泊まり続ける日々となった。


それでも週に一回、日曜だけはなんとか時間をとって彼とデートをしていた。


私にとって彼とのデートは忙しい日々の癒しであり、ストレスの最高の発散だった。


私は彼とのデートを心待ちにして仕事を頑張り、さらに名声も上げていっていた。


彼も日曜だけに減ったとはいえ、私とのデートは楽しみにしてくれているものだと思っていた・・・・


ある日からか、彼がいつもデートの終わりに何かを言いかけて口をつぐむ様になっていたのは。


今にして思えば、彼も何か悩み、私に打ち明けようとしていたんだろうと分かる。


でも私には毎週の彼とのデートだけが楽しみになっていて、彼が悩んでいたとか気づくことができなかった。


・・・・・もし、私があの時、彼の悩みに気づいていれば、

・・・・・もし、お父様があの計画を立てていたのに気づくことができていれば、


今、この状態とは違っていたのかもしれない。


今、年に一度しか会えないという状態でも十分私は幸せだし、彼も幸せと言ってくれている


お互いに心から『好き』と思えることを仕事にして、心から『好き』な人と一緒にいることが出来るけど、年に一度しか会えないのはやっぱり寂しいな。


私は自分の夢『デザインの仕事』を叶え、今では『超』がつく一流となっている。


彼はそんな私に引け目を感じていたんだろう。


彼はパソコンを使うのが好きだった。


お父様は独自のネットワークを駆使し、彼の夢や仕事への展望・その実力等を調べていたのだろう。


学校や、彼の周りに働きかけ、彼の夢を後押しし、彼は夢を叶えることに成功した。


ただし、今まで住んでいた私の近くではなく、遠い遠い外国でである。


でも彼はいつも電話で喜んでいた。

「やっと夢が叶いそうなんだ」

とか

「もう少しで、君と釣り合いが取れる男になることが出来るよ」

とか、嬉しそうに話しかけてくれていた。


その頃はもう2人の物理距離は離れ、毎月お互いに時間が取れた時に電話で話し合うことが出来るだけだった。


会えるのは年に一回


最初は、1年間頑張ったごほうびにって、お父様が私には特別な休暇を、彼には日時が決まった飛行機チケットをで送ったのが始まりだったかな


その日は私と彼の誕生日。


偶然出会った2人なのに、誕生日が同じなんてって笑いあったよね。


その誕生日が2人で会う日になっていった


私は今日のため、結構無茶なスケジュールを繰り返したので、目のしたにくまとか出来ていないかとか、お肌が荒れていないかドキドキしていている。

もちろん、何度も鏡で確認したし、ばっちりナチュラルメイクも決めている。


私もいい年頃になってきた、彼の前でいつもより綺麗な私を見せたいと言う見栄もあるけど、どうしても心配になってくる。


彼は会うたび、どんどんかっこよくなってていつも会うとドキドキさせられる。


そう、私は今でも彼だけに恋しているのだ。


待ち合わせは何時も通り、7月7日の午前7時

7並びのラッキーセブン

世界で一番2人を祝福してくれる大切な日。


今は朝の6時30分

世間では早朝って言われるけど、私達にとっては年に一度の大事な日、もっと早く待ち合わせしたって時間が無いぐらい。


彼はいつも6時45分頃に、「まったかな」と言って私の前に車で迎えに来てくれる。


それで1日めいっぱい2人の時間を楽しんで、

・・・・・そして1年待つんだ。


彼はここ数ヶ月本当に忙しそうだった。


毎月必ず電話してくれていたのがぱったりと来なくなっていた。


本当は心配しているんだよ。


年に1度しか会えない彼女なんかじゃなく、いつでも会える彼女の方がいいんじゃないかって。


今日の日もきちんと確認できたわけじゃない。


来てくれないんじゃないか・・・・・

私の中にはそんな不安もあるけど、私は彼を信じている。


・・・・・6時43分・・・・・


もうすぐ、彼が来てくれるはず


そして何時も通りのデートが始まるんだ


・・・・・6時45分・・・・・


何時もなら彼が向かえに来てくれる時間だ


早く来ないかな、そしてこの不安を取りさらって欲しい


・・・・・6時47分・・・・・


あれ・・・・・・、彼が来ない・・・・


・・・・・6時50分・・・・・


どうしたんだろう、まさか事故とか起こってないよね。


彼の何時も乗る飛行機の時間を確認してみる。


特に事故が起こったとか、そういった話題はどのニュースサイトを見ても載っていない。


・・・・・6時55分・・・・・


彼の電話に電話をしてみても通じない・・・・


きっと遅れているだけだよね。

彼が送れたことは今まで1度も無かったけど、これが始めての1回って事もあるはず。


・・・・・7時・・・・・・


とうとう待ち合わせ時間になった。


でも彼はまだ来ない。


彼の身に何かあったのかな、すごく心配だ・・・・


最近連絡が取れなかったのも合わさって不安になってくる。


私はどんな顔をしていたんだろう、自分では分からないけど、すごく酷い顔だったんじゃないかな。


時計が7時1分を指そうとした時、目の前に1台の車が止まった。


「ぎりぎりだけど、遅れてないよね。

 ・・・・・・・まったかな」


何時も通りの彼が何時も通りの笑顔で言ってくる。


私はその笑顔を見て、今までの暗い気分が吹き飛ぶのを感じた。


「ぎりぎり遅刻かな」


私のことを不安にした罰だ、遅刻って事にしてあげる。


「こういう時だから何時もと違って、7時ジャストに君の前に現れようとしたのに失敗してしまったか。」


すごく残念がってるけど、今日だけは許して上げない。


彼は気を取り直したように私に顔を向けると、懐から小箱を出して私に言った


「ここしばらく疎遠になってすまないね。この土地に拠点を作るために無茶をしたので、連絡すら取ることが出来なかった。

 寂しい思いをさせてしまったとは思っている。

 あれから数年かかった。

 君の親父さんにも本当にお世話になった。

 最初は俺の夢をかなえる為と言って、外国に留学させられた時は君との仲を引き裂こうとしたのかと恨んだこともあった。

 でも、本当の意味で俺と君との仲を応援していたから、俺に君とつりあうだけの男になって来いと背中を押してくれたんだね。

 やっと・・・・君とつりあうことが出来るだけの男になったつもりだ。


 俺と・・・・・・・結婚して欲しい」


彼はそう言うと小箱を開き、中に入っていた指輪を私に見せた。


何時か2人の結婚式は、大きなダイヤのついた指輪をつけたいと言っていた・・・・

彼は「そうだね」と相槌を打っていたけど、それほど興味が無かったと思っていた。


そんな何時か話したとても大きなダイヤのついた指輪。


「何時か話したよね

 こんなダイヤのついた指輪を持って結婚したいと。」


彼は少し照れたようにはにかんだ


私はちょっと泣いてしまった。


これでは、せっかく彼の為に綺麗に見せようと頑張ったメイクが台無しだ。


でも本当に嬉しい。


2人の夢が本当に叶ったと思っていいのかな。


「夢はここまでだけど、これから先、2人で新しい夢を創って叶えて行こう。

 夢物語だった2人の夢が叶ったんだ、これから先も2人でなら何だって叶うさ」


彼も想いは同じらしい。

だから私はこう言ってあげるんだ。


「これまでは2人だったけど、これからは私たちだけじゃなく、私達の子供の夢も叶えて行かないといけないんだよ。

 頑張ってね・・・・・・彦星」


彼の顔が満面の笑顔になっていく。

断られるなんて絶対に無いんだから、そんなに喜ばなくてもいいのに。

でも、幸せかな・・・・


「そうだね、家族の夢をかなえていこうな。

 織姫」




前作とは270度ぐらい方向が変わっていますが、七夕なら恋愛だろう。と思い書いてしまいました。読んでいただけたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ