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恋愛短編一作完結ものまとめ

桜が咲く、晴れた日に。

作者: 宛 幸

 憧れていた先輩がもうすぐ卒業してしまう。

 そうしたら会えなくなってずっと大事に仕舞っていた気持ちが伝えられなくなってしまう。

 毎日この気持ちを抱えながら先輩を見ていることが好きだった。

 ドキドキしながら先輩の笑ってる顔、真剣な顔、楽しそうな顔、他にもたくさんの顔を見てきた。

 けど、それももうすぐおしまい。お別れなのだ。


 ――そんなの嫌だ!


 でもどうしたらいいの?

 私と先輩はただの先輩と後輩……ううん。まだちゃんと会っても話してもない。他人なんだ。

 それなのに会えないからって今さら会いに言っても……迷惑だよね。きっと。


 そんなある日、私は友人に相談した。

「どうしたらってね。そんなの自分にしか分からないでしょ」

 至極真っ当な回答だった。

 自分の気持ちは自分にしか分からない。誰かに聞いて答えてもらうようなものじゃない。

「でもね。あんたがそうやってウダウダしてて、辛いならぶちまけた方が楽だと思うけど。変に遠慮してたら幸せなんてやって来ないよ」

 それもそうだ。

 行動をしないと……幸せなんて去ってゆくばかり。

「まったく。あんたは不器用なんだから。そうやってウジウジしててもしょうがないでしょー。サクっと告っちまえばいいのよっ」

 そう言って私の背中を叩く姿は素直にそうだと思えた。

 ……背中はヒリヒリして痛かったけど。

「後悔はしてからじゃ遅いの。後悔は自分がしたいと思ったことをしてからじゃないとね。当たって砕けろ!てね」

 友人の言葉はいつも私を励ましてくれる。暖かくて、なけなしの勇気が心に湧いてくる。

 でも砕けるのはいつでも怖いと思うよ……。

「後悔と言えばね……あたし体重増えたのよ~っ。どうしよう~っ」

 早速当たって砕けてるね。

 と言うか、それはおやつと称してチョコとか甘いものをいっぱい食べてるせいでは?

「あ、やっぱり?……ダイエットしようかな」

 ……がんばって。あと、無理はしないでね。


 そして私は憧れの先輩にちゃんと口にして秘めた“想い”を伝えようと思った。

 卒業式前日、手紙を先輩の下駄箱に入れて置いたのだ。

 だから私は待つ。告白のスポットである大きな咲かない桜の木の下で。

 今日は卒業式。私は卒業式が終わったらすぐに向かった。

 そして時は来た。


「ごめん。待たせたかな?」


 ――トクン

 心臓が勢いよく跳ねた。

 朝からずっとドキドキしっぱなしだ。

 でも、伝えなければならない。



 ――私、先輩のことが……好きでした!



 これが今の私の精一杯の想いの言葉。

「ありがとう。その気持ち、受け取ったよ」

 先輩の声を、言葉を聞くだけで涙が出そうになる。

 だけど泣いてはいけない。

 私は笑顔を取り繕う。

「……これを君に」

 先輩は胸の第2ボタンを取り、私の手のひらに乗せる。

「君の想いに答えることはできないけど、これだけは言える」


 ――いつも僕のことを見ていてくれてありがとう


 我慢していた涙がいっぱい……いっぱい出た。

 笑顔を取り繕うも、なぜかうまく笑えなかった。

 どんな顔をしているのかは自分では分からなかった。

「じゃ、またね」

 先輩のことを見ていたのは私だけじゃなかった。先輩もまた、私のことを見ていたのだ。

 そのことが……私はとても嬉しかった。


 ――じゃ、またね


 その言葉はさよならではなく、また会うための約束の言葉。

 だから私は思う。

 先輩に言ってよかったと。心からの私の精一杯を伝えてよかったと。

 心の中は晴れ晴れとして、まだ咲くはずのない桜の木から桜の花びらが舞っているように……感じた。


 私は諦めたんじゃない。

 一歩進んだんだ。

 その日溜まりのような暖かな明日へと進むことを許された気がしたんだ。

 きっとそれに気付かせてくれたのは友人と……心の桜なんだ。

 先輩達は巣立ち、自立をする為に大人になる。

 自分達も巣立ちの為に親や周りの人から源を貰い、大人になる為に奔走する。

 そこには笑い、迷い、悩み、辛さ、苦しさ、悲しみ、寂しさ、嬉しさ、孤独さ、明るさ、暗さ、楽しさ……様々な感情の中でもがいてもがいて……自分が幸せになるように周りの人達をも巻き込んでの人生がある。物語がある。

 僕達はそれを乗り切って明日に繋いで、未来を作って行くのだから……。


 なんて。

 卒業か……もうすぐ先輩達の卒業式だな~。

 もう会えなくなると思う、悲しいし寂しい……。

 でも、そんな日々も、あとで思い出のひとつになるのでしょうね。



 では、最後まで読んでくださりありがとうございました。

 もしよろしければ他の作品もよろしくお願いしますねm(__)m

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― 新着の感想 ―
[一言] すごく感動しました! とてもいい話ですね。 って、少し遅れてしまいましたが・・・。 これから成長していく様がありありと想像できました! 大変素晴らしい作品をありがとうございました。
2013/03/03 13:15 退会済み
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