6本目
※前回のあらすじ
俺の名前はタクル。健全な年頃のごくごく普通の男子高校生だ。……と思っていた。
ところがある朝、起きると俺の体は、「触手、触手、触手!」――な化物となってしまった。
地球人学者をしているという親父の助手を自称する宇宙人の少女レイによって、学校の廊下という往来で触手の化物に隠れた俺は身を隠すべく近くにあったトイレへ逃げた。
ところが運悪く駆けこんだ先で学校一の美少女の南崎陽子先輩と居合わせてしまった。
少女と触手の化物がトイレの中で二人っきり。これほど犯罪的なスチュエーションもない。しかも、俺は気が動転してしまって触手でグルグルと先輩の身体に触手を巻きつけてしまったり、口を押えようとしてヌルヌルする触手を口の中へ突っ込んでしまう。
社会生命終了の訪れを覚悟した俺だけど、先輩はまるで菩薩様レベルの寛容な心でもって理解と許しをくれたんだ。
一方、俺をこんな姿にした張本人は書置きを残して消えていた。
* * * * *
「タクル、購買に一緒に行こうよ」
「ああ、いいぜ。今日は弁当が無いから行くつもりだったし」
お昼休みを告げるチャイムの音が校舎に響く。
周りのクラスメイトは訪れた一時に気を休めて思い思いに過ごしだす。
ちなみにに俺は朝、夜勤明けで仕事から帰ってきた母さんが、弁当を作るのが面倒臭かったとの理由で、手渡された五百円玉が今日の昼飯代。
俺はいつも昼休みは購買へパンを買いに走っているアキラに誘われ購買へ向かおうとする。
早く向かわねば購買の一番人気のパン――ロイヤルクリームコロッケヤキソバパン(略してロイパ)が売り切れてしまう。
「ちょっと待って! ボクも行く」
「マコト? だってお前弁当持って来ているんじゃ……」
購買へと構えてよーいドンの所までやろうとしていた俺たちを、どういう訳か弁当持参組のマコトが引き留める。
「いやさ、考えてみたら弁当がこれぐらいじゃ、ちょっと足りないかなと思っちゃって……」
「それで、食べたりないの!?」
陸上部に所属のマコトは、並みの人よりも、ハッキリ言って男の俺から見ても多いといえる量が詰まった弁当を持って来ている。
「ち、違うんだよ。部活動した後に食べようと思って。ほら、ボクって陸上部で長距離やっているでしょ。だからエネルギー使っちゃって、帰りにお腹が空くから」
あー、なるほどね。一杯動いた後にお腹が空いたら帰るまで待ちきれないときもあるもんな。
すると先ほどからマコトの隣に立っていた菓織が、思うところがあったのか何かを呟こうとする。
「あれ? でもマコトって確かダイエット中じゃ……」
「わー! わーー! 菓織ちゃんそれは黙ってて」
菓織が口を出そうとしていたところをマコトは口を押えて騒ぎ出す。お陰で、菓織が何を言おうとしたのか全く聞き取れなかった。余程人から聞かれたくないことでもあったのだろう。
「おいタクル。さすがにそろそろいかないとパン売り切れるぞ」
時計を見ると昼休み開始からすでに五分が経過している。あと二・三分もすれば、安いコッペパン(ジャム&マーガリン付)ぐらいしか購買には残らなくなる。
別に不味くはないのだが、かなり腹に貯まらない為、午後からはずっと小腹が空いた感に苛まれることになる。
「分かった今行く。ついでにマコトも来るってさ!」
「それじゃあ行こうか。もう皆向かっているぜ」
「おう、分かった。それじゃあ急ごうか」
既に他の奴らは動き出している。俺らもいい加減購買に向かわないとな。
俺とアキラとマコトとの三人で、一緒に教室を出て購買へと歩いていると……、
「あれ? なんでみんなあそこで止まっててんだ?」
廊下の途中で大勢がたむろしているのを見つける。
何故だかは知らないが、この混雑の奥の方では悲喜こもごもだといった声が、俺たちに近い方の……手前側では奥の方で何があったのかに興味津々といった様子で眺めている。察するに、野次馬の集まりらしい。
「あ、あそこに居ますよ!」
奥にいた一人が俺たちの方を見てそう言い、場にいた全員が視線を俺たちに向ける。ちなみに奥の方の奴らは、どういう訳だか俺へ向けての視線が、やや勇者を湛えるようなものであるのは何故だろうか。
怪訝な思いで見つめていた人だかりに、変化がやってくる。奥の方から俺たちへと向かって人だかりが左右に割れ出した。
「ごめんなさい。あなたの居る教室の場所を聞こうとしたら、人が自然と沢山集まっちゃって」
「先輩!?」
その割れた人だかりの中から、見知ったばかりの顔が現れた。
ジャージ姿ではあるが間違いない。陽子先輩だ。
「そこの君、名前は?」
「は、はい。俺の名前はは海藤誠一です」
「そっか。それじゃ誠一君。見つけてくれてありがとう」
「あの陽子先輩が、俺なんかを名前で呼んでくれた」
先輩が最初に俺達を最初に見つけた一人にお礼を言う。言われた方は目がハートになっている。我が校一の美少女に名前呼びをして貰えるんだ。無理もないよな。
先輩は俺の前にゆっくりと近づいて、軽く会釈をする。
「天道君。さっきのことで話があるんだけど、時間いいかな?」
* * * * *
「ごめんね。友達と一緒の所を邪魔して。来るのが早かったかな」
「いいや、良いんですよ」
昼休みに先輩が来ることは憶えていたけど、昼休みの始まったばかり時間の内なら、多少は席を外しても大丈夫だろうと勝手にこちらが思い込んでいただけだ。
それにあいつらとはクラスメイトなのだから、教室に戻れば会えるししゃべれるし。帰りにジュースの一本でもお詫びに奢っておこう。
「本当にごめんね。次の時間は移動教室な上に、君の二年の校舎の場所は私の所から遠くて」
『大丈夫分かってる。どうせいつも通り、アタックでもして呼び出しをしたんだろ? 安心していって来いって。例え告白に失敗したとしても親友のボクが慰めてあげるからさ」
と、どうやらおれが陽子先輩に告白して断りの返事をしに来たようだと勘違いしていた。
しかし、その勘違いを訂正させようとしても、俺の秘密に関するややこしい事態の問題が増えるだけなので、『そんなんじゃねえよ』と軽く否定しておくだけにした。
マコトの反応は『ふぅん』と半信半疑なものではあったけど、すぐに『まっ、イイか。あの南崎先輩だし』とそこで深くは聞こうとしなかった。
あれはマズかったと思う。あれは後で根堀葉堀問い詰められるコースだろうな。
待ち構えているであろうマコトへの言い訳とごまかしを、どうするかを後で考えておかねば。
……でも今は、陽子先輩のことだよな。
今朝、俺のやらかしてしまった行為を女神もかくやという心の優しさで許してくれた上に、俺の秘密を打ち明けると嫌悪することなくサポートまで申し出てくれた。
今だって、人気のない校舎の屋上へと俺を連れてきて、会話だって、人気がない場所だからといって、誰かが聞き耳を立てているとは限らないからと俺と自分の間でぐらいしか聞こえない大きさの声で話していて気を使ってくれている。
優しくて理解を示してくれる上に気遣いもできる。この人、無敵か!?
多くの男子達、特に目にしたり会うことも多い同じ学年の男子を中心に「高嶺の華」と評されていたのも無理ないよコレ。
おっぱい大きいし、顔も性格も美人だし、気遣いもできるって、凄い人だよな。
なんというか憧れというか、『素敵! 惚れるっ!』っていうんじゃなくて、素直に尊敬できる人物像だよな。
そんな感想を持ち、感心した眼差しで先輩を見つめていると、自然と頬が熱くなる。
「タクル君」
「は、はひっ!」
やっべ、先輩のこと考えている時に声かけられて声が上ずった。恥ずかしっ。
「……? 別に緊張しなくていいんだよ。ただ、今朝の話の続きをしたいだけなんだから」
先輩はナチュラルに首を傾げ、何故俺が緊張しているのか分からない様子。
くそうっ。その仕草が普通に可愛いいです。
「私、思ったの」
そう言ってから、俺の手を両手で握り、ズズイッと一気に詰め寄って距離を縮める先輩。
内緒の話ということで、ただでさえ近かった先輩との距離が近くなる。
(て、ててて、先輩の手が手が俺に!? ……いや、それよりも距離が近いって!)
既に、手を握られたとか至近距離とか、それどころじゃすまないことを先輩にしてしまっているのだけどそんなこと関係ないほどひどく動揺していた。
「ちょっと先輩。これ以上は!」
動揺で、せっかく先輩の掴んでくれた手を振り払ってしまい、一歩後ずさってしまった。
「あっ……」
残念そうな先輩の声。
しまった!
何やってんだよ俺! せっかくのチャンスが向こう側からやってきたというのに。このヘタレ! 意気地無し! それでもちゃんと付いてんのか!
激しく自己嫌悪。
「違うんです! 違うんですこれは! いきなりだったからついビックリしてしまってその……あ! それよりも何か言おうとしていませんでしたか先輩?」
うぉォォォォ。これ以上口を開くんじゃない自分! その上、話を誤魔化そうとするなんて最低だ。
「ああ、そのことなんだけどね。タクル君が変身しちゃうのは、要は女の子にドキドキしちゃうからなんだよね?」
「そうですけど」
性的興奮が変身の条件で、異性であう女の子にそれを覚える以上、確かにそれは間違ってない解釈だ。
「いくら薬の効果があるからって、大丈夫なわけじゃない。だったら、慣れてしまえばきっと平気になってしまえると思うの」
それって、どゆこと?
「だから、こうするの!」
言うなり、先輩は俺の右腕を自らの胸元へと抱き寄せ、さらにそれどころか、腕に抱きついたまま体を寄せて擦り寄ってきた。
そのとった腕を、先輩は豊かな双乳を変形させんとばかりに埋没させ、右腕を通して柔らかな感覚をダイレクトに伝えてくる。
体ごと密着させているため、髪から香る仄かなシャンプーの匂い、小さな息遣い、衣類越しの体の温もりといった間近でないと感じられないものまで届き出す。
「屋上の日差しは暑いね」
そういって先輩がシャツの第二ボタンまでを開く。
鎖骨がぁぁ! 谷間がぁぁ!
全校生徒憧れの陽子先輩の包容が今ここに。ふぉぉぉぉ!
おおぅ。これは……。
これは…………。
これはぁぁぁぁぁぁぁ!
「お、俺……」
俺は先輩の肩をガッシリと掴んで……。
「女の子がこんな事しちゃダメだと思います。はしたない!」
ゆっくりと、くっついていた先輩を体から引き剥がす。
「うう……」
そんな残念そうな顔しないでください。悪いことした気分になっちゃうじゃないですか。
「どうしてあんなコトしたんですか。もっと自分大事にしてくださいよ! ボタンも暑くてもちゃんと留めて下さい」
先輩みたいな純粋で清楚な人が、今朝に知り合ったばかりの男に抱きついてセックスアピールなんて考え難い。
心の中では昇竜拳ばりに拳を高々と突き上げつつ舞い上がらんばかりに喜んでしまっているのだが、その表では行動に表したいのをグッと堪えている。
「女の子にドキドキするなら、さっきみたいなことをなんどもやって女の子に慣れてしまえば平気になるかなって」
なるほど、ハードなビデオを見た後だとノーマルのビデオを見てもあまり興奮しないようなものか。
「俺みたいな人間に体を張ってくれるのは嬉しいですけど、二度としないで下さい」
先輩みたいな巨乳美人に抱きつかれるなんてメッチャクチャ嬉しいけど。それどこか諸手を上げて喜びたいけど……。
でも、これは――先輩からのこの恋愛感情の「好き」からくるものとは違うから。
先輩なりの考えがあってしたことだろうから。
けど、やっぱりそれはよくないって思ってしまうから。
俺が先輩を傷つけたくないから。
駄目な事を伝えないといけない。
「いくら周りから『ヘタレで無害』呼ばわりされている俺でも、先輩みたいな胸が大きくて、顔が良くて、可愛らしくて、包容力というか癒されオーラ全開で、酷いことしたのに許してくれた寛容なところとか、相手が誰であっても優しい性格とかが、ものすごく俺の好みにピッタリで『好きだ! 彼女になってください!』と告白したいぐらいに好感度高い人になんか抱きつかれたら触手に変身して襲ってしまいます……よ」
どんどんと顔を真っ赤にしていき、気恥ずかしそうに俯いて顔を逸らそうとしていく先輩に気づいて、ハタリと次々と出てきそうだった言葉を止める。
そして、一息に喋ってしまった一言をよ〜く反芻して。
……………。
(告白だ〜! コレ! その気がないのにしてしまった。いやあるけど、そうじゃなくて。この場合は告白する気で喋っていた訳ではないということで)
『やってしまった』というのがまず出てきてしまうのが、告白に気づいてからの感想。
少なくとも今の時に言うことではなかった。
学園のアイドル兼お姉さまとして密かに祭り上げられているほどの先輩が、恋慕している男子達から敬遠されるほどの面倒な体質。
少し話をしよう。
昔、ある男は一か月かけてしたためたラブレターを渡そうとした矢先に、動物園から脱走したヤギにその手紙を食べられた。男が今度は文を大量に複製して再度同じ試みを行ったが、今度は同じ動物園から脱走してきた大群の鹿に手紙を全て喰われた。人生渾身の手紙が二度も台無しなった男は心が折れた。
またある男は、先人の失敗を教訓とし、直接告白しようと試みた。しかし呼び出しこそは成功したものの、突如として出現した野犬の群れに追われる。男は四六時中追われ続け、終ぞ待ち合わせ場所に現れることは無かった。
さらにまたある男は、先人たちの屍を糧とした。女友達を使ってそれとなく好意を伝えようというものだ。所が女友達は男の事が好きで、友情と恋心に挟まれ悩みぬいた彼女は親友に相談した。所がその親友も男に片思いしていることが判明してしまう。そして、女友達とその親友との関係はギクシャクしてしまい、やがて男を巻き込んでドロドロの人間関係を築いたのでした。
南崎陽子先輩の面倒な体質――それは異性としての好意の告白を試みようとした者が、例外無く不運に見舞われて告白を失敗するというもの。
告白に限りなく近づけば近づく程碌な結末を迎えない。噂では、万が一にでも告白に成功しようものなら『死ぬんじゃね?』が専らである。
さて、そんな先輩に何気ない告白という攻略方法があった事を発見したことには驚きなのだが、俺の頭には別の事が別の事が支配していた。
告白に成功しようものなら『死ぬんじゃね?』の噂だ。
「カァー!」
「うわあっ」
不意に、貯水タンク上に生息していたらしいカラスが、上空を飛んで俺の目の前にフン爆撃を行った。
フンに驚いて思わず後ろへと仰け反ってしまってバランスを崩し、よろけて屋上の端にある落下防止用のフェンスに片手を……
ガッシャ!
「お や ?」
……つき?
一体どういうことなのか。フェンスはこけそうな俺の体重を支えてくれることなく、向こう側へと俺の手が触れるタイミングに会せたかのように向こう側へと倒れて落ちていく――俺も一緒に。
「うぉぉぉぉぉあぁぁぁぁぁぁぁ!」
「タクルくぅぅん!」
自由落下ってこんなにもキンタマが縮あがることだなんて知らなかった。それを今初めて知った。
「こなくそ!」
俺は、すんでのところで触手を伸ばして校舎の壁に取り付いて何とか生還。俺の落ちた側は窓の無い壁面な上に学校の内外を問わず死角だった為、触手の姿を見られることはなかった。
「おい! さっきフェンスが落ちたが、大丈夫だったか!?」
その後、落ちたフェンスを確認しに来た先生たちがやってきて、俺と先輩は状況確認の為の質問攻めに遭った。
その質問攻めも案外早く終わり、残されたものは『間』。ただひたすらの沈黙。
気まずい。
女子に告白なんて慣れっこのはずなのだが、全て清々しい程にぶった切られてきた為、こういう『タイミングを見失われた感』には慣れていない。
どうすりゃいいんだ?
「あのタクル君……」
沈黙を先に破ったのは先輩だった。
「なんでしょうか」
この流れで、一体どこに話を持っていこうというのだろうか。
「お昼ごはんまだでしたよね? よかったら私の作ったお弁当、少ししかありませんけど食べませんか」
なんとゆーことでしょー。アンビリバブル! ファンタスティック! シンジラレナーイ!
まさか、女の子の手料理をこんな形で頂けるなんて!
「いいんですか?」
「はい。お友達とのお昼ご飯を、お邪魔してしまいましたし」
そういって弁当の入った包みを取り出す先輩。
「本当に、いいんですか?」
「はい」
「本当の本当ですか」
「本当の本当です」
弁当包みが解かれて姿を現す弁当箱。
「夢じゃないですよね?」
「はい。召し上がって下さい」
開かれた蓋の中には、赤、黄、緑、黒、茶、白と彩の鮮やかなオカズがぎっしり詰まっている。
「それじゃあ。頂きまーす」
一口目は目についたのは最もスタンダードなオカズ――卵焼き。
備え付けられていた爪楊枝でさして口へと運んで一口。
「どうかな?」
「…………」
自分の料理が口に合うか不安そうな先輩に、俺は涙を流しながらサムズアップで答えた。
うまい。
しっとり柔らかく卵を焼き上げる技術もさることながら何よりも凄いのは味付け。砂糖の甘さといい、塩加減といい、塩梅が全てにおいて絶妙だ。
続いて、おひたし、煮物、焼きサバ、アスパラのベーコン巻等々、全て口に運んだがやはり同様だった。
「良かった。調味料は殆ど塩と砂糖と醤油しか使ってないから、味が単純なんじゃないかって不安だったんだ」
不安で強張って先輩の表情から緊張が取れて柔和な笑みを浮かべる。
味が単純だなんてとんでもない! むしろそれだけでこの御手前は、見事なものです。
「所でさっき貰った言葉の、その、お返事なんですけど……」
俺は先輩がその話題を切り出そうとした途端、先ほどまで料理を味わわんとしていた口の動きを一時停止する。
「私は、その……、あなたの事は……」
先輩は、言葉を一つ一つ選びながらゆっくりとながら答えてくれようとする。
「その話題は置いときましょう。あの時の俺、そんなつもりで喋った訳じゃありませんし。無理して答えなくても構いません。むしろノーカウントにしてもらっても構いません」
俺は急いで噛んで飲み込み口の中を空っぽにしてから、先輩の言わんとしていた言葉の先を遮った。
先輩みたいな人からイエスな返事をもらえたら嬉しいし、そりゃあ惜しい気もするけど、答えづらい様子を見るに、先輩は優しいからハッキリと断り辛いのかもしれない。
「いえしかし、その……」
「いいんですって、俺の事なんかで深く悩まなくたっていいんですよ」
そんなことで女の子を困らせるのは好きじゃないし、こういうのはさっさと自分が引くのがその人の為だよな。うんうん。
「いいえ。今ここで答えさせてください」
え!? それってちょこっと位、期待していいんですか? いいよね?
「その、私と……私と……」
ついに、夢にまで見た瞬間がくるのか!? 俺なんかでいいの。
イイゼ。それなら喜んでOKを出そう。即答するんだ。
「私と………私と――――友達になってください」
「よろしくお願いします!」
これで晴れて俺と先輩の仲は友達だ!
――って友達!?
じゃあそれって……。
「タクル君のご期待に添えられるようなお返事でなくてごめんなさい。でもお互いをよく知ったら……」
そんな……。
「やった! 女友達ができた! ヤッフゥゥゥ!」
もとより先輩が恋人になってくれることになんて期待していない。
なんせ、俺が先輩の事を好きなった点を上げれても、先輩が俺を好いてくれる要素なんて微塵も心当たりがない。
イケメンでもないのに、好かれる努力なくして俺なんかがモテる訳がない。
待っていれば空から美少女が降ってくるわけでもないし、そう言った非現実的な考えを生憎持ち合わせていない。
「え!? そこまで嬉しいの? お友達でってことだよ?」
先輩もアキラの時と同じような呆気にとられた顔をしている。
「友達が増えたんですよ。しかも二人目の女友達が! 嬉しくない訳ないじゃないですか」
「私で二人目なの!?」
確かに俺みたいな女子から嫌われている人間に、女友達がいたら意外だろうな。
先輩の言葉には、まるで「初めての女友達になりたかった」かのようなってニュアンス含まれているような気がするけど、「俺なんかのになりたいか?」って自分ですら思うしおそらく気のせいだろう。
「でもいいかな。ちなみに私は、タクル君が初めての男友達だよ」
へぇ、そうなんだ。意外だ、小学校の頃の友達とかにいそうだと勝手に思ってた。
先輩の最初の男友達か。悪くない気分だ。
「これでフォローするとき一緒に居ても、友達だからだって説明がつけるね」
なるほど。そういうことか。
確かに周りからなんで一緒にいるのってなった時、理由があった方が自然だな。それが友達などの親しい仲なのであればなおさらだ。
「それじゃあ、友情を誓って握手しましょうよ。握手」
「それ、いいな。なんか友情って感じがする」
まだまだ春真っ盛りな、この日の昼休み。
学校一の美少女の先輩と友情の握手を交わし、友達になりました。
遅かった割にあまり書けてないのはご容赦下さい。只の遅筆です。
次回で(中途半端にですが)一区切りつけそうです。散々リアルタイムは経過したのにご覧の様なテンポの悪さです。これでまだまだ序盤とは……。最終回はいつくるんだ?




