2本目
※前回までのあらすじ
俺の名前はタクル。健全な年頃のごくごく普通の男子高校生だ。……と思っていた。
ところがある朝、起きると俺の体は、「触手、触手、触手!」――な化物となってしまった。
某マンガのネタで「オレは人間をやめるぞ!」なんてものがあるけど、そんな比じゃない。
だってあいつ、人型がまだ残ってんじゃん!
だってあいつ、人型がまだ残ってんじゃん!
大事なことだから二回も言うさ!
俺なんて、ウネウネしたキモイ何かだよ? そっちのほうがダンゼンいいじゃんか。
何なのあの触手は?
ヌラヌラテカテカした淡いピンク色をして、触感は柔らかく弾力があってまるでシリコンゴムの様、それに透明なやや粘性のある謎の液体を分泌できる。
なんか、なんか……なんかそれってすごく卑猥じゃないかっ! 全くもってけしからん! けしからんぞぉぉぉお!
――て違ーう! そうじゃなくて。
これはなんなの神様? 周りの女子たちから、淫獣呼ばわりされている俺への罰なの?
理解を超えたありえないことに、頭を抱えてうずくまる俺。
「その疑問ズバリとお答えしましょう!」
そんなとき、慌てていた俺の前に現れた謎の少女。どうやら俺の秘密を知っているらしい。
* * *
「単刀直入に言いますと、あなたは人間ではなかったのです。もちろん、純粋な地球人という意味でですが」
場面は俺の部屋からところ変わって、妙な部屋。
少女を俺が視界に入れると、気づいたらこの部屋にいた。な……何を言ってるのかわからねーと思うが、俺も何をされたのかわからなかった。
前回からの回想と同じく、某マンガのからのネタで使って説明してみました。
「もしかしてこの部屋落ち着きませんか? なんならセブンに出てくる、メトロン星人の様な所帯じみた部屋にもできますよ」
「いや、いい」
その一言で、目の前の少女のイメージが一気に砕けたものになった。
俺は先ほどから座っている椅子を撫でつつ、少し部屋を見渡した。
変わった部屋だ。壁や床、天井は全てが真っ白で樹脂光沢をしている。触れると金属のような硬さがある。
俺は部屋のイスに腰掛け、テーブルの反対側に座った謎の少女の話を聞いていた。
その内容は信じられない驚くべきことだった。もっとも、すでに身に起きたことの時点で信じられないことなんだけど。
彼女の話によれば、俺の父親は目の前の少女と同じ星出身の宇宙人で父さんの部下らしい。それで、俺の体が触手になったのはその父さんの遺伝が現れたのだという。
この世に生を受けて早十六年。俺が宇宙人のハーフだという衝撃のカミングアウトだった。
とんでもないことが続いてはいたものの、それだけではどうしても信じられない。
「そんな、嘘だろ。大体、宇宙人だなんて信じられない。そもそもウチの父さんは地球の普通の人で……」
俺の記憶では、父さんは家を離れて海外で長い赴任活を送っている忙しい商社マンで、何度か会いに海外へも行ったこともあったけどなんの変哲もなかった。しかも最近に、春休みに会いに行ったばかりで……。
「だったら、あなたのお父様の顔を思い出してください。それに海外の赴任先とはいったい何処でしたか?」
そこでハタと気づく。
確かに父さんには何度も会っている。顔を合わせた記憶も確かにある。でも、顔は思い出せない。それに、会いに海外へ行ったこともあるのに、そこが何処だったのかも思い出せない。
どうにも、父さんがどういう人物なのかが思い出せない。はっきり言って全く、父親の人物像が出てこない。
あれ? 俺は本当は父さんに会ったことがない? 考えれば考えるだけ、俺には不安が膨れ上がってくる。
「いえいえ、安心してください。あなたの記憶に今までアちょこっとプロテクトがかけていただけで、あなたは父親に確かに会っていますよ」
俺の不安を察して、少女は不安を払拭してくれることを言ってくれた。
よかった。よかった親父本人にはちゃんと会っていたんだ。
少し安心をして、心に余裕が生まれたので質問をしてみた。
「俺の人間じゃない姿が本当の姿だとして、その半分が僕と同じ宇宙人の君が地球人と遜色ないのはどうしてだ? それにお前だって、俺たち地球人と変わらないじゃないか」
まだ腑に落ちないことがある。彼女には、手足頭胴体五体全てが地球人のパーツでできていて、普通の人と変わりない。それでいて、俺たちとは違う生命体の宇宙人だというのは、さすがに嘘臭い気がする。
「それは私たちの体には、擬態機能というものがあって、このような姿をとることができるんです。本来の姿に戻っても構わないのですけど、あなたは驚くかと思いましてこの姿で。見て見て。これはこれで、なかなかの美少女でしょ☆」
「自分で美少女つけといて、さらにあざとい可愛い声なんか出さないでください。――いや可愛いんだけどね」
つまり、見かけだけは、地球人に似せていると。
彼女をまじまじと見つめる。
顔立ちは、碧いシュッとした長い切れ目のクールビューティー。細いが、痩せているのではなく引き締まったスレンダーな体。銀糸のように細く流れるような輝きを放つ銀髪。申し分ない美少女だ。
作られた姿にしては、よくできている。宇宙人のセンスで地球人の美人像はどんな風なのかと思ったら、結構似通っているらしい。
顔や体を観察していると、少し顔を赤らめた彼女が自信満々で言う。
「えへん。私はこれでも、地球人の可愛いと思うものは、調査しているんです。ちなみに、本性はこんな感じ★」
――――――――…………あぁ。
ノーコメントでいいだろうか、彼女が垣間見せた宇宙人の姿については。だって、見ただけで何かが確実にガリガリと削られたよ。精神的なものとか。SAN値が駄々下がりだったたよ。
彼女にコズミックホラーの一端を見つけられたことで、俺は彼女が宇宙人であることを疑いようもなく信じた。
「私があなたと接触した理由ですが、あなたの身に起こったことが関係しています。さっき私たちの種族には、擬態機能があることは言いましたね?」
ああ、おかげで先ほどトラウマを植え付けられたばかりだ。……ああ、窓に! 窓にぃぃ!
「実はあれは、年頃の男の子ならだれでもありがちな性的欲求の発露が原因で暴走しやすくなっているんです。つまり『エッチなことはいけないと思います』ってやつですな。それで、暴走によっては、私たちの星の人間から見ても見るも無残な醜悪な姿をとる羽目になるんですよ」
「そんな! 健全な男子は、いつだってエロいピンク色の妄想と共にあるんだ。何とかならないか」
彼女に見せた宇宙人としての貌を思い出す。身の毛がよだつ。あれ以上に酷いとか、俺の身体が暴走を起こしたときは、社会的に抹消するしか生きていく道しか残されていないじゃないか。
「安心ください。完全に何とかなる薬ならありますよ。なんせ、私の星では男の子はみんな通る道ですから」
「なんだ、治療法はあるんだよかった。じゃあそれを……」
これで、人前で触手の姿になることなく、日常生活が送れる。よかったよか……。
「――ただし、後遺症で一生勃起不全を患いますが」
ノォォォーーーーー。
それでは、男として大事なものを失ってしまうことに等しいじゃないか。
この先を、化物として過ごすのか、それとも不能を患って生きていくのか。
嫌な選択だ。この体を何とかしないことには、普通に生活するのは困難だ。しかし、だからと言って……。
「――なので、私の星の男性は、中途半端に効くこちらを用います。――大丈夫ですって、不安にならないでくださいよ。これでも大体は抑えられますから。はい、二日に一錠。用法容量をよく守ってお使いください。あ、水は無くても大丈夫ですよ。そのまま飲んでください」
中途半端ってなんだよ。でも、一生たたなくなるよりはマシだ。俺は貰った薬を飲みこんだ。
飲み込んだ後でおもったけど、見知らぬ人から貰った見知らぬ薬を飲んで大丈夫だったのだろうか。そもそも宇宙人用の薬って、地球人には大丈夫なのか? 死なないよな? 二分の一の宇宙人の血にかけるしかないかな。
「ところで、俺のことをいろいろ知っている君は誰なの」
自分のことや父さんのことを、俺以上に知っていたり、宇宙人だったり、そもそも見知らぬ俺に世話を焼いたり。
「そういえば、まだ自己紹介をしていなかったですね。私はさっきも言った通り、あなたのお父様の部下。名前は■■■■です。君と歳はそんなに変わらないはずだから、気軽に■■っちて呼んでね」
「呼べるか!」
■に当てはまる地球上の言語ではありえない言語は、もはや声ではなくおぞましい音に聞こえる。
言葉の意味なんてまるで分からないのに、おぞましさだけがただただ伝わってきた。
「この発音じゃ、地球の言語には合わないか……じゃレイでいいや。呼び捨てでいいよ。歳は近いはずだし」
でいいやって……。まあ、どう名乗るかなんて勝手だけど。
「それでレイは何のために俺のところに?」
「ああ、それはね……」
――ピピー。
俺の質問に、レイが答えてくれようとしたそのとき、レイの腕に嵌めていた時計? のようなものがアラームを発した。
「…ってあれ? もうこんな時間! それはまた後で話すから、私はしばらく準備があるんでまったねー、バイビー」
またいつの間にか部屋から俺は瞬間移動して、元の俺の部屋に戻っていた。
な……何をされたのか(略) ――続く!
パロディーと宇宙人の組み合わせは、這いよれ!ニャルなんたらさんを連想したのは自分だけではないはず。どうやら影響を受けているようです。




