2章 繰り出される悲劇にもう一人は死にそうです。
全開の続き。
ずいぶんまがあいてるね!
突然、全く知らぬ土地に投げ出された僕ら。
姫里ちゃんと話し合った結果、まず大通りにでることにした。
大通りに出れば多少は場所が分かると思うし、バス停とか駅とかも見つかるだろう。
「あの・・久下さん、ごめんなさい。私のせいですよね」
姫里ちゃんが、大通りへむかって歩いていると突然謝った。
「いやいや、姫里ちゃんは悪くないさ。悪いのはバスに乗っていた奴ら全員だよ」
くそ、乗客と運転手め・・
なにかあのバスに嫌がらせをしないと・・
降りる時押すボタンに画鋲でもつけといてやろうかな・・・
「久下さん、私のことは姫里って呼び捨てでいいですよ・・・」
無差別画鋲事件を起こそうとたくらんでいたら、姫里が頬を赤らめて微かな声でつぶやいた。
「え・・?」
俺は変な声が出た。
よ・・呼び捨てだ・・と・・?
俺は妹すらも呼び捨てにしたらいけないのに・・?
妹を呼び捨てにしたら「黙れ。顔と生き様が醜いんだよ死ねばいいのに。 突然呼んだからびっくりしちゃったじゃない・・\\\」みたいなこと言われて凹んでから女の子を呼び捨てになんてできなかった。
女の子を呼び捨てにしたらまた妹のように死ねとか醜いとか心無い言葉もとい罵倒を浴びせられるのかと思うと涙がこぼれてしまうからだ。
だって実の兄にアレはないよ・・
実は僕はあの時、部屋で一人泣いた。
隣の妹の部屋からもなぜだか「うぅ・・また素直になれなかったよぉ・・」っていう感じの弱音とすすり泣く声が聞こえた。
好きな男子にでも振られたんだろう。ざまぁみろ。
「嫌ですか・・?そ、その嫌ならいいんですっ!忘れてくだっさい!」
姫里が腑抜けた声を出した僕の反応が困っているように見えたのか慌てて取り消しを要請する。
えぇ!!なんでっ!
慌てて僕もそれを否定する。
「い、嫌じゃないよっ!是非呼ばせてくださいっ!・・ひ、姫里」
ちょっとばかし照れくさい。
「は、はい。ありがとうございます。・・・夏耶さん・・。」
照れくさそうにはにかむ姫里。
ふわふわとピンクの淡い背景にパステルカラーのお花が飛んでる空間にいるよね?僕ら。
とにかく、僕らは歩いた。
トトロのオープニング並みに歩いた。
そしてなんとか大通りらしき場所に出る事ができた。
大通りに出ても、僕はやっぱり土地感覚が掴めずにいた。
学校までバス+電車を活用している僕はいまいち分からんのだ。
でも、まぁ大通りに出れたんだし、あとはこの通りを適当に歩いていればバス停やらなんやら見つかるだろう。
僕は右手に嵌められている腕時計に目をやる。
時刻は4時32分。
家に帰るのが遅くなって心配されるなんてことはないだろう。
「姫里、あとはバス停を見つけるだけなんだけど・・ここどこだか分かるかな??」
くるりと俺の後方を歩いていた姫里に振り返る。
姫里は肩で息をし、今にも座り込みそう。
「えっと・・わ、分かりません(はぁはぁ・・)」
言葉を言うのもたえたえで大分疲れているらしい。
確かにすごい歩いたもんな。うん。
俺は辺りを見渡す。
大通りということもあって近くに、ファミリーレストランもとい学生のたまり場があった。
「姫里、少し休憩していこうか?」
俺はファミレスを指差しながら、姫里に言う。
「す、すみません・・・」
なんか疲れきっているご様子。
とりあえず僕たちはファミレスに入る事にした。
「ぷはー」
ジュースを一気に飲み干した姫里は可愛らしい息をついた。
そうとう喉が渇いていたらしい。
僕たちはファミレスに入ったというのにドリンクバーしか頼まないという学生にありがちで迷惑な行為にでている。
まぁ、みんなやってるし、いいよね!!
「えっと・・姫里は家どこなの・・?」
「深橋駅の近くです。」
という事は俺より2駅ほど近いのか。
なら、まぁ遅くなっちゃうことはないか。
少だけ休憩するつもりだったけど、そうあせる事もないだろう。
「姫里はさ、なんでアイドルになりたいの?」
純粋な疑問をぶつけてみた。
姫里の態度から自分の容姿に自信があるわけでもなさそうだし。
姫里は俺の質問に瞬きを3つしてから答えた。
「私、お母さんが大好きなんです。」
突然のマザコン宣言だった。
多少、びっくりしたが話しに耳を傾けなおす。
「お母さんは、私が生まれる前、アイドルやってたんです。私がおなかにいると分かってからアイドルは引退しましたが・・。」
なるほど。
母がアイドルで憧れているってことか。
確かにこんなに可愛い姫里だ。親がアイドルレベルに可愛くてもおかしくはない。
姫里の顔をまじまじと見つめる。
くりくりした目に、笑うと口角が上がる可愛らしい唇。まるで人形みたいだ。
なんだか、どこかで一度みた事があるような気がした。
「私はお母さんが大好きだから、お母さんみたいになりたいんですっ!一度お母さんのライブの映像を見たことがあります。すごくキラキラしてて、楽しそうで。ファンの方々もすごく楽しそうなんです。だから、そういうふうにたくさん笑顔が振りまけて、みんなを笑顔にしててすごいって思ってて・・!」
「へぇ・・・」
熱弁する姫里。
その熱の熱さに思わず身を引いてしまう。
この子、下手したら俺よりドルオタかもしれん・・・
でも、ホントにアイドルが好きでお母さんが大好きでアイドルになりたいってことは伝わってくる。
「姫里は今、いくつなんだ??」
「15です。」
「高校生?」
「いえ、中学生です。」
中学生か。
今年は受験なんじゃないか・・
それなのに、こんなところで俺と話していて大丈夫なんだろうか・・?
「夏耶さんは高校生ですよね?」
「え、うん。」
突然、言われたものだから府抜けた声がでてしまう。
「天が原高校ですよね・・?」
「そうだけど・・。なんで分かったの・・?」
「制服見れば分かります。天が原私の志望校なんです。」
にこりと可愛く笑って見せた。
天が原が志望校・・?
もし姫里が入学してきたら俺の後輩になるってことか・・!?
『夏耶せんぱい』
天が原の制服に身を包んで、俺を呼びかける姫里を想像する。
やばい、普通に可愛い!
先輩はやばいから!!
「・・でも、みんなからは反対されてるんです・・。」
しょぼんと憂いを纏った声で姫里が言った。
俺はその言葉に反応し、妄想をやめ姫里に向き直る。
「えっ!?なんで?」
俺の夢のスクールライフが崩壊への道をたどっている。
どういうことなの?やめてよ!!
「私、天が原の芸能科に行きたいんです。でも駄目だって。。そんなところに行ったってなんにもならないって。。。だったらワンランク上の普通高校に行きなさいって・・」
俺の通う天が原高校には、芸能科というものがある。
俺は普通科なのだが。
芸能科は姫里みたいにアイドルになりたいって子とか、歌手とか俳優とか声優とかそういうのになりたい子達に専門的知識を教えている。
学力はそれほど高いってワケじゃないが芸能を目指すものの才能や特性を重視している。
ちなみに俺の通う普通科は学力が鬼のように高い。
なぜかというと、芸能科の可愛いかっこいい人たちを毎日崇めようと、ものすごい激戦区になる。
俺はその戦争に勝ったのだ。
アイドルのためなら勉強だって頑張れるさ!!
とまぁ、これは置いといて。
姫里の家族がそういうのも分からんでもない。
芸能科と言っても本当に実力のあるひとでなければ卒業しても事務所に引き取ってもらえないのだ。
必ず未来が保障されているというわけではない。
それならば・・と思うのもしょうがない。
「でも、どうしても入りたいんですっ!」
姫里の覇気のこもった声が響いた。
入学したいのだということが伝わってくる。
強い意志を感じる。
「姫里はさ、お母さんに憧れてアイドルになりたいんだよね。」
「はい。」
姫里が俺を真摯な目で見つめる。
「なら、どうして家族が反対するんだ・・?少なくともお母さんぐらいは味方してくれるんじゃないだろうか・・?ちゃんと話をしてみたら・・」
「お母さんいないんです。」
俺の話の途中で姫里がずっぱしと言葉を切り捨てた。
その言葉に衝撃を覚え、俺はなにもいえなくなってしまう。
「私が幼い頃に亡くなりました。」
「・・あ、えっと・・ごめん・・。」
なんだか口ごもってしまう。
失礼な事を言ってしまったと激しく後悔する。
「いえ、いいんです。全然気にしてませんから。」
にこりと姫里は俺に微笑みを浮かべたが上辺だけだと分かる。
からからと氷だけが残されたコップをストローでかき回す姫里。
その音がやけに沈黙の中で耳につく。
気まずい。
非情に気まずい。
さらさらとしている姫里の黒い髪が肩から落ちる。
ほんとにキレイだな。
姫里を見たとき愛くるしい容姿に可愛いという印象を持ったが、今のコップをかき回している仕草からは美しいという印象を受ける。
これだけじゃない、姫里の仕草や所作からはキレイだと感じる面が多々あった。
それに、誰かの面影を感じる。
誰なんだろうか・・・
「どうかしましたか?」
まじまじと姫里を見つめる俺と顔を上げた姫里の目が合う。
目の色もきれいだ。
色素の薄いキレイなまるでカラーコンタクトでも入れてるかのようなブラウン。
「夏耶さん??」
顔の前で手のひらをかざされ、ぶんぶんと振られる。
その奥で姫里が心配そうなかおをしている。
「あっ!ごめん!なんでもない!!」
しまった見惚れていた。。
しかし、ほんと姫里に感じる面影はなんなんだろうか・・?
「大丈夫ですか??もしかして体調悪いですか??」
「いや!そんなことはない!」
まさか見惚れていたなんて口が裂けてもいえない。
見惚れてた間変な顔とかしてなかっただろうか・・?
それが心配だ。
「なら、よかった。迷惑かけてしまってるんじゃないかと思っちゃって・・」
「いやいや!全然!!全然だから!!」
俺、動揺しすぎじゃね???
身振り手振りが思わず大きくなってしまう。
でも、まぁ姫里は気づいてないみたいだし。大丈夫か。
姫里は再度俯きがちになり、コップの中をかき回す。
からんからんと氷とコップのかすりあう心地いい音に案外はまってしまってるらしい。
たれてきた髪を耳にかける。
そしてかき回ながら、何か歌を口ずさんだ。
あまりにも自然に歌っている。
透明な声なのに、どこか芯があって優しい。
けして声量があるわけじゃないが、とても聞きやすい。ずっと聞いていたくなる。
俺は知ってる。
この歌声を知ってるんじゃないか!
なんで今まで気がつかなかったんだ。
「姫里・・・」
「あっ、ごめんなさいうるさかったですか・・?私なんか癖で自然に歌っちゃうっていうか・・変な癖ですよね・・?」
姫里が顔を赤めながらこちらに問いかける。
しかし、今はそれどころじゃない。
「姫里、君のお母さんって、見六あずさ、だよね?」
姫里が瞬きをする。
一度、二度、三度、四度、五度、六・・って多くないか!?
違うのか!?
もしかしてこれはタブーだったとか・・?
だとしたら俺はまた失礼な事を・・
「お、おにいちゃん・・?」
俺が心の中で懺悔に入ろうとすると、姫里がポツリとつぶやいた。
姫里は俺じゃなくて、俺の先、言うならば俺の後ろを見て、つぶやいた。
俺も後ろを振り返る。
「!?」
言葉を失った。
息をするのも忘れそうになった。
長い黒髪を一に束ね、釣り目がちなきれいな目。鼻筋も通っていて唇の形もきれいだし人形みたいだ。
そして近寄りがたい、まるで高嶺の花のような雰囲気。
見六あずさ・・
見六あずさが俺の後ろに立っていた。
あずさはにこりと柔和な笑みを浮かべた。
有無も言わず俺はその笑みに見惚れる。
「死ねェェェェェェェェェェェェェェッ!キモいんだよッ!変態がッ!!!」
あまりに男らしい声と共に、下されるダブルラリアット。
俺はその威力に吹き飛ばされる。
吹き飛ばされながら激しい痛みと共に思う、さっきまでの微笑みのてんしは・・?
あ、俺死んだな。
地面につくちょい前に俺はなんかいろいろあきらめた。
なんかよくわかんないですね。。
すんません。
だれか私に文章力を下せぇ。お願いします。
あ、続きます!